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2003年6月16日 (月)

「二十歳の原点」 高野悦子

二十歳の原点 (新潮文庫)

二十歳の原点

高野悦子

新潮文庫   

今から30年ほどの前のベストセラー。学生運動が過熱化する中、二十歳の誕生日から半年ほどした6月24日に鉄道自殺で命を絶った1人の女性の残した日記を出版したもの。二十歳の誕生日から始まる半年ほどの日記のなかに当時の世相、文化、そして何よりもその時代を生きた一人の若者の生の声と魂が力強くこめられた一冊。

同年代の者の声として読むことができる今の自分にはかなり衝撃的な内容。日記の中で繰り返し「自由」を訴える彼女であるが、この日記を見る限り、彼女の周りには自由が溢れているように思えて仕方がない。学生運動という時代背景の中、必要以上に自由を束縛していたのは本人自身ではないのかとも考えさせられる。

鉄道自殺をはかった彼女だが、自分は「私自身のために」生きていると語り、「死ぬって言うことは結局負けだよなぁと思った」と語る彼女は果たして本当に自殺を望んだのだろうか。未遂にちかいことを繰り返しながらも、詩や音楽、失恋の中で結局は生きていることを強く実感する日々を過ごしている彼女は鉄道に飛び込んでも、いつもと同じように助かるのではないかと考えたのではないだろうか。

常に演技をして生き、そのために伊達メガネをかける彼女はなぜそこまで自分を追い詰めたのだろうか。演技などせずに自分自身と向かい会えなかったのだろうか。「生きるとは愛すること」という彼女にとって失恋は死をも意味したのだろうか。

亡くなる1週間ほど前の日記の「雲にのって遠くの知らない街に行きたい」という詩や、死の2日前の日記の「旅にでよう」で始まり、「静かに眠ろう そしてただ笛を深い湖底に沈ませよう」で終わる彼女の残した最後の言葉の残す余韻が読後にひたすら残る作品だった。

彼女は天国で自由を得ることができたのだろうか。現代の大学生達を見て、そこにあふれ、飽和状態を越えている自由を見て彼女はどう感じるのだろうか。彼女と話たいなぁと感じつつもその彼女も半世紀以上前に亡くなっているのだ。

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