「The book of illusion」 Paul Auster
the book of illusion Paul Auster 2002 (未邦訳) |
昨年出版されたオースターの最新作が先日ペーパーバック化したのをずっと読んでいたのをようやく読破。オースターとしては3年ぶりの小説の新作で、前作がそれまでとは少し趣が違ったので、どのような作品になるのかが楽しみでしたが、これは傑作です。オースター作品は全て読んでいるのですが、トップ3に入ること間違いなし。
飛行機事故で妻子を失った大学教授が、喪失感にあったある日、ふと目にしたテレビのサイレントコメディ映画にひきつけられる。その映画の製作・主演をしていたヘクター・マンという男は60年以上前に失踪して行方が分からなくなっていたのだが、主人公は、悲しみを忘れるかのように彼の映画について研究を進め、一冊の本を出版。そんなある日、彼の元に、ヘクター・マンに会って欲しいという女性が現れて・・・。
この作品にはオースター作品に求められる全ての要素が凝縮されていて、さらにこれまでの作品で描かれることの無かった作者の映画への深い思いが込められていて、本当に良くできた文学作品でした。
初期のオースター作品に見られた「孤独」や「何かを探す」という要素、中期に見られたロードムービー的な要素、近年に見られるようになったマイノリティなどを積極的に意識した社会性など全てを含んでいて、まさに集大成。ストーリーも面白かったし。
オースター作品は「ムーン・パレス」(新潮文庫)がもっとも、一般受けしやすい内容だけれど、この作品も一般読者に広く受けいられる作品だと思います。映画化もするかもしれません。
99年に出た前作がまだ邦訳が出ていないので、邦訳が出るのは、5、6年後かと思いますが、その折には是非お手に取ってみてください。英語がそこまで難しくないのでペーパーバックでもオススメですよ。本当に面白かったです。
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