映画「アイリス」
iris 2001年 イギリス |
イギリスの国民的作家であり哲学者でもあるアイリス・マードックがアルツハイマーになってしまい、文学者である夫がそれを支えるという実話を基にした作品。
2人の若き日のエピソードを随所に織り込むことで夫婦間の絆や愛の歴史が語られ、アルツハイマーに襲われる現在の状況が際立つというかなり秀逸な構成。
この映画若き日の2人、現在の2人の4人のうち3人がアカデミー賞にノミネートされ、現在の夫を演じたジム・ブロードベントが受賞していて、演技のぶつかり合いが感じられる見事な作品でした。ジム・ブロードベントは「ムーラン・ルージュ」の支配人と同一人物とは思えないほどの健気で静かな夫を好演していました。
そして若き日のアイリスを演じるケイト・ウィンスレットは先日見た「ハムレット」での演技を遥かに超えて見ごたえがあり、「乙女の祈り」を思い出させてくれました。自由奔放なアイリスをセクシーシーンまで披露しながらとても生き生きと演じていました。こんなに脱いで良いの!?って感じもしましたが。
そしてもっとも重要なアルツハイマーになってしまう現在のアイリスを演じたジュディ・ディンチは見事な演技でそれを体現していました。「恍惚の人」の森重氏の持つ現実味のある迫力はありませんでしたけど。でもとても「綺麗」にアルツハイマーを演じていて本当に見とれてしまいました。
若き日の2人は、常に一歩を前をリードするアイリスを夫が追いかけるだけという関係で、彼は、頭もよく、数多の男を手玉にとり、秘密で多い尽くされた彼女の頭の中に自分がどれだけ入っていけるのかを常に心配しながら彼女とつきあっていた。その彼女が、最も得意とする言葉の世界を失っていき、予測不可能な行動を繰り返すようになるのを、夫は見守り、そしてまた自分の手の届かない世界に行こうとしているアイリスを前にして昔の自分を思い返す。
90分ほどの短い作品ながら、過不足ない演出と演技で、静かに、美しい映像で2人を描いていて心が洗われるような作品でした。イチオシです。
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