「ささら さや」 加納朋子
「ささら さや」 加納朋子 幻冬舎文庫
今月の新刊です。前から気になっていた作品なので文庫化に当たって早速購入。今回も加納朋子お得意の連作短編です。1つ1つの完結した短編で構成されているのに、全体で1つの長編にもなっているという構成の上手さは相変わらず。
ストーリーは、交通事故で夫を亡くした主人公が生まれたばかりの息子を連れて、田舎町に引越し、様々な小さな事件に巻き込まれるのを、幽霊になった夫が、映画「ゴースト」ばりに霊感のある人々の体を借りて助けにきてくれるというもの。ここで起こる事件は、加納朋子の最も得意とするジャンルであろう、日常の不思議で、宅配便で送られてきた空っぽの箱の正体が何かとか、そういうレベルのもの。これまで読んできた加納作品と比べると、謎解きに関してはっとさせられるような細かい伏線の張り方が見られず、ちょっと物足りない感じ。さらにいうと、先に述べたあらすじからも感じられますが、「馬鹿ッサヤ(主人公の名前が「さや」)」とか言って死んだ夫がいつも助けに来てくれるとかいう設定が、「王子さま願望」みたいのの塊のように感じられ、極めて女性中心のファンタジーという印象を受けてしまい、あまり楽しめませんでした。この作品はかなりキラキラ目が輝いている画風でコミックになっているようなので、そういう要素が強い作品なのでしょう。登場人物も8割女性だし。
加納作品はやっぱり創元推理文庫の3冊が一番面白いですねー。個人的には「ななつのこ」の衝撃が強かったので、それを越える作品が出るのを期待しているんですけど、どうなのでしょうか。
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