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2004年2月

2004年2月28日 (土)

「センセイの鞄」 川上弘美 

「センセイの鞄」 川上弘美 平凡社 

川上弘美ベストとの評判が強い長編小説(連作短編とも言えますが)。ずーっと読みたくて文庫になるのを待っていたのですが、先日Sさんのご好意で貸していただきました。この作品確かに面白い。名作ですねぇ。自分の川上ベストは「消える」(「蛇を踏む」の中の2話目)ですが、「センセイの鞄」も同じくらい好きです。文庫になる前に買っちゃおうかな。ストーリーは40歳も間近というOLの「ツキコさん」が行きつけの居酒屋で高校時代の国語の先生である「センセイ」と出会い、飲み仲間になり、次第に惹かれあっていく様子を、描いています。2人の「距離感」が心地よかった。

自分は川上弘美といえば芥川賞作品「蛇を踏む」(文春文庫)や「神様」(中公文庫)のテイストが好きなのだが、この作品は一風違っています。川上弘美は先日読んだ小川洋子や堀江敏幸の解説の中で自ら作家は変化を繰り返すものというようなことを言っていて、「センセイの鞄」は明らかに「蛇を踏む」とは作風が変わってきています。初期の彼女の作品は、蛇が母親に変身とか、壷から人が出てくるとか、クマとピクニックにいくとか、兄が消えるとかの彼女の言うところの「うそばなし」がメインだったのですが、「溺レル」などを読んでみても、最近は「うそばなし」の度合いが下がってきているように思われます。自分は「うそばなし」のシュールな世界観と川上弘美の独特の文体が好きだったのでちょっと物足りなさを感じていました。で、「センセイの鞄」なのですが、この作品も「うそばなし」の度合いはかなり低くいのですが、川上マジック炸裂といった感じの淡々とした文体が心地よくていつまででも読んでいたいような作品でした。何気ない日常を描いているだけなのに、ほんわかとした不思議なテンポで、ちょっと切ない気持ちになる作品。川上さん自身が新たな展開を迎えて進化しているのを感じます。

川上弘美は、句読点や漢字・仮名といった表記の仕方に独自性があって、この作品でも「センセイ」と「先生」や「ツキコさん」と「月子さん」といった呼び方や、「冷奴」と「ひややっこ」といった微妙な表記の使い分けがとても効果的でした。あと、鏡を「姿見」と言ったりする語彙の選択も本当に心地がいいです。ストーリーとしては、小島というツキコさんの高校時代の同級生が出てくるエピソードと、キノコ狩りが印象的でした。あとは全体に「行きつけの居酒屋とかって楽しそうかも」とか思わせて、読後に誰かとサシ飲みしたくなるような内容ですよね。どうやらWOWOWでドラマ化されてて、ビデオも出てるっぽいので今度見てみようかと思います。小泉今日子と柄本明が主演らしいのだが、センセイの役はちょっとイメージと違うかも。

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映画「メイド・イン・マンハッタン」 

「メイド・イン・マンハッタン」 2002年 アメリカ

ジェニファ・ロペスとレイフ・ファインズが主演の絶対にあり得ないような展開のラブコメディ。ホテルのメイドさんがひょんな偶然(&勘違い)からホテルに宿泊中の上院候補とデートすることになってしまい、その後・・・。「普通にあり得ないから!」と突っ込みたいのをぐっとこらえれば、明るい映画だし、テンポも悪くないしでそこそこ楽しめました。前向きに生きていこう!みたいな定番のメッセージが散りばめられていて、ストーリーのありえなさを我慢すれば(こればっかり。)、心に残る台詞もありました。主要キャスト意外のサブキャラクターたちの描き方がなかなか上手くて安心して楽しめる作品だったし。欧米ってこういうシンデレラ・ストーリーの映画多いですよね。やっぱり階級の差がはっきりとある社会だからですかね。日本も階級差のあったかつては「落窪物語」とかあったし。芸術的な価値はほとんどないし、映画館でお金払って見るのはためらわれる感じですけど、家で愉快な休日を過ごすという目的なら見ても損はないかと。BGMもノラ・ジョーンズとか使われてて良い感じでした。

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2004年2月24日 (火)

映画「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」

「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」 2003年 アメリカ

またまた微妙な邦題です。原題「My Big Fat Greek Wedding」から何故「グリーク」だけ抜いたりするのでしょうか。「ビッグ」と「ファット」は英語として比較的馴染みが深いけど「グリーク」は「?」な人もいるからとかそういう理由ならば、全然違う邦題をつけたほうが良いと思います。むしろ主人公の容姿よりも「ギリシア系であること」のほうが物語りのテーマなんだしさ。

ストーリーは、ギリシア系移民の家庭に育った主人公がギリシア系ではない男性と恋に落ち結婚を決意するも、ギリシア魂に溢れる両親や親戚にふりまわされるというカルチャーギャップを描いたコメディ。「ベッカムに恋して」とほとんど同じようなテーマなんですが、「ベッカム~」はどんなに明るい映画でもやっぱりイギリス映画ならではの真面目で重い空気があったのに対して、こちらはハリウッド娯楽作品のテイストが強かったですね。普通に笑える映画で、大勢で見て声を出してゲラゲラと盛り上がりたい映画でした。ストーリーも主演しているギリシア系の女優さんが自ら書いたものだそうで、偏見に彩られたものではなく生のギリシア系社会が描かれていたのではないでしょうか。こういう映画って外英の授業で先生たちが喜んで題材に使いそうです。学科の授業で「ぼくの国はパパの国」(パキスタン移民inイギリスの映画)とか「ジョイラック・クラブ」(中華系移民inアンリカ)の映画を見て異文化コミュニケーションを考えるみたいなのをやったし。

ギリシア系の社会の文化や慣習はヨーロッパのそれとほとんど同じだと思っていたのですが、意外や意外、「家族」とかに重きを置くんですね。割とアジア系の思想に近いんだなぁと思いました。でも移民となると、自分たちのアイデンティティを保つために必要以上に自国の文化や、移民同士の結束にこだわるのかもしれませんね。古代国家のプライドの高さはギリシアならではですね。「頑固な父親」だけは全世界共通みたいですけど。この映画、ギリシア人たちの想像を絶する異文化ぶりにきょとんとした結婚相手の両親が「It's Greek to me!」と言う場面があるのですが、まさにこの熟語通りの内容の映画でした。しかし、ここの字幕は「(彼らが話しているのは)ギリシア語だよ。」でしたね・・・。「It's Greek to me」は日本語の「チンプカンプン」と全く同じタイプの語源で「ギリシア語のようにさっぱり分からない」という意味ですよね・・・。

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2004年2月22日 (日)

「プラネテス」第4巻(完結) 

「プラネテス」第4巻(完結) 幸村誠 講談社

「一部完」などとなっていますが、某バスケ漫画同様に第2部が描かれることはないと思ったほうが良さそうです。この漫画、歴史的傑作です。ANDREくんの読んだ漫画の中での殿堂入り間違いなしです。一応近未来の宇宙開発を舞台にしたSFなんですけど、テーマはかなりハードに文系です。感想とか上手くかけませんが、広い宇宙の外側へ飛び出していく様子を描きながらも、常に人間の精神という内側へのベクトルに向かって進む物語がとても印象的でした。コミックという媒体ながらも文学賞をあげてもいいのではないかと思います。この4巻ではこれまでその内面に触れるようなエピソードが語られなかったキャラに関するエピソードがメインになってますね。この巻で登場する「男爵」というキャラは僕はかなり好きです。最終話で再び主人公ハチマキが美味しいところを持っていってますけど、この作品の主人公は人類そのものですよね。この作品、宮沢賢治の引用が多いのもお気に入りの理由の1つですかね。じっくりと読み直して哲学したい作品です。

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2004年2月20日 (金)

「熊の敷石」 堀江敏幸

「熊の敷石」 堀江敏幸 講談社文庫

ちょっと前に芥川賞を受賞した作品が文庫化しました。堀江作品は白水Uブックスの「郊外へ」という作品を昨年読んで以来2冊目。「郊外へ」はエッセイとして雑誌に連載されたものの実はフィクションだったという作者のリアルな筆力を示す作品だったのですが、この「熊の敷石」も全く同じタイプの作品でした。エッセイのように淡々と話を進めて、そこにフランス文学者ならではの仏文学作品のこぼれ話を交えるという手法。「郊外へ」は1つの作品が30ページほどの連作だったのですが、この作品はそのスペシャル版ともいえる120ページほどのボリューム。エッセイ調のリアルで印象的ないくつかのエピソードと、フランス文学からの割と重めのテーマを絡めていてなかなか楽しめる作品でした。ストーリーは主人公のフランス文学者が旧友と会うことになって、ノルマンディの田舎町を訪れ、ユダヤ人の友人や、盲目の子供を持つ女性とのエピソードを描いたもの。

何気ない態度や口にしたことが相手にとっては深い意味を与えるものになりかねないと言うようなことが1つのテーマとして存在していて、さりげないけど考えさせるような内容を含んでいます。タイトルのもとにもなった「熊の敷石」という言葉の生まれたもとになっている寓話の用い方もとても上手でした。この作者はやっぱりこのタイプのエッセイ風だけど実はフィクションていうスタイルが得意なようで他に収録されている普通の小説風作品はあまり面白くなかったです。

この「熊の敷石」という本、先日の「偶然の祝福」に次いで解説が川上弘美でした。そしてなんたる偶然か今日借りてきた「センセイの鞄」は川上弘美の作品。2つの解説を見ると彼女は作家は作風や文体の変化を繰り返すものというような考えを持っているようで、「センセイの鞄」もちょっとみた感じだと芥川賞受賞作の「蛇を踏む」と同作者とは思えない作風の変化を感じます。シュールな世界から遠ざかってきてますね。

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2004年2月19日 (木)

映画「リロ・アンド・スティッチ」 

「リロ・アンド・スティッチ」 2002年 アメリカ

ディズニーの長編アニメ作品。マッドサイエンティスト風のエイリアンによって生み出された「大都市を破壊すること」本能のみを持った生物が地球へ。それを追って銀河連邦の役人も地球へ。そして、凶悪生物は舞い降りたハワイの地でリロという少女と出会い、「愛」を知ることになる。みたいなお話。こう書くとかなり蓋をしたくなるようなストーリーです。しかしこの作品はディズニー史上もっとも重いテーマを扱っているといっても過言ではありません。凶悪生物を飼うことになる少女は、両親を失い、姉と2人暮らし。福祉管理局が彼女を施設に入れるための調査に訪れており、彼女自身もその孤独さから周囲に八つ当たりをしてしまい、より深い孤独に陥っているという設定。普通に重いです。しかしこの映画はそれをユーモアとプレスリーの音楽に乗せてパーっと明るく描いていました。見る前の期待度は20%くらいでしたが実際はかなり良かったですよ。とりわけ、見る前は全然良いと思わなかったスティッチが、見た後にはすっかり可愛く見えているのが不思議でなりません。

この作品はどちらかというとピクサー作品の毛色を強く感じるのですが、やっぱりピクサーのほうが作り方はうまいと感じます。とりわけ、宇宙シーンはディズニー的に完全にやってしまった感が強いです。宇宙のバトルの延長で地球の建物を破壊するような構図は過去のディズニー作品では完全にありえなかったと思います。日本のアニメに媚を売ったのでしょうか。ハワイでの場面がかなり秀逸に描かれているだけに残念でした。ご都合主義などと言われかねないようなストーリーはまぁ子供向けだしということで・・・。

しかしながら、かなり良い点も多かったです。とにかくテンポが良くて2時間以上あるのにもっと長くても良いと感じさせるような作品。あっという間です。見る前はつまらなかったら早送りしようなどと思っていたのにそんな思いは杞憂に終わりました。さらに、水彩画タッチの背景が素晴らしく美しいです。ハワイの自然の美しさを強調するのに一役買っていました。あとはプレスリーの楽曲の起用ですね。作品全体のテンポの良さはBGMとして流れるプレスリーの影響が強いのかもしれません。お気に入りのシーンはタイトルが出る冒頭のハワイシーン(ディズニーは相変わらずタイトルシーンが上手い)と凶悪生物が砂浜で自分に砂をかけるシーンです。後者は泣けます。

最近のディズニーは童話ミュージカル路線→大人向けラブロマンスミュージカル路線→オリジナルを含む今風ポップ路線と変遷しているように思います。オリジナルはピクサーに押されて外してばかりいるような感じがしますが、今回は久々にヒットでしょう。「家族愛」にテーマを絞ったのはピクサーの影響強しですかね。

ちなみにこの作品。スティッチのアニメーターさんが生でキャラクターを書くのをディズニーワールドで見学しました。しかし、公開前で作品の認知度が低く彼女が解説を交えながら生でスティッチを書いたにも関わらず客は皆シーンとしてたんですよね。その後彼女がミッキーを生で書いたときは大盛り上がりでした。実際に映画を見た今となっては、すっかりスティッチの魅力の虜になってしまっているわけで、あの日、生スティッチを見られたのに、割とがっかりしていた自分が悔やまれます。

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2004年2月15日 (日)

「さつき断景」 重松清

「さつき断景」 重松清 祥伝社文庫

重松清の最新文庫作品。電車1本の差でサリン事件を免れた会社員、神戸の震災のボランティアに参加した高校生、娘が嫁ぐ定年間近の父親の3人の生活が1995年から2000年までの5月1日という日をどのように過ごしたかを描く異色な設定の作品。1つの章である年の5月1日という1日の朝から晩までを描いて、それが95年から00年まであって全部で6章からなる作品。震災ボランティアに参加したという高校生が自分の1つ上の学年の設定だったので、一番注目して読んでいったのは彼のストーリー。1番面白かったのは会社員のストーリーでした。おそらく重松氏と同年代を描いているので最もリアリティをもって描くことができたのでしょう。

この作品はちょっと読みづらい箇所があります。95年から00年までの各時代をやたらと強調するのです。当時の新聞の見出し、テレビ欄、ニュースなどをこれでもかというほど見せてきます。恐らくそれぞれの時代を強調したいのでしょうが、最初は「あ~、こんなのもあったあった」と言う感じで読めてもそれがずっと続くと小説の本編の魅力を薄めてしまっているような印象を受けました。ちょっと実験的な面白い作品なのでこういうのも冒険的な手法だったのかもしれませんが。

この作品に登場する人物たちはとにかく人間としての弱さのようなものに満ち溢れていまして、自分の人生に戸惑いながらも前に進まなくてはいけないという心境をとても上手く描いていました。さらに、小学生から10代~60代までの各年代の登場人物が登場するので、95年から00年という時代を生きてきたもの全てになんらかの共感を与えられる作品なのかもしれません。震災、サリンから始まり、様々な殺人事件や日比谷線の脱線事故まで、20世紀末の暗いニュースを一堂に集めたのはルポライターとしても活躍する重松氏ならではでしょう。

最後にこの作品の重大なミスを。ボランティアに参加した少年は95年に高1で98年に受験してるので僕の1つ上の学年です。ですが「80年生まれ」だと言っています。早生まれということでしょうか。しかし、彼は夏に誕生日が来るとも言っているのです。自分と同じ年代だったので目ざとく見つけてしまったのですが、これって結構大きいミスですよね・・・。

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2004年2月12日 (木)

「蛇にピアス」 金原ひとみ

「蛇にピアス」 金原ひとみ

彼女のプロフィールによる先入観が強く、最初から好印象がもてなかったんですけど、やっぱり自分とは違う世界の物語。耳のピアスの穴を大きくして、どっかの部族みたいに巨大な穴を開けている人を見かけることがありますか、この物語の主人公は、それを舌のピアスで行ってます。舌に開けた穴を広げることで、最終的に舌を2分して蛇のようにしてしまうそうだ。さらに彼女は刺青を入れますし、かなりハードなマニアックな性生活も送ります。とにかく「痛い」描写が多くて、「痛い」話が苦手な僕は読みながら「うぉ~」と悶えることの連続。映像化してほしくない作品です。

「痛い」ということを除けば、昨日の「蹴りたい背中」のようにサラサラと読めてしまう作品。テーマも結構共通しているように思いました。この痛そうな描写が強烈で目立ってしまうのだが、ストーリーそのものはいたって単純な薄い印象。やっぱり自分は「優等生」なので、こういう作品には抵抗があります。ああいう風になってはいけません」的な生活の典型を描いているんですよね。学校とかではこういうライフスタイルを批判する傾向にあるのに、「優等生」って「非行」よりもマイナスイメージが強いよなぁと常々感じます。そもそも、こういう題材の作品はそれだけで僕は読むのを拒否してますからね。なので、芥川賞の選考委員でこの作品を推したという村上龍の作品はカバー裏のあらすじを読んだだけで僕は読む意欲を失ってしまうわけで、きっと金原さんの作品も今後偏見を持って横目で見ていくんだろうなと思いました。

ちなみにこの作者のお父さんは翻訳家だそうで、アマゾンで名前で検索したら、その翻訳書を数多く読んでいることが分かりました。イギリスとかアメリカとのファンタジーを中心に翻訳してて、年少の読者向けの岩波少年文庫とかでも翻訳してる人でした。へぇへぇ。

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2004年2月11日 (水)

「偶然の祝福」 小川洋子 

「偶然の祝福」 小川洋子 角川文庫

先年でた「博士の愛した数式」という本がかなり気になっていて、文庫になるのは当分先だろうから、同じ作者の本を読んでみようということで、角川文庫の新刊から。とある女性作家を主人公にして彼女の身の回りに起こった偶然の出会いとちょっと不思議なできごとをまとめた連作短編集。一瞬、これはエッセイなのかと思うような文体なのですが、やっぱりフィクションでして、なんだか不思議な感じのする作品でした。決して明るい作品ばかりではないのに爽やかな印象が残りました。「キリコさんの失敗」と「涙腺水晶結石症」というお話が面白かったです。この作者のほかの作品も読んでみようかな。ちなみに解説が川上弘美でちょっと嬉しかったです。

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2004年2月10日 (火)

「蹴りたい背中」 綿矢りさ

「蹴りたい背中」 綿矢りさ

芥川賞作品掲載の文芸春秋を買ってしまいました。とりあえず読みやすそうな「蹴りたい背中」の方を読んでみました。ストーリーはクラスのグループで行動するような集団の中に馴染めない女子高生が主人公。彼女とクラスメートには目もくれずに1人のファッションモデルを熱狂的に応援している同級生の男の子との交流を描いた作品。作者は19歳ということで、登場するネタも若いし、文も軽いタッチでサラサラとあっという間に最後まで読めてしまいます。この人の作品はもしかしたら読まれる時代と年代を選ぶのかもしれません。とりあえず、この作品に共感できたり、内容についていくことのできる世代のうちに読めて良かったかなと思いました。ギリギリセーフって感じでしょうか。この作品の主人公の気持ちは、自分も同じようにして人と接してきたことがあるし、結構「あ~、分かる分かる」というものでした。彼女は集団に溶け込むのを拒否していますが、きっと集団の中に入ってしまったら恐ろしくその中につかってしまうタイプであろうし、自分でもそれが分かっているからこそこから離れようとしているのではないかと思います。ずっと1人で喋ってしまって友達がひいてるのを感じてしまったという彼女の体験はまさに普段の僕ですね・・・。

この作品、書き出しの部分が「あれ?」っていう感じで何か無理してない?みたいな文章が続いたのですが、後半に進むにつれて自然にのってきたという感じでした。とりたてて好きってわけではないけど、そこそこライトに楽しめる作品だったのではないでしょうか。このライトなノリが純文学としてはどうなのかなとも思ってしまうんですけどね・・・。映画化するなら今日のドラマの余韻で宮崎あおいに主役をやってもらいです。割と映像化したときのシーンが想像しやすい作品でしたね。さて、注目の芥川賞もう1作「蛇にピアス」は扱ってる題材&テーマが自分の生きてきた「優等生」な日常からかけ離れているのでちょっと苦手なタイプですが短い作品だし読んで見ます。「トレインスポッティング」みたいに自分で思った以上にハマるかもしれないし。

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映画「ファインディング・ニモ」 

「ファインディング・ニモ」 2003年アメリカ

で、今日見てきた映画です。ディズニー&ピクサーの新作。「NEMO」を「ニモ」とする翻訳のセンスが許せません。これは絶対にウォルト・ディズニーが実写で製作した往年の名作「海底2万マイル」を意識してつけられた名前のはず。絶対「ネモ」だろ!とずっと思ってます。

まぁ、そんな話はさておき、ピクサー映画のCGはますますグレードアップしていましたね。「水」がとにかく上手いです。鯨に飲み込まれるシーン(これも「ピノキオ」へのオマージュか)があり、鯨の口の中で波が起こっているのだが、そのときの波は本物の水にしか見えません。さらには、埠頭の錆付いた鉄と海面を雨がポツポツするのを映すシーンも「実写?」と思ってしまったし、ところどころ「もしや実写では?」と思いたくなるような映像がありました。CGの技術は確実に進化しています。

問題のストーリーです。熱帯魚の子供が人間に捕獲され水槽で飼われることになったのをその父親が探しにいくというもの。父親の大冒険がメインになってます。はじまって5分で全ストーリーが予測可能なんですけど、いつもながらのピクサー作品の上手さで2時間楽しめる作品になっていました。ただ、前作「モンスターズインク」や僕が脱帽した「トイ・ストーリー2」と比べるとちょっと見劣りする作品。ストーリーに前作までの「子供を見つめる大人の優しさ」的視点があまり感じられませんでした。前作までのピクサー作品は子供には理解できないような大人に向けて発信するようなシミジミとしたシーンがあったのですが、今作は子供向けという印象が極めて強かった気がします。あとは、様々な冒険シーンが「あ、これアトラクションになるんじゃない?」と思わせるようなものが多くて、そこにディズニーの戦略を感じてしまいました。で、とどのつまりこの映画で言いたいことは「魚は飼うな&食べるな」なのかな?実際アメリカでは子供たちが魚をトイレに流したとか・・・。魚を主役にするとどうしてもこの辺の処理が難しくなってしまいますよね。

お気に入りのシーンは「クジラ語」を話す場面です。超ツボにはまりました。家で見てたら大声出して笑ったこと間違いなしです。このシーン見られただけで大満足です。あと、「もの忘れ激しくて」というような字幕の付いてるシーンで「short term memory loss」という割と専門的な英語が使われていてニヤリとしてしまいました。あとはカモメたちの「mine!mine!」ってのもかなり好き。さらにツボにはまったのは歯医者で口を大開にして驚く少年。「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」で逃げ惑う少年と同じくらいの愛らしい驚き顔。彼のキャラクターグッズがあったら即買い間違いなし。この映画でちょっと気になったのは字幕のつけ方。主人公の魚は「クマノミ」という魚で、自分はクマノミだと告げると、周りの魚たちが「じゃ、何か面白いことをやってみろよ」と必ず言う設定になっています。これってこれだけじゃ意味不明のはず。クマノミは英語で「Clown Fish」と呼ばれていたので、「道化魚」ってことですよね。原語の面白さが生かしきれてなかったように思いました。

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2004年2月 6日 (金)

「チボー家の人々Ⅱ 少年園」 マルタン・デュ・ガール

「チボー家の人々Ⅱ 少年園」 マルタン・デュ・ガール 白水Uブックス

1月の終わりごろに第1巻を読み終えたチボー家の第2巻。全13巻なのでまだまだ先は長い。今回は作品の第2部にあたる部分。前巻から1年ほど経過した春先が舞台。前回家出をしたジャックとダニエル。ダニエルは暖かく家族に迎えられたものの、ジャックは父親によって少年園(少年院みたいものか)に入れられてしまう。2巻では、ジャックの兄のアントワーヌが少年園を訪ね、そこでの孤独で過酷な生活で変貌した弟を目の当たりにし、彼をひきとることを決意。そして、後半では、思春期のジャックの初恋、肉体的な恋を求めるダニエルへの不満、牧師の語る恋物語、ダニエルの母とアントワーヌの大人のかけひきなど、「男女の関係」が1つの大きなテーマとなって描かれる。

解説にも書いてあるのだが、この巻のクライマックスはジャックとアントワーヌがダニエルの家を訪ねる場面。様々な人生模様が一気に錯綜していました。あとは、この巻においてジャックは肉体的な恋を知ることになるのですが、その描き方がかなり曖昧でした。ジャックは精神的なつながりを重視していて、肉体的な快楽に走ろうとする親友ダニエルに良い感情を抱かないので、そんな部分も含めて曖昧な描写だったのかもしれませんけど、フランスの小説だしもっとリアルな描きかたをするものかと思ってました。

ジャックとダニエルは決別してしまう気がします。どうなるんだろう・・・。2人が決別しそうな予感は1巻の家出の場面で2人がはぐれてしまう辺りからもかなり感じています。先の展開が楽しみです。周囲の思想にとらわれずにいた子供時代の親友と決別するってのは手塚治虫の「アドルフ」を思い出させます。ていうかこの作品はなぜか知らないけど読みながら「アドルフ」を連想してしまうんだよなぁ。

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2004年2月 5日 (木)

映画「ドライビング・ミス・デイジー」 

ドライビングMissデイジー デラックス版

driving miss daisy

1989年

アメリカ

BSでアカデミー賞特集をやっていて、89年の作品賞をとった作品が放映されてました。この映画、気になってはいたのだが、「老婦人とその運転手の友情の物語」という説明を見て、勝手に食わず嫌いで敬遠してました。ところが、実際に見てみたらあっという間の1時間半。普段はビデオなのでテレビで放送されてる映画を真剣に見たのも久々。

ストーリーは上記のものが全て。1950年代~60年代くらいを舞台にして敬虔なユダヤ教徒の頑固な老婦人と彼女の運転手をすることになった初老の黒人男性の長きに渡る絆を描いた作品。小さなエピソードを積み重ねて丁寧に2人の関係を描いていました。

人種差別や、階級差別、宗教問題などもサラリと盛り込んでいるものの、あくまでもこの2人の絆がテーマなのでそれほど深入りはせず深刻な展開はありません。最高齢のアカデミー主演女優賞を受賞した主演のジェシカ・ダンディはもちろんこと、運転手を演じるモーガン・フリーマンがかなりいい味出してます。この役者さんやっぱり味がありますよね。あとは、老婦人の息子を演じるダン・エイクロイド(ゴーストバスターズでお馴染みの人)もかなりの熱演。脚本といい、役者といい素晴らしい作品でした。

車のシーンは後部座席の老婦人と運転手が斜めに座ってるのを正面から捉える映し方が多いのだが、運転手がいなくなり車内に1人残された老婦人を、正面からの構図で同じように捉えることで「ぽっかりと空いた空間」が強調され彼女の不安感を強調するような演出が憎いと思いました。あとは、2人が墓参りをする場面がかなりお気に入り。

でもこの映画の最大の魅力はなんといっても映像の美しさでしょう。冒頭から老婦人の庭の美しさに目を奪われますが、平原や満点の星空などさりげない映像がかなり美しいです。ストーリー自体淡々としていて飽きてもよさそうなのに、何故か引き込まれて最後まで見てしまう不思議な魅力を持った作品でした。もう1回見たいなぁ。

この年の作品賞って「いまを生きる」と「フィールド・オブ・ドリームス」がノミネートされてた年。受賞作のこの映画が割りと地味に歴史に埋もれつつあるのに対して、受賞を逃したこれらの2作品はどちらも名作としてよく知られてますよね。この年はかなりの大混戦だったんでしょうね。

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