「カエルの城」 ヨースタイン・ゴルデル
カエルの城 ヨースタイン・ゴルデル NHK出版 1998.11 |
先日、友人から「ゴルデル作品でも屈指のもの」というお墨付きをもらったのを受けて読んでみた。これまで、「児童書」というカテゴリーの棚に置かれ、挿絵が豊富な装丁なためにちょっと敬遠していた一冊なのだが、読んでみたら確かに面白い。自分の読んだゴルデル作品の順位としては、1位「カードミステリー」(これは半端じゃなく面白い。読んだ人は皆そう言ってるように思う。)、2位「カエルの城」、3位「ソフィーの世界」というところだろうか。「アドヴェントカレンダー」などはあまり好きじゃなかったのでゴルデル作品も当たり外れが大きそうだ。
これは祖父を亡くしたばかりの少年が森の中で妖精に導かれてとあるお城に行き、そこで不可思議な体験をするというファンタジー。お城の場面などは「不思議の国のアリス」を思わせるような不条理でドタバタと展開して行って、そうした場面の合間にゴルデルならではの哲学的な側面もちらほらと現れる感じの物語。
アリスにとても良く似た構成をしている反面、この作品にはそれとは全く異なった側面があり、そこが結構興味深い。主人公の少年の現実世界での体験、思いがファンタジーの中に交錯して、物語を通して、少年の現実世界での心理状態を示唆していくという構成が秀逸。
この本の最大の欠点は、挿絵です。あまりにもお子様向けの挿絵で、電車の中で恥ずかしかった。翻訳の文章なんかは割りと大人向けのものにルビを入れているような感じで、明らかに挿絵によって「児童書」というカテゴリーに無理に押し込められているなぁと思った。
物語の途中にサンショウウオが大きくなりすぎて檻から出られないという下りがあるのだが、井伏鱒二を思い出さずにはいられませんよね。
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