「蟻」 ベルナール・ウェルベル
蟻 ベルナール・ウェルベル 角川文庫 2003.6 |
10年程前にそこそこのヒットを飛ばしていた作品。中学生だった当時、かなり気になっていたのだが、ハードカバーには手が出ず、ずーっと待っていたらついに文庫化。しかも「ウェルベルコレクション」ということは今後シリーズでこの作者の本が刊行さえるようだ。
作者は科学雑誌で記事を書いてきた人で、その科学・生物学知識をもとに作品を書くフランスのSF(?)作家。で、幼少の頃より蟻の研究を続けているという作者が13年間かけて完成させた作品。蟻達を主人公にした物語と、とある家庭で起きた地下室に入った人々が失踪するという事件を平行して描く。
とにかく蟻を描いた部分が面白すぎ。ヤバい。一部作者の想像も入っているそうだが、綿密な調査と観察に基づいて描かれた蟻社会の様子、その驚異的な技術、そして蟻社会でおきる戦争や建国などが3匹の蟻をメインに据えて、全て蟻の視点から描かれているあたり、作者の筆力に脱帽。実際、蟻が生物界ではかなり頂点にくるほどの力を持った生物であることは有名だが、まさに人間などとるに足らぬ相手であると感じさせられる。巣の構造もかなり複雑だし、一種の階級社会であるし、キノコの栽培などの生産的な行いもするし、何匹のもの生物が1つの巣に暮らすというのはまさに人間社会そのもの。
3部作の第1作ということで、今後刊行される続編に期待大である。騙されたと思って読んでみてください。絶対に面白い知的娯楽大作ですよ。
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