「The Red Notebook - true stories - 」 Paul Auster
teh red notebook - true stories Paul Auster |
今月末に邦訳の出るオースターのエッセイ集(?)の原書です。この本、存在は知ってましたが小説なのか、エッセイなのか、評論なのか全く分からないし、本屋にも置いてなくて内容を覗き見ることもできずにいて買うのを控えていたのですが、今月末の邦訳出版に際しての紹介文を読んで購入を決意。
この本はオースターの小説の最も重要なテーマといえる「偶然」に関して、彼がこれまで見聞きした「偶然」を感じるエピソードを綴った4つのエッセイ(書かれた時期に結構幅がある)を1冊にまとめたもの。例えば、台湾のホテルにて、たまたま出会った人と話をしていたら、お互い妹同士が同じマンションの同じフロアに住んでたとかそういうエピソードが沢山詰まっています。
大体1エピソードが2~7ページくらいで100ページくらいの本なので、全部で30くらいのエピソードが載ってます。彼の作品のモチーフとなっているエピソードの寄せ集めなのでオースター作品の理解には欠かせない1冊かもしれません。
似たような趣旨の1冊の「孤独の発明」はオースターの作品のエッセンスが全て詰め込まれていて抽象的なイメージも多かったのですが、この本は単純明快なノンフィクションばかりが集まっているので非常に楽しめました。
これほどまでに偶然の一致が身の回りに起こること自体が運命的だと思ってしまいますが、オースターが「偶然」をモチーフにした作品を書いているのはもはや運命なのかもしれません。それとも、我々が気に留めないだけで偶然の一致は常に身の回りに存在しているのかも。
多数の偶然の一致エピソードの中でも印象的なのは、著者が作家となるきっかけを作ったとも言える野球場のエピソードです。憧れのスター選手に会えたのに周囲にいる誰もが筆記用具を持っていなかったのでサインをもらい損ねたということ経験して、それ以降彼は常に鉛筆を携帯するようになったとのこと。ものを書くという職業に就く直接のきかっけとなるエピソードとして紹介しています。こんな話が読めるだけでオースターファンは唸りますよ。洋書だったのにあっという間に読んでしまいました。
そもそも僕は「偶然」が好きでした。小学校のときに「偶然の一致」ばかりを集めたマニアックな新書(最後のほうはユングについて解説してあった)があってそれをかなり愛読していました。可愛くない子供だ。偶然って時として本当に恐ろしいほどに存在しますよね。非科学的な力って絶対に何らかの形で存在しているんだと強く感じます。
ちなみにこの本は英語が分かりやすいので、この中の1エピソードを高校の教科書とかに載せても良いかもしれません。
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