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2003年11月24日 (月)

「幼な子われらに生まれ」 重松清

幼な子われらに生まれ (幻冬舎文庫)

幼な子われらに生まれ

重松清

幻冬舎文庫 1999.7  

バツイチ同士の夫婦に子供が生まれるという物語。主人公は妻とその2人の連れ子と生活しているのだが、妻の妊娠をきっかけに小学5年生の上の子が自分を避けるようになり、「本当の父親に会いたい」とせがむようになる。そしてそれはやがて、つぎはぎだらけのその家族の問題点を次々と顕わにしていき、主人公は、どうしようもない思いを紛らわすために風俗店で「赤ちゃんプレイ」にはまり、別れた妻と暮らす一人娘に思いを馳せる。

現代の家族の問題を書き続ける作家重松清のいつもながらの重松節が炸裂です。涙を流しながら「赤ちゃんプレイ」をする主人公の姿は本当に切なく哀しいものでした。

この物語はハッピーエンドとも言えない様な終わり方をするのだが、妊娠という本来は嬉しいはずのイベントを機に破綻しかけた家庭が、なんとかつながっていこうとする様子を重松ならではのあまりにリアルなドキュメントチックな手法で淡々と描いてます。

印象的な登場人物は主人公の前妻との間の娘と風俗嬢の2人。この娘はこの物語の中ではかなり「大人」である。物語の中のキーパーソンとなる人物なのだけど、彼女の登場するシーンは決して良い場面ばかりではないのになぜか安心してしまうのは、「主人公が本当に愛している娘」という設定に感情移入してしまうからなのだろうか。

もう1人、風俗嬢さんは、主人公に向かって「自分はそのとき一番近くにいる人を愛する」という隣人愛を語り、過去にも未来にも縛られず生きている。物語中出てくる唯一の明るいキャラクタでとても印象的。

あとは、ラスト近くの贈り物のシーンでは不覚にも涙腺がゆるんでしまいました。切なすぎます。

この作品はテレビドラマに向いていると思いました。「ライオン先生」のようではなく、原作に忠実に映像化すればかなりの作品ができるのではないでしょうか。

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