「神様」 川上弘美
神様 川上弘美 中公文庫 2001.10 |
半年くらい前に「蛇を踏む」(芥川賞受賞作・文春文庫)というのを読んだのですが、この作者の本の2冊目です。彼女のデビュー作を含む短編集になってます。続き物もあれば単独のものもあるのですが、全体を通して不可思議な夢の世界が描かれて個性溢れる短編集に仕上がってます。
表題作の1話目の冒頭の文章がいきなりツボにはまったのですが、「くまにさそわれて散歩にでる。」ですよ。さらには「くまは雄の成熟したくまで、だからとても大きい。3つ隣の三〇五号室に最近引っ越してきた。」と物語が展開。あまりにもシュールな書き出しだが、その後もこのペースでフワフワした感じのまさしく「夢」の世界が描かれていた。
一番印象に残ったのは2話目の「夏休み」というもので、都会での生活に違和感を感じていた1人の女性が梨園で働く一夏のできごとを描いているのだが、梨園でとある生物に出会うという展開。そして、文章でここまでその生物の愛おしさを描ききったところが上手いと思う。文章ながら本当にかわいい。そして、その女性の心境の変化をその中に織り込んだこの作品は奥が深くい。
他に印象的だったのは、亡くなった叔父が自分の前に現れるというお話。全体にやさしい文章が溢れていてなかなかホロリとさせられた。川上弘美さん、結構要チェックかも。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「足音がやってくる」マーガレット・マーヒー(2013.05.30)
- 「SOSの猿」伊坂幸太郎(2013.05.05)
- 「死美人辻馬車」北原尚彦(2013.05.16)
- 「俺の職歴」ミハイル・ゾーシチェンコ(2013.04.01)
- 「エムズワース卿の受難録」ウッドハウス(2013.03.24)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント