「ぼくは怖くない」 ニコロ・アンマニーティ
ぼくは怖くない ニコロ・アンマニーティ ハヤカワepi文庫 2002.12 |
何かと良い作品が多い「ハヤカワepi」シリーズの最新刊。イタリアでその年の最も優れた芸術作品におくられるヴィアレッジョ賞を受賞した作品。この賞、過去の受賞者にカルヴィーノやタブッキがいるので現代イタリア文学を語る上では外せないのでしょう。で、この作者はまだ30代で最年少での受賞だったそうだ。それまではホラー系ジュブナイルを書いていて、この作品の少し前から子供の視点から見たイタリア社会を描き始めたとか。
ストーリーは、イタリアの小さな田舎町を舞台に、主人公の「ぼく」が、廃屋の穴の中で幽閉されている1人の少年を偶然発見してしまい、それ以来度々彼のもとを訪ねるようになるというもの。そして、ある日、出稼ぎに出ていた父親が怪しげな男とともに帰宅してから、「ぼく」は自分の町がとんでもない事件の渦中にあることを知ってしまう。
この作品では、純粋無垢な少年が残酷な大人社会に飲み込まれ、そこへ足を踏み入れようとしている様が描かれるのですが、なんか子供の心理描写が良いというか、自分が結構感情移入して読めるようになっていて主人公と一緒に喜怒哀楽を経験できるストーリーが上手い。でも、自分が感情移入できるってことは、作られた子供心理なんだろうけど。
難点を言うと、もともとホラー作家であったためか随所に現る主人公の見る悪夢のシーンがちょっと多くてくどい気がしたかも。なにやら作品の舞台となっている20世紀中後半のイタリアの不安定な社会情勢がかなりキーポイントになっているみたいで、社会の不安定さに振り回される大人たちのようなものも描いているそうだが、その実態をよく知らないので内容理解が解説がないと完全には把握できないかも。
ラストシーンが詳しく描かれていないので、結局どうなったのかが良く分からないけど、主人公がこの事件を通してたくましく成長していくのは確かだ。映画化するらしいのでちょっと期待。
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