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2004年3月29日 (月)

「バッテリー」 あさのあつこ

「バッテリー」 あさのあつこ 角川文庫

もともと児童書として出たものの内容が大人向け以上に素晴らしいという話をしばしば聞いていた作品が文庫化しました。ストーリーは、天才的なピッチャーの才能を持った野球少年が、転校して、新天地で強力なキャッチャー少年と出会うという物語。彼らの出会いである中学に入る前の春休みの数日間を、体が弱いが兄に憧れ野球に目覚める主人公の弟との物語を絡めながら描く。作者があとがきで書いているようにこの作品は確かに稚拙な感じがする部分がいくらかあるのだが(語り手の視線の動かしかたが不自然とか)、登場する子供たちのキャラクター作りとかがかなりしっかりしてて、あまり気にすることなく楽しめました。

主人公が自分は天才だと信じきっていて(実際に天才なのだけど)、自分1人しか見えてないような感じなのですが、それを周囲の仲間たちがどう受け入れていくのかというのがポイントになってくるのだと思います。「努力すれば実る」というようなスポ根ものが多い中で、世の中には確かに天才は存在して、それを周囲の仲間、家族がどう受け入れ、育ていくのかというような問題もあるわけです。自分は1人でもやっていけると豪語する彼もやはり1人では生きてはいけないわけで、物語でもそれが象徴的に描かれていました。この作品はどうやらこれからシリーズ化していくようで現在はハードカバーが5巻まで出ているようです。ドラマ化とかしたら面白いかもしれませんね。ちなみに作中で主人公が、誰かに憧れたりしているようでは本当に強い選手になれないようなことを言っているのだが、これはまさに僕が「尊敬する人は?」っていう質問に対して、「いない。強いて言えば自分。」と答えるのと全く同じ心理で、妙に共感してましまった。

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