「THINK シンク 夜に猫が身をひそめるところ」 吉田音
「THINK シンク 夜に猫が身をひそめるところ」 吉田音 筑摩書房
この本、クラフトエヴィング商会プレゼンツということで、クラフトエヴィング商会の2人の娘の吉田音さんが書いたという本です。作者が本当に娘なのかどうかというところまで全部含めて「商会プレゼンツ」ということなんでしょうけど。今まで読んだクラフトエヴィング関係で一番好きな本です。ストーリーは著者でもある吉田音さんが近所に住む学者さんとともにシンクと名づけたクロネコがどこからか拾ってくる物(ボタンとかプリズムとか映画のチラシとか)から、その猫がどこに行ってきたのかを推理するという内容です。決して謎を解かない探偵局という設定が良い感じです。で、その探偵ごっこと平行して、猫の拾ってきた品物にまつわるショートストーリーが挿入されるという構成。「猫とホルンとビスケット」っていうサブタイトルが粋な感じです。
探偵ごっこをするんですけど、「決して謎を解かない」というだけあって全然ミステリー小説ではありません。もはやジャンル分けできない本です。途中にあるショートストーリーの「奏者」という話が僕のツボを刺激しまくりでした。短編としては、池澤夏樹の「スティルライフ」の中の「ヤーチャイカ」以来の興奮でした。ハンガリーとか「すべて見せます」とか面白すぎ!!!この短編だけでこの本買った価値は十分にありました。こういうのがあるから本を読むのは辞められません。あと、作中にちらほら見え隠れする他の商会の本と関係する話も良い感じ。彼らはどこまで僕のツボを刺激すれば気が済むのでしょうか。それは置いておいても、本自体はかなり癒し系要素も強くて、普通に面白いので是非読んでみてください。写真とかもきれいだし。
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