「香水 ある人殺しの物語」 パトリック・ジュースキン
「香水 ある人殺しの物語」 パトリック・ジュースキン 文春文庫
ドイツ人の作者による18世紀フランスを舞台にした小説。とにかく奇想天外なお話です。主人公は、生まれつき、絶対音感ならぬ、絶対嗅覚のようなものを持っていて、視覚などではなく、嗅覚を用いて世界の全てを知覚している(別に目が見えないわけではないのだが)という設定。貧しい生まれで、様々なところを点々とする人生だったのだが、あるとき彼は香水の調合に出会い、その世界にはまり込む。彼の超人的な嗅覚は、臭いを嗅いだだけで、その成分を分解することも可能で、やがて彼はどんな香りの香水でも作れるようになっていく。彼は自らの体臭が全く無いのを利用し、「体臭」を人工的に作ることさえしてしまうのだが、彼の香水作りの究極の目的は、自らを恍惚とさせる香りを作り出すこと。そして彼は処女の体臭に我を忘れるような感覚を覚え・・・。というお話。
主人公は犯罪者なんですけど、ただひたすら「臭い」をだけを追い求める彼の人生は、「社会性」などというものを学ぶに到底及ばない生い立ちもあり、純粋に臭いの追求し、その結果として犯罪が起こるわけです。とても孤独な主人公のお話。そして想像を絶する衝撃のラスト!!ドイツの人の小説って割りと理性的な文章なのに、想像力ははてしないものがあるように思います。独特(まさにドイツ特有)の世界観を作ってますよね。
「臭い」というターゲットが目新しいのでそれだけでも楽しめるんですけど、各所に散らばっている香水作りの薀蓄がなかなか面白い1冊でもあります。ストーリーとかもかなり面白いし、何より、サイドノキャラクター1人1人に物語を与えているし、18世紀ヨーロッパの世界観も好きなんですけど、個人的には翻訳があまり好きじゃなかったのでそこだけが欠点でした。それを上回る面白さがあったので最後まで読めましたけど。
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