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2003年2月 4日 (火)

「巫女」 ラーゲルクヴィスト 

巫女 (岩波文庫)

巫女
sibiyllan

ペール・ラーゲルクヴィスト
Par Lagerkvist

岩波文庫 2002.12

久々の海外文学でクリティカルヒットって感じの当たり。この作者名はあまり馴染みがないですけど、何気に1951年にノーベル文学賞を受賞しています。スウェーデンの作家です。代表作「バラバ」は映画化もされているようです。

デルフォイを見下ろす山に白痴の息子と2人で暮らす老婆。長い間外界との接触を一切絶った生活をしている。ある日、そこに1人の男がやって来る。彼は自分にかけられた呪いのことを訊きたくデルフォイの巫女を訪ねたが答えが得られず噂で聞いたこの老婆の元へとやってきたのだ。彼の呪いは、後に「神の子」と呼ばれる罪人が十字を背負って街を歩き磔刑される際に、自宅の壁にもたれて休もうとしたのを拒否した際にかけられたものである。この話をきいた老婆は、自身の数奇な運命を語り始める。

この作品のテーマはズバリ「神とは何か」なのだが、男が遭遇した罪人は明らかにキリストであり、老婆の暮らすデルフォイでの神はアポロンである。この作品で描かれるのは特定の宗教にこだわらない人間の信仰心そのものであり、神という全て(宗教の枠までも)を超越した存在が持つ意味を厳しく問い掛けてくる。

前半3/4くらいまでは、民話や神話のような出来事が淡々と語られ(決してファンタジーではないが)、その意味が後半1/4で明かされ、作者の神に対する強いメッセージがあられる。1,2日で読めるライトさの中に深い意味がつまった名作だと思います。

神は邪悪だ。(中略)残忍で無慈悲だ。神は人間なんぞお構いなしだ。御自らを構われるのみ。そして神は決して許さない。

あの方は悪でも善でも、光でも闇でもあるし、無意味であるかと思えば、わしらには皆目理解できんが、思い煩うべき意味に満ちてもおられる。解かれるために存在するんじゃなくて、存在するために存在する謎じゃよ。いつもわしらのために存在するために。いつもわしらを悩ませるためにのう。

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コメント

うわぁ!!!
この本読んでるヤツが居るとは・・・!!!!

ANDREくん侮れませんね!!
ビックリした!
同時にめっちゃ嬉しいですー。


私もクリティカルヒット場外ホームランでしたね。
「僕はお城の王様」で、本に呼ばれたと仰ってましたけれど、
私もまさしくこの本には呼ばれましたー


私の最重要書のひとつである事は間違いないですわ。

投稿: ヨーコ | 2006年10月 9日 (月) 12時20分

いきなりここに食いつきますか!?
多分同じくらいビックリしたよ。

この本、かなり良いよねー。
同じ作者の「バラバ」てのを読もう読もうと思っててまだ読んでないよね。
ノーベル文学賞侮れず!と思った作品でした。

投稿: ANDRE | 2006年10月10日 (火) 00時06分

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