「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
宿命の交わる城 イタロ・カルヴィーノ 河出文庫 2008.1. |
イタリアの作家カルヴィーノの作品が文庫で登場。カルヴィーノ作品もこれで5作くらい読んだことになります。結構ファンです。実験的なものが多く読みにくい作品もあるのですが、今回はかなり読みやすかったです。
これはとにかくユニークな発想で作られたお話で、タロットカードのカードの図柄を読み取って物語りが展開していくという設定になっています。
占いみたいにして読み取るのではなくて、純粋にカードの絵柄を見るという風になっていて、女性の絵のカードはときに助けてくれた村娘になったり、誘惑する女になったりします。で、本も上半分にはカードの図柄が描かれていて読者がカードを見ながら読み進められるような工夫も。
作品はある夜にお城に泊まった旅人たちが机の上に並らんだタロットカードをもとにそれまでの自分たちの人生を語るというオムニバスになっていて、全く同じ配置のカードを上から読むのと、下から読むのとで全く異なった物語が浮き彫りになるというかなり面白いアイデアで書かれています。
2部構成で、2部目は「宿命の交わる酒場」というタイトルで、酒場の中で口が聞けなくなってしまった客たちが目の前にあるカードを頼りにお互いの物語を示すという設定になってます。で、この本の一番最後は、タロットカードを読み取ることで「リア王」「マクベス」「ハムレット」の3作品が同時進行するというスペシャルな力作が収められてます。
1組のタロットから無限の物語を生み出すカルヴィーノの想像力に脱帽なのですが、それにもまして感じるのは1枚のカードが無限の解釈を用いるという記号論的な問題を含んでいるということです。イタリアといえば大作家であり記号論学者でもあるエーコの存在がありますが、イタリア人は記号というものに対する意識が強いのかもしれませんね。まぁ、2人の作家見ただけで結論付けるのもなんなのですが。
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