「カカシの夏休み」 重松清
カカシの夏休み 重松清 文春文庫 2003.5 |
今月の新刊です。重松作品の文庫化は来月に「ビタミンF」と連続するのでちょっと嬉しいです。最近作品の発表ペースが早くなってきたのはいいけど(去年は恐らく月1ペースくらいで新刊が出てた)、質が落ちないかどうかが気になるところです。はやく「流星ワゴン」が文庫化してほしいけどきっと2,3年後だろうなぁ。
で、この作品。重松作品にはもはやある一定の品質が保証されてますね。とりあえず外れはないですけどその分より多くを求めてしまうので満足感を得るのが難しくなってきた感じもします。いつもながらドラマ化したらどれも佳品になりそうな作品ばかり。この中編集のテーマは重たい過去を引きずる主人公達の旅立ちというところか。
表題作「カカシの夏休み」は、中学時代の同級生の死をきかっけに22年ぶりに同級生と連絡をとることになる小学校教師が、自身の抱える過去のコンプレックスに悩み、受け持ちの生徒の抱える問題とそれを対照させて描いた作品。もう少し年をとったらもっと感情移入できるのかなぁというのが率直な感想。
一番印象的だったのは3作目の「未来」。かつて同級生が自殺し、その過去を引きずり社会に復帰できないでいる主人公。その弟の同級生が遺書に弟の名を残して自殺。重松お得意のイジメ系作品かと思いきや、こちらはいじめた側に焦点を当てて、その過去を抱えて、いかに「未来」へと自立して行くのかを描いていて、イジメそのものは背景にあるだけ。収録の3作品中では一番重い内容なのだが、静かな感動を呼ぶと言うか、最後に何かが残る作品。主人公と自分の年齢が一番近いからなのかもしれないけど。
他に、「ライオン先生」という長髪のカツラをつけた中年高校教師を描いた作品が収められていて、これもなかなか好感。
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