「黄金の羅針盤 上・下」 フィリップ・プルマン
黄金の羅針盤 フィリプ・プルマン 新潮文庫 2003.10 |
この本は「ハリポタ」ブームの到来に合わせたかのように大量の海外ファンタジーが翻訳されたときに日本に紹介された1冊だと記憶しています。イギリス本国ではハリポタよりも早い出版で、95年の作品です。さらに、ハリポタが第3位にしか選ばれなかった「カーネギー賞」の大賞を受賞しています。
ストーリーは、きわめて我々の住む世界と似ているのだが、魔女がいたり、人々が一人一人「守護精霊」という自分の体の一部のような精霊を持っているといった点でパラレルワールド的な異世界となっている場所が舞台。
オックスフォードの学寮に住む少女が、ふとしたことから神学界や上層知識人たちを騒がせている北極での事件の存在を知り、さらに世間を騒がせている「連続子供失踪事件」を追って、冒険することになるというもの。3部作の第1作ということでとても中途半端なところで終了しています。
うーむ。少なくとも自分にはハリポタの方が面白かったことは確か。ハリポタはそこまで入れ込んでいないけれど、第1巻を読んだときはかなり感心したものだし。同じカーネギー賞なら「トムは真夜中の庭で」のほうがダントツに良いと思った。
キリスト教的な背景がかなり強い作品で「失楽園」(不倫じゃないよ)を題材にしているのが原因かとも考えたが「ナルニア」は面白いのでそういうわけでもなさそうだ。
おそらく、主人公がいまいち好きになれなかったのが原因ですね。かわいくないし、性格悪いし。いつの間にかキーとなるアイテムの使用をマスターしてるし。あと、ストーリーがつかみにくい。登場人物の「善」「悪」も分かりにくいし。
あとは、もっとも作者の独創性が現れた「守護精霊」というアイデアの消化に全エネルギーが注がれていて、全体の流れが分かりにくくなってしまったのかもしれません。でも未完なので、今後明かされる部分で評価が大きく変わるのかも。
作品の一番冒頭で1巻は異世界、2巻は我々の世界、3巻は2つの世界の移動を描くというようなことが書かれてしまっているのも、いまいちのれなかった理由かもしれない。作者が作品の冒頭でネタバレしてどうするんですか!!
ハラハラドキドキするようなできごとの連続というよりかは地味なストーリーなのですが(一応主人公の身には色々な事件がふりかかりますけど)、最後にいきなり深いテーマを突きつけられた感じで、「ほぅ、そう持って行きたかったのねぇ~」な物語でした。
あと、キリスト教文化圏で勝手に聖書の内容を変えたりするのって大丈夫なのかしら(アダムとイブも守護精霊を持っていたということになっている)という心配も残りました。あまり誉めてませんけど、悪い作品ではないし、きっと後世に残る可能性も秘めているのでしょう
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