「朗読者」 ベルンハルト・シュリンク
朗読者 ベルハルト・シュリンク 新潮文庫 2003.5 |
2年位前にやたらと流行っていた本がついに文庫化。新潮社のクレストシリーズって佳作が多いのにほとんど文庫化されないのは何故でしょう。しかも刊行順と文庫化する順がバラバラだし。「停電の夜に」がクレストからの初の文庫だけど、それ以前に刊行された20冊くらいはいつ文庫化するのやら。「朗読者」もかなり待ちわびたけど。
で、これは久々のドイツ文学の世界的ヒット作となったことでも記憶に新しい作品。
ストーリーは15歳の時に近所に住む15歳以上年上の女性と恋に落ち彼女のもとへ通った主人公が苦い別れを経験して数年後、思いがけず彼女とホロコーストとの関わりを知ることになるというもの。
何を見ても超前半の15歳のときに大人の女性と恋に落ちたという部分しか書かれてないんですけど、この作品の主眼はやっぱりナチスの問題なのであって、決して少年が近所の大人の女性に憧れるというチープなラブストーリーではないのだからもっと上手く宣伝してもいいかと思う。
この本の本国での大ヒットはドイツ人がナチスの問題をこのような形で認め始めてるということなのだろうけど、なんだかなぁと首をかしげるような部分があるのも事実。やはり自国の過ちと対峙するのは難しいのか。
作品自体はあきらかにドイツ文学史に名を刻むだろうなぁという完成度だと思う。伏線もしっかりと張られているし、衝撃のラストを用意してるし。なんか感想を書くよりも一読してもらったほうが良いと思います。マジで面白いです。ナチスがストーリーに絡むとは全く知らずに読んでいたので、ホロコースト関連の作品に興味があるものとしては、途中からの展開に無駄にニンマリとしてしまいました。
映画化するらしいけど誰がやるんだろう。ハンナのイメージはスーザン・サランドンかキャシー・ベイツなんだけど、前半の30代の美しい女性はちょっと無理だろうなぁ
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コメント
ANDREさん、こんばんは。
先日、コメントと共に送ったTBが届いてなくてすみません。
今回こそ、届きますように(祈)
ANDREさんなら絶対読んでらっしゃると思ったら、
大当たりの上に、こんな以前に読んでらっしゃったんですね。
わたしがこれを読んだきっかけは、
いつもの通り、好きな俳優が出る映画の原作だったからですが、
また「先に小説をよみたかった」と思いそうな気がして、
遅れ馳せながら、小説をよむことにしたのです。
以前、キャスティングされていたニコール・キッドマンが妊娠して降りたので
ケイト・ウィンスレットがハンナを演じて、
GG賞最優秀助演女優賞を受賞したらしいです。
終盤のメイクは、誰だかわかんない風貌です。
で、この小説。
やはり先に読んで正解、な気がします。
ここまで、主人公の内面を描く作品をどう脚色したのかしら…
>感想を書くよりも一読してもらったほうが良いと思います
全く同感です。また他人様にオススメしにくい作品に出会いました。
投稿: 悠雅 | 2009年1月12日 (月) 21時21分
>悠雅さん
TB、コメントどうもありがとうございます。
TB、大丈夫でしたよ!
こんな古い記事にたどりついていただきまして
どうもありがとうございます。
とはいっても、ブログ開始は3年前なので
これはブログを始める前に別のとこで書いたものを
日付をさかのぼて再掲載したものなんですが。
当時、さも少年が年上の女性に恋をする恋愛小説かのような
売り文句で書店に並べられていたので、
実際に読んでみて、後半の展開にビックリしながらも
あっという間に読み終えてしまったのを覚えてます。
これによると5年前にはすでに映画化の話が出ていたんですね。
「愛を読むひと」という邦題は
なんだかんだで色々と誤解を招くタイトルな気がしますが、
GG賞受賞ということで、ちょっと楽しみになってきました。
ケイト・ウィンスレットは以前から
出演作を選ぶのがとても上手いと思っていたので、
今回のW受賞は結構嬉しいです。
実は「乙女の祈り」からずっとファンです。
当時、読んだ直後のイメージだと
終盤こそがメインだと思って女優さんの希望を書いてますね。
ケイト・ウィンスレットは若すぎな気もするんですが、
後半部分でどんな感じで出てくるのかがちょっと楽しみです。
投稿: ANDRE | 2009年1月13日 (火) 00時52分