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2004年2月28日 (土)

「センセイの鞄」 川上弘美 

「センセイの鞄」 川上弘美 平凡社 

川上弘美ベストとの評判が強い長編小説(連作短編とも言えますが)。ずーっと読みたくて文庫になるのを待っていたのですが、先日Sさんのご好意で貸していただきました。この作品確かに面白い。名作ですねぇ。自分の川上ベストは「消える」(「蛇を踏む」の中の2話目)ですが、「センセイの鞄」も同じくらい好きです。文庫になる前に買っちゃおうかな。ストーリーは40歳も間近というOLの「ツキコさん」が行きつけの居酒屋で高校時代の国語の先生である「センセイ」と出会い、飲み仲間になり、次第に惹かれあっていく様子を、描いています。2人の「距離感」が心地よかった。

自分は川上弘美といえば芥川賞作品「蛇を踏む」(文春文庫)や「神様」(中公文庫)のテイストが好きなのだが、この作品は一風違っています。川上弘美は先日読んだ小川洋子や堀江敏幸の解説の中で自ら作家は変化を繰り返すものというようなことを言っていて、「センセイの鞄」は明らかに「蛇を踏む」とは作風が変わってきています。初期の彼女の作品は、蛇が母親に変身とか、壷から人が出てくるとか、クマとピクニックにいくとか、兄が消えるとかの彼女の言うところの「うそばなし」がメインだったのですが、「溺レル」などを読んでみても、最近は「うそばなし」の度合いが下がってきているように思われます。自分は「うそばなし」のシュールな世界観と川上弘美の独特の文体が好きだったのでちょっと物足りなさを感じていました。で、「センセイの鞄」なのですが、この作品も「うそばなし」の度合いはかなり低くいのですが、川上マジック炸裂といった感じの淡々とした文体が心地よくていつまででも読んでいたいような作品でした。何気ない日常を描いているだけなのに、ほんわかとした不思議なテンポで、ちょっと切ない気持ちになる作品。川上さん自身が新たな展開を迎えて進化しているのを感じます。

川上弘美は、句読点や漢字・仮名といった表記の仕方に独自性があって、この作品でも「センセイ」と「先生」や「ツキコさん」と「月子さん」といった呼び方や、「冷奴」と「ひややっこ」といった微妙な表記の使い分けがとても効果的でした。あと、鏡を「姿見」と言ったりする語彙の選択も本当に心地がいいです。ストーリーとしては、小島というツキコさんの高校時代の同級生が出てくるエピソードと、キノコ狩りが印象的でした。あとは全体に「行きつけの居酒屋とかって楽しそうかも」とか思わせて、読後に誰かとサシ飲みしたくなるような内容ですよね。どうやらWOWOWでドラマ化されてて、ビデオも出てるっぽいので今度見てみようかと思います。小泉今日子と柄本明が主演らしいのだが、センセイの役はちょっとイメージと違うかも。

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