「オルガニスト」 山之口洋
オルガニスト 山之口洋 新潮文庫 2001.8 |
解説が瀬名秀明という理由だけで買ってみました。こういう本の買い方は結構珍しいです。第10回日本ファンタジーノベル大賞受賞ということです。
ストーリー。ドイツの音楽大学に勤める主人公のもとに南米で収録したという1枚のMDが持ち込まれる。そこには天才的なオルガンの演奏が収められていた。やがてこれをきっかけとして事件が起こる。これとともに、主人公の学生時代におきた事件が語られ、現在の事件とそれが絡まっていく・・・。
この小説はとにかく「バッハ」と「オルガン」が重大なテーマとなっています。どうやらこの作者は相当のバッハ通で、オルガンというモチーフを見事に小説に持ち込んでいます。この作品は「バッハ」である必然性があります。印象派などもって来ようものならストーリーは台無しです。「オルガン」の意味も最後にきてニヤリとさせられました。そして東大工学部出身の作者ならではのかなり理系な展開も。
「ファンタジー大賞」を受賞した理由が分かるのは物語が4分の3を過ぎたくらいから。それまでは、「音楽をテーマにした学生もの」という印象が強く、突然「ミステリー」に急変して、気づいたら「SF」で、「ホラー」の余韻も感じたみたいな不思議なお話でした。感想とかストーリーとか全てネタバレになってしまうような作品で、作者の発想力はお見事でした。
「アマデウス」を思い出させるような作品でした。音楽好き、とくにバッハ好きなら読んでみると面白いかもしれません。外国で映画化してもらいたいですね。
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