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2003年11月15日 (土)

映画「バティニョールおじさん」

バティニョールおじさん

monsieur Batignole

2002年

フランス

第2次大戦中のドイツ占領下のパリが舞台。肉屋を営む主人公バティニョールは自分の生活を大切にし、「ことなかれ主義」で、余計な問題に関わろうはしないような普通の中年男。一方で家に居候している娘の婚約者はドイツ軍に媚を売る劇作家で、妻と娘は独軍と関係のある彼を利用して占領下のパリで落ち着いた生活を送ろうとしている。そんな中、その劇作家の通報で連行されてしまった隣家のユダヤ人の息子が命からがらに逃亡してきて、バティニョールは彼をかくまうことになり、彼の逃亡を助けようとする。

主人公が平凡な男で、子供をかくまって逃亡させようとすることになるのだが、これも「自分のところに厄介を持ち込んでほしくないから」というヒロイズムなどとはかけ離れた思いからくるというあたりが、「シンドラーのリスト」などと大きく違った印象でした。

また「戦場のピアニスト」ほど酷なシーンがなく、子供(はっきり言って可愛くない、文句ばっかでやけに良くできた子供)と主人公のやりとりのユーモラスさが全体を包んでいて、このテーマの映画にしてはかなり明るい印象。「ライフ・イズ・ビューティフル」の様に涙のシーンあがあるわけでもなく、とても「日常」的に描かれていたのが新鮮でした。

バティニョールは少年がドイツ人の父親とフランス人の母親の間の子であることを知ったときに、少年に対して嫌悪感を感じます。それは「ユダヤ人」だからではなく、第1次大戦で自分に怪我を負わせたドイツ軍にいた男の息子だから。戦争という状況下の生んだ偏見ではなく「自分」の感情だけを大切にして生きている男が、子供を守るために警察官に向かって「法律を越える正義」を訴える場面はとても印象的でした。

ラストもかなり好印象で、「戦場の~」などのようにリアルさを追求した過激シーンを含むような映画とは対極的に、一般市民が巻きこまれた戦争という現実を「ほのぼの」と描いたこの作品はやはりフランス映画ならではなのかもしれません。

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