「きょうのできごと」 柴崎友香
「きょうのできごと」 河出文庫 柴崎友香
ハードカバーのときからちょっと気になっていた作品が文庫化しました。「大学院に合格して、京都に引っ越すことになった青年の引っ越し祝いをするために数人の仲間が集う。」という出来事があったとある一日を舞台に、その引っ越し祝いに参加した5人を主人公にした独立した5つの短編を集めた連作短編集。引っ越し祝いという場に集まった人々が、何をその日の「きょうのできごと」としてとらえていたのかというようなことを描いているともとることができて、それぞれのお話は同じ日のことでも、時間に結構ばらつきがあったり、ところどころが重なったりしていて、それぞれの人生の交点ともいえる同じ出来事も、人によって捉え方が異なっていたりで、作品の持つスタイル自体がなかなか面白い1冊。
この作品の面白さは、徹底した「自然さ」にあるのだと思う。ここで描かれる出来事は大きな事件もないし、本当に日常の一部を切り取っただけのように感じるし、関西弁で書かれた会話も「自然さ」を強調しているように思う。なんでもない出来事を描いているはずなのに、妙に心に残る不思議な作品でした。僕の大好きな「神戸在住」というコミックとかなり似た雰囲気をもっているように感じました。
この小説って昨日から映画が公開してるんですよね。妻夫木&麗奈が主役で。ちょっとイメージ違うけど、映画も見てみたいです。まぁビデオになってからでしょうけど。
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