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2003年6月28日 (土)

「八月の博物館」 瀬名秀明

八月の博物館

八月の博物館

瀬名秀明

角川文庫 2000.11  

「パラサイト・イブ」の著者が放つSFファンタジー。これまで「理系作家」のイメージが強かったことに対する反発というか、作者が自分で新たな道を模索しているのが強く感じられる作品。

ストーリーは3つのプロットが交錯していて、「理系作家」のイメージの強い作家が「小説を書くこと」の意味を探すもの、小学生の男の子が不思議な博物館に迷いこんで時空を越えた冒険に出るもの、19世紀のエジプトの発掘作業を描くものから成っている。この3つが最後に向けて統合していく。

既視感の強いエピソードが多く、面白いのだけど、ちょっとなぁという感じが多いのも確か。

作品は藤子・F・不二雄に捧げられていて、大の藤子ファンという作者がかなりそれをイメージしているのは、「ドラえもん」がしばしば現れたり、「T.Pぼん」色の強いストーリーがあったり、「カンビュセスの籤」があったり、「満月博士」が登場したりする辺りではっきりと分かり、同じ藤子フリークとしては嬉しかった。

また、タイムトラベルの原理にマシスンの「ある日どこかで」に言及してそれを発達させたものを採用してたり、ハヤカワと創元のエラリー・クイーンのシリーズの違い言及したり、「ソフィーの世界」ぽかったりと読書好きにはたまらないエピソードも多数。瀬名氏と僕は趣味が似ているのかもしれない。

で、これだけの要素をつめこんでつめこんでどうするのかと思っていたら「果てしない物語」的な展開になってきて、ラストの1行で「やっぱ『果てしない物語』かよっ!」と突っ込みを入れたくなるという内容。

小説家を主人公にしている部分では作者自身が自分の悩みをここまで明確に記述することは滅多にないのではと思わせるくらいにリアルな悩みがつづられていてやや重い。少年の冒険の部分も色々とつめすぎて内容についていくのがやや難だったかもね。瀬名氏はきっと頭が良いのだんぁというのはしっかりと伝わってきたけど。

あと1つものすごく気になったのは、図書委員の女の子がかなり読書してるっぽいのに宮沢賢治を知らないというのは小6とはいえあり得ないと思った。

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コメント

“ハヤカワと創元のエラリー・クイーンのシリーズの違い”ってどういう内容でした?
出版社にこだわってないのですが多分私は創元の方読んでると思うんですが・・・。

投稿: ヨーコ | 2006年10月15日 (日) 13時31分

またまたこんな古い記事の細かいところに目をつけましたね。

うる覚えだったからわざわざ本を開いて確認しました。
ハヤカワは「エラリイ」で創元は「エラリー」と表記してて
「エラリイ」のほうがカッコイイのに、
創元のほうが、国名シリーズなどがあってラインナップが充実してる
っていうような内容でした。
あと、創元の最後のほうのページ載ってる作品紹介のこととかを
書いてたね。

僕もエラリークイーンは創元だったね。
国名シリーズを読んでた。懐かしいなぁ。

この本、結構面白かったからオススメです。
先月、新潮文庫でも発売になって、
今本屋さんの文庫売り場に行くと沢山並んでるから手に入りやすいし。

投稿: ANDRE | 2006年10月16日 (月) 01時55分

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