「タイムスリップ・コンビナート」 笙野頼子
タイムスリップ・コンビナート 笙野頼子 文春文庫 1998.2 |
94年の芥川賞受賞作。3話入ってるのだがとりあえず芥川賞受賞のこの小品だけ読み終えたので。
ストーリーはかなりシュールです。夢の中でマグロと恋におちている主人公のもとに、そのマグロあるいはスーパージェッターから電話がかかってきて、鶴見線の終点である海芝浦の駅に行けと言われる。電話の主は途中で鶴見で寄り道して沖縄会館へ立ち寄ることを勧め、主人公は「電車で沖縄のカイガン」に行くために都立家政の駅から旅に出る。
女子高生が「りてね、してね、りてしね」と会話する電車にのりながら主人公の頭をかすめていく様々な思い出。海岸沿いの工場は故郷の四日市に重なり、少女時代がよみがえるのだ。
で、まぁとにかく好き嫌いのはっきりしそうな超実験的な小説なのです。川上弘美にちょっと似た雰囲気もありますけど、割と意図的にストーリーを進めていく川上に比べると、こちらの取り留めの無さはかなりの難解さを伴うできになってます。
言葉の使い方が上手で、主人公の勝手な思い違い、聞き間違いのみで構成されていると言っても過言ではない小説世界。ぼくはこういうのが結構好きなのでニヤニヤしながら読み進めましたけど、どうなんでしょう。残り2話もたのしみ。
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