「螺旋階段のアリス」 加納朋子
螺旋階段のアリス 加納朋子 文春文庫 2003.11 |
「ななつのこ」で日常生活の中の謎を解決するというスタイルをとった作者の作品で、これもまた探偵事務所を舞台にしていながら、仕事内容は「鍵を探せ」だの「自分が浮気していないことの証明」だの「地下室で電話が鳴っている」といったことばかり。
このスタイルは北村薫の「<私>シリーズ」などにも見られるが、加納朋子の方が抜群に面白く、そしてよく練られていると思う。加納作品の特徴とも言える、「複数の連作短編集が全体で1つの大きな謎を解決する」もしっかりと健在。
この本の面白いところはタイトルが示すように全ての物語が「不思議の国のアリス」をモチーフにしているという点。アリスファンとしては見逃せない設定である。嬉しいことにファンの期待を裏切ることもなくそつなく設定を使っているのも嬉しい。
あと注目すべきは主人公と一緒に探偵助手として働く少女「安梨沙」(アリス+チェシャだと推測される)がかなりメインのキャラなのにその素性その他が全く持って謎に包まれているという点。この辺りが最終話でこの短編集の全体を束ねるような核心部分になってくるのですが、さらっとすぐに読める、なかなか楽しい大衆娯楽小説でした。
加納朋子、なかなか目が離せません。
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