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2004年7月

2004年7月28日 (水)

「まだらの紐 ドイル作品集1」 コナン・ドイル

「まだらの紐 ドイル作品集1」 コナン・ドイル 創元推理文庫

「ホームズ」シリーズ以外のコナン・ドイルの短編著作を集めたシリーズが配本開始しました。似たようなのが新潮文庫からも出てて読みたかったんですけど、古い装丁でちょっと読みにくかったので、今回の新訳&作品数の多いシリーズはなかなか嬉しいもの。

この「作品集1」は所謂「聖典」などと呼ばれてるホームズもの60作品以外にドイルが書いたホームズ関連の作品が収録されています。メインは150ページくらいある「まだらの紐」戯曲版。ドイルが戯曲を書いてたということすら知りませんでしたよ。この戯曲版、原作のスタートする場面よりも前の昔に起きた事件なんかがかなり詳細に描かれていたり、戯曲ということで会話メインなので登場人物の感情なんかがよりダイレクトに感じられる内容。100年位前の舞台初演時の写真もふんだんに掲載されてたのには驚きました。よく考えたらドイルは20世紀初頭にも活躍してたので写真があっても不思議ではないんですけどね。「まだらの紐」は結構好きな話なだけに、なかなか楽しめました。さらに、この本にはワトソン君がホームズに対抗しようとして挫折する4ページくらいの短編とかも入ってて飽きさせません。そして、本邦初訳という、ドイルの残した未発表ホームズ作品のプロットと、ドイルへのインタビューまで載ってて、かつてシャーロキアンだったものとしてはかなり嬉しい内容でした。

ドイルは「ホームズ」と「ロスト・ワールド」しか読んだことないんですけど、他の作品も読みたいなぁとずっと思ってたのでこのシリーズには今後も期待大です。

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2004年7月26日 (月)

映画「ムッシュ・カステラの恋」

「ムッシュ・カステラの恋」 1999年 フランス

フランスの大人の恋物語。工場を経営するカステラ氏は契約のために英語を勉強するように言われるものの、全くその気は無くてやってきた英語教師をすぐに追い返してしまう。その晩、妻と一緒に、彼の姪が出演する劇を見に行ったカステラ氏はその舞台上に、かの英語教師を発見、演技をする彼女を見て一目ぼれししてしまう。というストーリー。教養の無い中年カステラ氏が女優をしている英語教師の芸術家仲間たちの仲間になろうと必死になったり、彼女に好かれるように一生懸命な姿が描かれます。そして、この映画、カステラ氏とは別に、彼のボディーガードと運転手の恋模様なども描く群像劇のスタイルをとっています。不器用な中年男女たちが懸命に自分の恋を模索する姿が描かれた映画。いかにもフランス映画という雰囲気のまったり感と適度な笑い、曖昧なすわりの悪いラストが印象的。自分としてはイプセンのエピソードがかなり笑えて面白かったです。性格悪いですね。

映画のテーマは「変わること&変わらないこと」、「表面と本質」ということでしょうか。細かい脇役も含めて、それぞれのキャラが必死に「自分」を模索している様に感じました。この映画でのキーパーソンは英語教師の友人であり、ボディガードや運転手と関係するバーで働く女性。彼女は聖女のような感じで登場人物たちの懐に入り込んでいましたね。あと、カステラ氏の奥さんが自分の趣味をおしつける女性としてあまり良い描かれ方をされていないんですいけど、個人的には彼女を応援してあげたかったですね。彼女の趣味、僕は嫌いじゃないし。大きな事件があるわけじゃなくて、淡々と小さなエピソードの積み重ねでストーリーが続くだけなんですけど、クスリと笑いがこぼれたり、ホロリといい気分になったりとなかなかオシャレな大人の映画でした。でも、気分が盛り上がってきたところでラストになってしまうので、ちょっと腑に落ちない感覚が残ります。

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2004年7月22日 (木)

「しゃべれども しゃべれども」 佐藤多佳子

「しゃべれども しゃべれども」 佐藤多佳子 新潮文庫

ストーリーは、若い落語家が主人公。上手く客を笑わせられなくて伸び悩んでる主人公がひょんなことから近所の人を集めて落語教室を開くことになるというお話。生徒達も色々と癖があって、あがり症で吃音になってしまうテニスコーチをしている従兄弟、人間不信の口下手OL、クラスになじめない関西からの転校生の小学生、いつもは毒舌なのに解説になると何もいえない元プロ野球選手という4人。主人公を含めて自分を上手く表現できない5人が成長していく物語なんですけど、テンポもいいし、ストーリーもよくできてるし、かなり面白い1冊でした。すごく読みやすい上に、内容もそんなに軽すぎるわけじゃないし、かと言って重過ぎないのがいい感じ。これは良質の児童文学と同じ特徴ですよね。ラストも問題が解決して一件落着っていう感じでもなくて、問題は解決しないけどどこかが変わったみたいな運びが好きでした。読後感もすがすがしくて良い読書でした。NHKとかでドラマ化したらかなり面白いんじゃないかと思いました。

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2004年7月20日 (火)

映画「ラブ・アクチュアリー」

「ラブ・アクチュアリー」 2003年 イギリス=アメリカ

2月くらいに映画館でやってた作品。かなり見たかった映画なんですけど、予想通りすっかりはまってしまいました。イギリス映画万歳!て感じです。19人の登場人物全員が主人公で、親友の妻に恋した男の話、作家と外国人家政婦の言葉は通じないが・・・という2人の話、秘書が気になる首相の話、母を亡くし義父と暮らす同級生に片思いの少年の話、夫の不倫をうすうす感じる妻の話、病気の弟を看病するOLの恋の話、落ちぶれロックスターの話などがロンドンを舞台にして同時進行に描かれます。かなり複雑に入組んでるストーリーだし、登場人物たちも皆どこかでつながっていて複雑に絡み合ってるんですけど、脚本が良くできていて混乱することなく楽しめる仕上がり。2時間半くらいあって長い映画なんですけど、個人的にはDVDに収録されてたカットしたシーンも全部入れて3時間くらいの映画でもきっと最後まで楽しめただろうなと思いました。

なんと言っても出てる役者さんが豪華!イギリス映画ファンにはたまらない顔ぶればかり。エマ・トンプソンとかコリン・ファースとかリーアム・ニーソンとかヒュー・グラントとか。最近人気のキーラ・アナトレイも出てましたね。中でも光っていたのは5分くらいの出演のローワン・アトキンソン(Mr.ビーンの人)。彼の出演シーンは面白すぎ。天才ですね。あと、エマ・トンプソンがかなりいい感じでした。

テーマはズバリ「愛」で、恋愛はもちろんのこと、家族愛から友情までを描いていて、ラストに出てくる、「ニュー・シネマパラダイス」ばりの映像はそれだけで幸せになれます。あと、反アメリカ的な姿勢がチラホラするのも面白いです。とりわけ気に入ったエピソードは作家と外国人家政婦のもの。言葉の通じ合わない二人が一緒にしゃべってるシーンはかなりほほえましかったです。音楽も良いし、好きな映画トップ10に食い込む勢いで気に入ってしまいました。

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2004年7月15日 (木)

「死んでいる」 ジム・クレイス

「死んでいる」 ジム・クレイス 白水Uブックス

今月の新刊です。そして久々に素晴らしい本と巡りあえたと感じさせる1冊でした。帯に川上弘美の紹介文が載ってるのも嬉しいところ。作者はイギリスの人でブッカー賞候補になるなどしてる人で、この作品は全米批評家協会賞を受賞しています。不思議なタイトルですけど、原題が「Being Dead」なのでそのまま直訳と言えるでしょう。

ストーリーは、動物学者の中年夫婦が浜辺で殺されるというもの。この事件を軸にして、事件当日の2人の様子、2人が出会った数十年前のできごと、2人の死体が腐敗していく様子、2人の娘(両親とは疎遠)が行方不明になった両親を探す様子という4つの物語が交錯して描かれます。作者は無神論者ということで、死によって天国に行くとか、安らぎを得るとかそういう概念を一切持たず、淡々と「死」というできごとを描きます。宗教を持たない場合に人は何に救いを求めるのかというのがテーマのようです。死体が腐敗していく様子の描写が妙にリアルなのもその現われだと思います。そして、物語は「死」と同じくらいに「生」(=「性」?)を描きます。宗教によらずして「死」の概念を捉えるとそこに行き着いてしまうということでしょうか。とにかく語り方とか構成とかが素晴らしくて、一見すると暗いテーマなんですけど、読後感はそんなに重くありません。むしろ、読み終わった後に、何かが心の中に残って、世界の見方がちょっと変わるような1冊かもしれません。

とにかく、かなりの傑作かと思われる1冊。思わず唸ってしまいましたね。世界文学は本当に奥が深いものです。

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2004年7月13日 (火)

「エイジ」 重松清

「エイジ」 重松清 朝日文庫

この本、先日、新潮文庫からも出たんですけど、天邪鬼な僕は古くから出ているほうを買って読みました。内容は全く同じで、今回、新潮から出たのは、作者がもう1つの代表作「ナイフ」と並べて書店において欲しいと希望したことによるみたいですね。

山本周五郎賞を受賞した作品である「エイジ」なんですが、ストーリーは、とあるニュータウンに住む14歳の中学生が主人公。膝を故障して部活を休部中、部活の仲間の親友とはちょっと疎遠になってたり、仲良し家族だったり、初恋したりとごく普通の中学生活を過ごしている。そんな彼の過ごす町で通り魔事件が頻発しているのだが、ある日、通り魔逮捕のニュースが飛び込んでくる。そして、それはクラスメートだった。というお話。98年に朝日新聞に連載された作品のようで、当時の世相がよく現われています。中学生の犯罪は明らかに97年の神戸の事件を連想させます。主人公は僕より3~4歳くらい下の世代ということになります。

少年犯罪は今でも新聞紙面でたびたび目にしますし、そういうことを扱った本も結構ありますけど、この本で描かれているのは、「クラスメートが凶悪事件を起こしたら?」ということです。自分は彼が事件を起こした理由など理解できないと言い切っていた主人公も、思春期特有の様々なことを経験するうちに、その価値観が揺らいでくる。そういう様子をかなりリアルに描いている作品でした。また主人公の周囲の友人たちや家族の描き方も秀逸。一番心に残ったのは自転車カバーのくだりですかね。重松作品は結構読んできましたが、かなり上位に食い込む作品だと思います。新聞連載とは思えない暗いテーマともいえるんですけど、読後の印象は極めて爽やか。著者の年齢的に極自然な会話調として出てくる中学生言葉「マジで」とかの用法が現役に近いものとしてはちょっと不自然な気がするところもありますけど、作品としては読んで損のない1冊だと思いますよ。

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2004年7月 9日 (金)

「Big Fish」 Daniel Wallece  

「Big Fish」 Daniel Wallece    Penguin U.S.A

先日見た映画の原作。邦訳は河出書房から出てるんですけど、邦訳ハードカバーよりも原書ペーパーバックの方が安かったので原書で読みました。英語も読みやすかったし。

映画をかなり気に入ったので本を読んだわけですけど、率直な感想は、「あの映画見て原作者は何も言わなかったわけ?」っていうところでしょうか。原作というよりかは題材をとっただけみたいな感じです。映画は完全にティム・バートンのオリジナルワールドが繰り広げられていたみたいですね。全然違うわけでもないんですけど、原作では映画で大半を占めていたファンタジー色がかなり薄くて、1つ1つの逸話がそこまで突拍子のない物語ではありません。さらに、映画では親子の物語が主軸になっていたんですけど、原作では、淡々と子供が父親の物語を綴っているだけで、子供がメインでどうこうという部分がほとんどありませんでした。

この淡々とした原作の空気は映画とはまた異なった感動をあたえる作品になっていました。原作は原作でかなり面白かったんですけど、映画とは別物としてとらえたほうがよさそうですね。ティム・バートンってすごいなぁというのを実感しました。

超ネタバレ企画!原作と映画はこんなに違うんだぞ!!(一応、原作の内容には触れないで、映画のこのシーンが原作には登場しないぞ!ということを書いています。読みたい人はドラッグして反転させてね。)

そもそも原作では父親は主人公が生まれた日に釣りをしていません。さらに主人公は結婚してるかどうかも定かではないです。父親が仕事でいつも家にいなかったから疎遠だったとかいうのは一緒ですけど、父親は「ほら」というよりかは「ジョークの好きなおじさん」という雰囲気。

ここからはさらに驚くべき違いを。原作では大男は出てきますが、一緒に町を出ないし、桃源郷みたいな町は出てこないし、サーカスは出てこないし、プロポーズで花畑作らないし、喧嘩の相手は幼馴染じゃないし、戦争は海兵隊でアジアにはいかないし、シャム双生児は名古屋の芸者だし、銀行強盗もしないし、手のセールスマンじゃないし、買収する町は別にかつて訪ねた町じゃないのです。

これを読むと原作の大半が原作オリジナルのエピソードだということが分かると思います。映画と共通するエピソードもかなり大胆な並べ替えがなされていますし。ということなので、原作もオススメですよー♪

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2004年7月 8日 (木)

映画「フリーダ」 

「フリーダ」 2002年 アメリカ

メキシコの女流画家の生涯を描いた作品。監督が「ライオンキング」のミュージカルを手がけて、映画「タイタス」を作ったジュリー・テイモアということで、斬新な映像表現、色彩の美しさなどは目を見張るものがあります。こういう題材の映画でアニメを入れたりするのも彼女ならではの演出でしょうね。もともと絵画がテーマなだけにメキシコの原色を駆使した風景とかかなり良い感じでした。ストーリーはバスの事故で脊髄を損傷して一生病と闘うことになった女性が、そんな苦境とはうらはらに、情熱的に生き、有名画家と結婚、互いに浮気を繰り返すかなり派手な性生活もありそんな自らの心の苦悩を全て絵画にぶつける姿が描かれています。こういう伝記映画って見る前は退屈かもと思うんですけど、現実は小説よりも奇なりとはよく言ったもので、1人の人の人生ってすごいドラマがあるんだなぁと感じます。映画を見ると実際の彼女の絵が見たくなるのが人間というもの。去年の今頃、映画の公開にあわせてブンカムラでやってたんですよねー。見に行けばよかった・・・。絵のタッチはそんなに好きな感じじゃないけど。

あと、この映画、脇役が超豪華。数分だけの出演でアントニオ・バンデラスとかエドワード・ノートンとか。エドワード・ノートンは「デス・トゥ・スムーチー」以来、すっかり見方が変わってしまって、彼が出てくると、気ぐるみを着てギター片手に歌ってる図ばかりが頭をちらつくようになってしまいました・・・。

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2004年7月 3日 (土)

「青いバラ」 最相葉月 

「青いバラ」 最相葉月 新潮文庫

作者はベストセラー「絶対音感」を書いた人です。徹底した調査に基づいて、バラ(とりわけ青の)が説話や小説の題材としていかに扱われてきたか、品種改良の歴史、日本におけるバラ園芸の歴史などをかなり詳細に書いています。タイトルは「青いバラ」ですけど、半分くらいはバラ一般のことを書いているといってもいいでしょう。バラのこととか全然知らなかったので、「へぇ」の連続でした。また、「青いバラ」が英語で「不可能」を意味するようになるにはそれだけ多くの人が挑戦し続けてきたという背景があるわけで、そういうドラマを割りと淡々と冷静に見つめている点が面白いと思いました。こういう本っていくらでもドラマチックにかけますからね。

本の中にうちの近所にあるバラ園が登場するんですけど、このバラ園、かなり権威があるというか、日本でも屈指のバラ園だったようで、「青いバラ」は作るのが困難だとかそんな話よりも、地元のバラ園の偉大さを知ったことのほうがインパクトがありました。今度行ってみようかな。ちなみにこの本、見てみたら装丁がクラフト・エヴィング商会でした。いろいろな仕事してるんですねー。

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