「掌の中の小鳥」 加納朋子
掌の中の小鳥 加納朋子 創元推理文庫 2001.2. |
近頃すっかり加納ファンになってしまいました。今回もいつもながらの連作短編の形をとりつつ全体が長編としても読める構造。もはやこのスタイルで書かせたら右に出るものはいないのでは?
ストーリーはミステリーなので多くは語れないのだが、ふとしたことで真っ赤なワンピースをきた天使のような女性とであった主人公が、彼女と付き合い始めて、行きつけのバーで日常の中で起こった不思議な事件の謎解きをするというような感じ。ミステリーとは言え、警察が動くような事件ではなく、本当に日常に根付いたできごとなので、ほのぼのとした爽やかな空気が流れてます。
この作者は処女作「ななつのこ」を越える作品を書くのは相当難しいと思うのですが、キャラクター作りなどがかなり上手くなってきていて、ますます好印象。
作品は、謎について語る部分と謎解きの部分との境で区切りがついているので、読者も一緒に謎解きに参加ができるようになってます。実際、本当に小さな一文が謎解きの核心になっていたりして、作者の伏線の張り方に脱帽なのですが、この作品を読むに当たっては、謎解きに参加するのではなく、ただ素直に作者が答えを提示するのを見て、その場面を読み返してみて、「あ~やられた」と思っちゃったほうが断然楽しめます。作者もそれを意図しているのだと思いますし。この作家、そろそろ直木賞候補になっても良い頃ではないでしょうか。
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