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2004年6月

2004年6月30日 (水)

「THINK シンク 夜に猫が身をひそめるところ」 吉田音 

「THINK シンク 夜に猫が身をひそめるところ」 吉田音 筑摩書房

この本、クラフトエヴィング商会プレゼンツということで、クラフトエヴィング商会の2人の娘の吉田音さんが書いたという本です。作者が本当に娘なのかどうかというところまで全部含めて「商会プレゼンツ」ということなんでしょうけど。今まで読んだクラフトエヴィング関係で一番好きな本です。ストーリーは著者でもある吉田音さんが近所に住む学者さんとともにシンクと名づけたクロネコがどこからか拾ってくる物(ボタンとかプリズムとか映画のチラシとか)から、その猫がどこに行ってきたのかを推理するという内容です。決して謎を解かない探偵局という設定が良い感じです。で、その探偵ごっこと平行して、猫の拾ってきた品物にまつわるショートストーリーが挿入されるという構成。「猫とホルンとビスケット」っていうサブタイトルが粋な感じです。

探偵ごっこをするんですけど、「決して謎を解かない」というだけあって全然ミステリー小説ではありません。もはやジャンル分けできない本です。途中にあるショートストーリーの「奏者」という話が僕のツボを刺激しまくりでした。短編としては、池澤夏樹の「スティルライフ」の中の「ヤーチャイカ」以来の興奮でした。ハンガリーとか「すべて見せます」とか面白すぎ!!!この短編だけでこの本買った価値は十分にありました。こういうのがあるから本を読むのは辞められません。あと、作中にちらほら見え隠れする他の商会の本と関係する話も良い感じ。彼らはどこまで僕のツボを刺激すれば気が済むのでしょうか。それは置いておいても、本自体はかなり癒し系要素も強くて、普通に面白いので是非読んでみてください。写真とかもきれいだし。

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2004年6月27日 (日)

「聖水」 青来有一

「聖水」 青来有一 文春文庫

2,3年前に芥川賞を受賞した表題作を含む短編集。これを読むと、「蹴りたい~」とか「ピアス」とかと同じ賞を受賞していることにちょっした驚きを覚えます。芥川って意外と幅の広い賞です。長崎を舞台にした作品が多くて、隠れキリシタンとかの伝統からくる異教徒の思想みたいなのがテーマに絡んでくる作品が2つ(賞をとってる2作品です)。やはり芥川賞の作品はテンポよく読ませるんだけど、個人的に好きだったのは「泥海の兄弟」という作品でした。でも、この作者の本はもう読まないかも。あまり好きなタイプじゃなかったです。

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2004年6月26日 (土)

映画「トキワ荘の青春」 

「トキワ荘の青春」 1996年 日本

昨日の深夜にテレビでやってたのを録画して視聴。本木雅弘主演の映画です。タイトルを見てどんな内容かすぐに分かる人もいるかと思いますが、昭和20年代に手塚治虫が暮らし、その後、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫などの超有名な漫画家さんたちが集ったトキワ荘というアパートがありまして、この映画はそこに暮らした寺田ヒロオという漫画家を主人公にした作品。藤子不二雄の「まんが道」という超名作漫画がありまして、トキワ荘のことはそこでかなり詳しく描かれているんですけど、この映画の主人公のテラさんも「まんが道」の主要キャラなので当然知っていました。そういうわけで「まんが道」外伝みたいな感じで作品を見ることができたので最後までみられたんですけど、普通に映画として面白かと言われればかなり退屈な部類かと思います。映像とか音楽とかが静かで綺麗なんですけど、終始そういう感じで、各エピソードも部分的にしか描かれないし、登場人物も印象的じゃないし、もともとのネタを知らなければ全然ついていけない作品だよなぁというのが感想。

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映画「小さな中国のお針子」

「小さな中国のお針子」 2002年 フランス

この映画、舞台が中国だし、出てる人も皆中国人なんですけど、フランス映画なんです。原作兼監督の人が在仏中国人の人なんですね。

物語は、文化革命の中国を舞台に、当時行われてた政策で、都会の青年達を田舎の農村にプチ留学させることでその精神を叩き直すみたいなのがあって、それによって山奥の村に送り込まれた2人の青年のお話。2人の青年と村の仕立て屋さんの孫娘の美しい少女との友情と恋愛を描いています。

彼らは「再教育」というそのプログラムで村に来てる割にはブルジョアライフからの脱却は全く出来ない状態でして、むしろ村人たちに悪影響をもたらしているとしか思えないような様子がなかなか笑えます。

そして、同じように村に再教育に来ていた青年が隠し持っていた西欧の小説(フランス小説がメイン)を読み聞かせてあげることによって彼らが少女と交流していくんですけど、まさに「1冊の本が人生を変えることもある」がこの映画の最大のテーマですね。ラストでは衝撃の展開が待っていてとてもよくできたお話でした。

少女の言う一言がカッコイイ!!!

あと、映像がとにかく綺麗なのが印象的。その辺はやっぱりフランス映画なんですよね。ちょっと美しいラブシーンからもフランスの香を感じたし。原題と邦題にちょっとした違いがあるんですけど、この映画の場合、この邦題のほうがネタバレ度が低くて良いかと思いました。

<追記>

原作読みました。 レビュー

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2004年6月23日 (水)

「シーラという子」 トリイ・ヘイデン

「シーラという子」 トリイ・ヘイデン ハヤカワ文庫

僕が高校のときに出た本で、ずーっと読みたいなぁと思ってた本です。数年前に同じ出版社のダニエル・キイスがまとめて文庫になったので、ヘイデンも同じようにして文庫化されるに違いないと思いクビを長くして待った甲斐があります。著者は学校の教員で通常の養護学級に入れないような子供達のクラスを受け持っている人で、この本は彼女の経験を綴ったノンフィクションです。彼女のクラスに、3歳の子を焼殺させようとしたという事件を起こした6歳の少女が精神病院の空きができるまでの期限付き入ってきます。少女は決してしゃべらず、何があっても泣かないという状態だったのですが、著者は必死になって彼女の心を開こうとして、やがて、彼女が虐待を受けた超貧困家庭の子でありながらIQ180以上の天才であることを発見します。

話は少女と著者との交流を描いているんですけど、この少女がとにかくとんでもない子でして、ちょっとしたホラー小説なんか目じゃないような事件まで起こしてしまいます。もともと事件を起こした子供ということなんですけど、この本を読んでいる間、最近起きている思春期の子供達による事件が頭をよぎりました。この本では、著者が少女にある種の色眼鏡を持ってみてしまっているのは否めません。どんなに彼女が本当は良い子でただ愛を知らなかっただけだという感動的な話があっても彼女が事件を起こしてしまったのは事実ですし。しかし、事件が起こると常に被害者の立場から事件が語られるのも事実です。加害者の側が何故その行為に至ったのかということを冷静な視点で見ることも大切だと思います。それが子供ならなおさらですし。この本でも少女自身がある種の被害者であったことが事実ですし、社会制度のあり方にまで問題は発展するかもしれません。よく分からないですけど、色々なことを考えさせられる1冊でした。純粋に感動できる本でもありますし、読んで損することはないと思います。

特に印象的だったのは、少女が「星の王子さま」に執着するという点ですかね。あまりにも出来すぎっていう気もしましたけど・・・。この本、続編あるんですよね。ちょっと時間を空けて読んでみようかと思います。

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2004年6月22日 (火)

映画「ビッグ・フィッシュ」 

「ビッグ・フィッシュ」 2003年 アメリカ

これはどうしても見たい映画で、大きな映画館では今週で公開が終わってしまうということで、慌ててみてきました。率直な感想は「超いい映画じゃん!!」というところでしょうか。主人公の父親はいつも「ホラ話」で自分がこれまで体験してきた様々な大冒険を皆に語って聞かせていて、皆の人気者だったのですが、主人公は、父親からその本当の人生の話を聞いたことが1度もなく、いつしかそんな父親に対して嫌悪感を抱くようにもなる。映画は、父親が体調を崩し、数年ぶりに見舞いに行く主人公がそれまで聞いた様々な逸話を回想していくというもの。全体には「フォレスト・ガンプ」×「バロン」っていう感じですかね。意外と感動の押し売りじゃなかったのが好印象でした。

監督がティム・バートンということで、「絶対見に行きたい!!」と思ったんですけど、一面の水仙畑やら、サーカスやら、桃源郷やら、魔女やら巨人やらシャム双生児やらとにかくファンタジーの要素がたっぷりと詰まった作品でした。さらに、バートン特有の毒っ気がほとんど感じられない作品(暗には色々ありそうですが)で、純粋に優しさに満ち溢れた作品でした。かなり好きな映画です。バートン作品としては「ナイトメア~」「シザー~」と並ぶ傑作でしょうね。これを見ると、「A.I」をバートンが作ってくれればよかったのになぁとかちょっと思ってしまいました。ヘレナ・ボナム・カーターが出てたんですけど、かなり老けましたね~。ユアン・マクレガーも老いを感じます。あと、みんなアメリカ人っていう設定なのに、ユアンとヘレナの会話はやっぱりイギリス英語っぽいんですよね・・・。

映画館ってそこにいる客の雰囲気で観てるときの印象が左右されることがありますよね。例えば、高校のときに、「ビーン」の映画を見に行ったときには、かなり笑う集団がいたおかげで、会場が一体となって笑う雰囲気になってかなり堪能できました。で、今日なんですけど、映画館中が「泣き」の空気に包まれてまして、横のほうにいる中年男性が目頭をおさえたかと思えば、後ろからは絶え間ないすすり泣きが聞こえ、映画終了後も席から立ち上がる人が少なく、どの人もハンカチ片手という異様な光景でした。僕も最初は2時間越えるのはちょっとつらいかなとも思ったんですけど、ラスト30分くらいは感動で一気に時間が過ぎましたねー。実は原作本(原書)も買ってあるので、今度読んでみようと思います。

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2004年6月21日 (月)

「聖の青春」 大崎善生

「聖の青春」 大崎善生 講談社文庫

珍しくノンフィクションです。29歳の若さで急逝した棋士の生涯を描いています。幼少の頃から腎臓を患っていて入退院を繰り返していたという村山聖は、病室で将棋と出会い、そこで過ごす時間を詰め将棋に没頭することで過ごし、やがて、プロを目指して弟子入り、順調に段を重ねて、名人が目前に迫ったところでなくなってしまう。生きることの全てが将棋であり、名人になるために短い命の灯火を必死になって燃やした1人の青年の姿は純粋に心打たれるものがあります。あまり馴染みのない将棋の世界の奥深さも興味深く(村山氏と同世代の羽生さんは知ってましたけど、村山氏のことはこれで初めて知ったし)、スラスラと読み進んでしまいました。村山氏とその師匠の森氏との関係は、単なる師弟関係を越えた信頼関係が感じられるし、時折触れられる村山氏の両親や兄弟のエピソードには家族ならではの無償の愛を感じることでき、全体を通して、「愛」を感じることの出来る1冊でした。もう少し感動系なのかと思っていたんですけど、淡々と冷静に語る口調なので、以外とあっさりした読後感でした。

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2004年6月19日 (土)

映画「モンスーン・ウェディング」 

「モンスーン・ウェディング」 2001年 インド

ヴェネチアで金獅子賞をとったインドの女流監督による作品です。上級中産階級のお嬢さんが結婚することになって、その5日間のできごとを描いた映画なんですけど、伝統的な結婚式を舞台に、21世紀の新しい世代に生きる若者たちの姿も描かれていて、「今のインド」を描いている作品だと思いました。主人公は結婚の直前だというのに元恋人と合ってるし、弟は料理とダンスに夢中、ウェディング・プランナーと使用人の恋や従兄弟たちの恋模様も描かれて、盛りだくさんの内容です。そして、最後のほうでは、主人公よりも従兄弟にスポットがあてられて、衝撃の展開が待っています。ちょっと泣けたし。

インドの結婚式は「ベッカムに恋して」でも描かれていましたけど、こちらの映画は結婚式そのものがテーマなので、文化的な面を見ることが出来るだけでとても興味深いのですが、ストーリーも現代のインドの様々な側面を表していて、かなり楽しめました。名画の1つといって過言ではないでしょう。

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映画「モンスーン・ウェディング」 

「モンスーン・ウェディング」 2001年 インド

ヴェネチアで金獅子賞をとったインドの女流監督による作品です。上級中産階級のお嬢さんが結婚することになって、その5日間のできごとを描いた映画なんですけど、伝統的な結婚式を舞台に、21世紀の新しい世代に生きる若者たちの姿も描かれていて、「今のインド」を描いている作品だと思いました。主人公は結婚の直前だというのに元恋人と合ってるし、弟は料理とダンスに夢中、ウェディング・プランナーと使用人の恋や従兄弟たちの恋模様も描かれて、盛りだくさんの内容です。そして、最後のほうでは、主人公よりも従兄弟にスポットがあてられて、衝撃の展開が待っています。ちょっと泣けたし。

インドの結婚式は「ベッカムに恋して」でも描かれていましたけど、こちらの映画は結婚式そのものがテーマなので、文化的な面を見ることが出来るだけでとても興味深いのですが、ストーリーも現代のインドの様々な側面を表していて、かなり楽しめました。名画の1つといって過言ではないでしょう。

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2004年6月16日 (水)

「アラート・ボックス」 トルネード竜巻

「アラート・ボックス」 トルネード竜巻

インディーズで出た2枚のミニアルバムがかなりお気に入りのバンドのファーストアルバムです。どんな音楽なのかというと、ボーカルは結構高めの声の女性で淡々と歌う感じ、そのバックのサウンドがノイズのような感じだったりしてデコボコした感じかつ転調を繰り返したりするというもの。とにかくデコボコした音楽(これが一番合う形容詞だと思う。聞けばわかります)で、最初に聞くと「えっ?」と眉をひそめる感じでもありますが、聞いているうちにそれが心地よくなるという不思議な音楽です。明らかに癒し系だと思う。もともとがジャズ研だったとかなので、そういう要素もあります。インディーズの2枚目のアルバムの出来がかなり素晴らしくて聞き込んでいますが、今回のメジャーのアルバムはさらにとっつきにくい印象のあるサウンドになっているように思いましたが、しっかりとポップスな部分もあって、期待を裏切らないできでした。かなりユニークで「新しい」バンドであることは確かなので、是非聞いてみてください。

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2004年6月 9日 (水)

映画「パンチドランク・ラブ」 

「パンチドランク・ラブ」 2002年アメリカ

カンヌで監督賞を受賞した一風変わった恋愛映画。とにかくシュールな作品で、映像と音楽が凝りまくっています。全体の雰囲気はフランス映画っぽかったです。倉庫でトイレの吸引の棒を作って販売している主人公は精神が不安定ですぐに怒ったり泣いたり。そんな彼は最近、食品会社と航空会社の合同企画で商品を買うとマイレージがたまるというものの穴を発見し、大量のプリンを購入して一生分のマイレージを貯めてしまおうとしていた。ある日彼はふと風俗系の電話サービスを利用し、その後、その相手から脅迫まがいの電話攻撃を受け始める。そんな折に1人の女性と出会って、少しずつ変化していくというストーリー。

ストーリーは結局最後まで見てもよく分からない感じ(分かるんだけど、なんかぱっとしない)で、ノイズのようなかなり個性的なBGM(主人公の心理状態を示している)がまた、不思議な感覚を呼びます。全体にはこの作品の空気があまり得意でないので可もなく不可もなくです。

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2004年6月 8日 (火)

「オーデュボーンの祈り」 伊坂幸太郎

「オーデュボーンの祈り」 伊坂幸太郎 新潮文庫

なんとなく手にとってみて買いました。なかなか面白くて他の作品も読みたくなるような作家です。ストーリーはSEの仕事を辞めて、ふとコンビニ強盗をしてしまった主人公が警察から逃亡する途中に何者かによって見知らぬ島に連れ去られるという内容。その島は江戸が開国したのと同時に外界との接触を絶っていて(主人公を島に連れて行った男のみが外界と接触している)、150年間で島の外から人が来たのは2人だけという状態(主人公ともう1人は2週間前に来た怪しげな男)。で、島には未来を予見して言葉を話せるカカシがいて、島中の人が彼に頼っていたり、太りすぎて動けなくなった妻と彼女の身辺を世話する夫、地面に耳をつけて自分の心臓の音を聞く少女、嘘しか言わない画家、悪人を勝手に射殺しまくる詩集を読みふける美青年など個性豊か、シュールな人々が多数暮らしている。そんな島である日、殺カカシ事件が起こり、物語はその謎解きと、主人公を追う悪意の塊である警官の物語とが平衡して描かれる。

徹底して独創的な世界観が描かれていて、ファンタジーな要素も近いんですけど、形式はミステリーです。作中でミステリーにおける名探偵はそれ自身が事件を引き起こす存在みたいなことが描かれているのですが、島において全てを見通していたカカシ(名探偵的な役割)が殺されることで、こうしたミステリーの定石を自ら崩している点が面白いです。また、小さなエピソードが思いもかけずに1つの点に収縮していくストーリー運びもかなり良い感じでした。一部不快な描写もありましたけど、「悪」を強調したかったのでしょう。

色々と文学的な分析もできそうな作品なんですけど、欠点は文体がちょっと読みづらい感じ(自分には)なところです。星新一みたいにやたらと簡潔な文体(しかもすわりが悪い印象)で長編なので慣れるまでちょっと大変でした。でもストーリーが良く出来ているので、最後まで楽しめましたけど。最後のオチはちょっと・・・なところもありましたが、他の作品も読んでみたいと思う作家であることは間違いないです。70年代生まれで初の直木賞候補になった作家さんですよね。それも納得。

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2004年6月 3日 (木)

映画「永遠のマリアカラス」 

「永遠のマリアカラス」 2002年 伊・英・仏・西

かの有名なソプラノ歌手マリア・カラスの晩年を「ロミオとジュリエット」の巨匠ゼッフィレリ監督が描いた映画。かつては名プリマドンナとして世の名声をほしいままにしていたマリア・カラスだが、加齢によって以前のような美声を失ってしまい、ひっそりと(しかしゴージャスに)過ごしているところに、プロデューサーが、今の彼女が演技する映像に絶頂期の古い音源を吹き替えて「カルメン」の映画を製作しないかという話を持ってくる。

自分が歌っている人なので、絶頂期の二度とは戻らない歌声から離れられないカラスの心境は本当によく分かります。映画の中で、彼女がかつての自分の歌のレコードを聴きながら必死で歌う場面があるのですが、本当に胸に迫ってくるものがありました。一度、絶頂を迎えてしまった人がその後の人生をどう生きていくかというのは、どういう心境なんでしょうかね。高校時代にとある友人が「今が絶頂期なんてことにならないといいけどね。」みたいなことを言ってたのですが、明らかに今の自分がかつてよりも衰えていると実感するのは相当苦しいと思います。自分も声変わりをしてから、かつてのような美しい高音が出なくなってしまって相当ショックだったし。今でもテナーですけど、当時は、ピアノに合わせて音程を上げていくと、ピアノの最高音を越えるところまで声が出たんですよー。絶叫すると本当に「キーン」とした音だったし。

ところで、この映画、劇中劇として出てくる「カルメン」の映画がとてつもなく素晴らしい!ゼッフィレリ監督にこの「カルメン」の完全版を是非作っていただきたいです。DVD即買い間違いなしです。このわずかな劇中映画を見るだけでも価値のある作品だと思いますし。80歳を越えて尚このクオリティで作品を撮りつづける監督さんはどういう思いで、カラスの生涯を見つめたのでしょう・・・。

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