「ぶらんこ乗り」 いしいしんじ
「ぶらんこ乗り」 いしいしんじ 新潮文庫
先月の新刊。もともとは児童文学のカテゴリだと思われる作品ですけど、内容はかなり大人向けというか、子供には理解が難しいと思われます。現在は高校生である私が、今亡き弟のことを回想するという形式を取ってます。で、天才的な弟(飛び級とかするし)はいつもノートにお話を作っては姉に見せていたのだが、ある日、彼は事故で声を失ってしまう。そして、その代わりに動物の話を聞くことができるようになり、ノートに動物達からきいた話を必死に書きとめていく。そんな姉と弟の下にある日、両親の飛行機事故の知らせが入り・・・。というお話。なんだかこれだけ書くとかなり悲しいですけど、お話は前半は姉と弟のほのぼの交遊録みたいな色彩が強いし、本の大半は弟の創作する物語で構成されています。
弟の書く話は天才という設定の割りに、幼い子が書くということで全部ひらがな。多少読みにくいんですけど、この中にいくつか良いお話がちりばめられています。とりわけサーカスの空中ブランコをする夫婦を描いた小話が珠玉のできて、その部分を読み終わったあとには数ページながらも、大長編に勝ると劣らない感動を覚えました。しかーし、恐らく、作者もこの小話のできのよさに気をよくしたのでしょう、物語中、何度も引用として出てくるんですよ。これはさすがにクドイ。しかも文庫の帯もここの引用。そんな点がかなり残念でした。
あとは、高校生という「私」の書いている文があまりにも幼い。児童文学ということで言葉を選んで書いているからなのかもしれないけど、ちょっと気になる。お話としては本当に素敵という形容詞が良く似合う内容だし、後半部は感動も呼ぶし、なにより、空中ブランコの部部だけで十分元は取れる本ではありますが、ところどころ気になってしまったのでした。
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コメント
ANDREさん、こんにちは。またまたお邪魔します。
こちらに感想を書かれているのに、違うところで喋っててごめんなさい。
TBもいただきありがとうございます。
仰るように、最初は「私」の口調が幼くて、この流れに乗れるのか?と
かなり心配したのですが、予想に反してあっと言う間に引き込まれ、
すっかりお気に入りになっていました。
たぶんそれは、弟のお話の雰囲気が気に入ったからなんでしょうけれど。
以前はどんな長編でも読んでいたのに、映画とブログに時間を使うせいで、
なかなか読書に時間が廻せないのが辛いところ。いつか逆転できればいいのですが。
そう、わたしも『オーデュボンの祈り』だけは読んだのです。
娘は伊坂作品を多分全部読んでいて、やはりこれが一番好きなようです。
何冊か貸してくれたのに、読まないまま返却、自分の下宿へ持って行ってしまいました^^;
投稿: 悠雅 | 2006年11月23日 (木) 09時18分
コメントどうもありがとうございます。
別にどこで語っていただいても構いませんので
あまり気になさらないで下さい。
自分も読書に時間を回すと映画がなかなか見れず、
このブログも映画の感想が続くときは読書の感想が減って
逆に読書が続くと映画が減ってしまうという傾向があります。
1日がもっともっと長いといいんですけどね。
伊坂幸太郎の作品もどれも魅力的なものばかりなので
機会があれば是非お読みなることをオススメします。
投稿: ANDRE | 2006年11月24日 (金) 01時36分