「予告された殺人の記録」 ガルシア・マルケス
予告された殺人の記録 ガルシア・マルケス 新潮文庫 1997.11 |
スペイン語文学の最高峰と言われる「百年の孤独」の作者でノーベル賞受賞者であるマルケスの中篇。実際にマルケスの身近に起きた殺人事件をベースに、南米コロンビアのある町で起きた殺人事件を人々の証言からルポ風に伝える作品。
冒頭で殺人事件の発生を描き、その後、過去に戻って、なぜその事件が起きることになったのかを、主人公である「わたし」が色々な人の話を聞いてまとめたと言う形式で、作品全体には芥川の「藪の中」に近い空気が流れていた。あと、カミュの「異邦人」にも似たような印象も。結局殺人が起こる過程には何らかの不条理な力が働いていたり、幻想的な空気が流れていたりするのでしょう。
淡々と事件の経過や背景を述べていくだけなのになんともいえない力強さを感じる作品でした。町という1つの閉鎖された共同体の中でうずまく民族間の抗争や独特の祭事の空気、そしてそこに1人のよそ者が現れたのを機に事件への歯車が回り始める様子を描いていて、一見するとノンフィクションのような形をとりつつもよく錬られたかなり深いテーマが根付いている感じがした。
タイトル通り「予告された殺人」であり、周囲の人々は殺人が起こるということを知っていながらも、何故それを止めなかったのか。このテーマからしてそうですけど、小説ならではの手法を用いて、このような心に深い余韻を残す傑作を書くことのできたマルケスは「ノーベル賞」にふさわしい作家だと納得できました。
眠いから変な文章になってしまってごめんなさい・・・。とにかく面白かったんですよ。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「足音がやってくる」マーガレット・マーヒー(2013.05.30)
- 「SOSの猿」伊坂幸太郎(2013.05.05)
- 「死美人辻馬車」北原尚彦(2013.05.16)
- 「俺の職歴」ミハイル・ゾーシチェンコ(2013.04.01)
- 「エムズワース卿の受難録」ウッドハウス(2013.03.24)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
このブログの存在を、今しがたあなたのmixiで知りました。
思わず面白そうな本をメモッちゃいましたよ。
どうも有難うございます!!感謝感激雨霰!!
そーいや、映画化された『予告された殺人の記録』って、
もう観ました?私は授業でディクテーション用
にちょっと観ただけなんですけど。
リクエストさせて下さいな。
①アントニオ・タブッキ(伊)の作品の感想もお願いします。
あなたならきっと読了済み、と信じてます。楽しみだわ。
②同じく、フリオ・コルタサル(アルゼンチン)の、
『石蹴り遊び』も、是非!尤も、私は未だ入手できてませんが…orz
投稿: 中村眞希 | 2007年1月 6日 (土) 00時28分
>中村さん
どうもコメントありがとうございます!
映画があるらしいことは知っているんですけど見てないです・・・。
マルケスで映画というと、映画監督をやっている息子さんの
「彼女を見れば分かること」ってのがなかなか面白かったです。
リクエストですが、そのとき読んだ本の感想を書いていくのがメインなので
昔読んだ本の感想も書きたいんですけどなかなか時間が取れないのです。
折を見て、書けたらいいなぁとは思っているので
首を長くしてお待ちください。
で、お察しの通り、タブッキは大好きです☆
白水Uブックスファンですし♪
「石蹴り遊び」は知らなかったので、メモっときます。
投稿: ANDRE | 2007年1月 6日 (土) 01時13分