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2004年9月

2004年9月30日 (木)

「PLUTO 1」 浦沢直樹×手塚治虫

「PLUTO 1」 小学館 浦沢直樹×手塚治虫

手塚治虫のアトムの中の「史上最大のロボット」という作品を手塚プロの完全バックアップで浦沢直樹がリメイク。映画や音楽のリメイクはよくありますけど、コミック、しかも手塚作品を有名な漫画家が完全リメイクていうのはかなり珍しいですよね。かねてから浦沢氏の長編は手塚作品に匹敵するくらいのクオリティがあると思っていたので、この企画は両氏のファンとしては本当に嬉しいっす。

で、内容ですけど、原作のお話は、とある学者が自分の作ったロボットが最強であることを示そうと世界中の強いロボットを破壊して、やがてロボット同士が戦うことになるというもの。自分の権力を示すためにロボット同士を戦わせるような状況を作った人間の愚かさを問う作品です。これは手塚氏自身もかなりの力作で思い入れがあったそうなんですけど、そんな作品を、もともとの主役であるアトムではなく、一脇役だったドイツのロボット警官を主役にして描くのが今回の作品。なにやら、原作とセットになった豪華版も発売してたんですけど、既に中学のときに原作のアトムを買っている自分は、通常版を購入。ゆっくりと見比べてみました。

ストーリーはかなり原作に忠実。でも、原作のコマとコマの合間を描いているという印象です。原作にあるシーンがそのまま出る部分はほとんどなくて、原作で描かれたコマの前後の部分をつないでいってます。原作はロボット同士のバトルが中心ですからね。こちらはその背後にある人間ドラマを描くみたいな。相変わらず泣かせどころを作るのが上手い。そして、単行本の切れ目が上手い。次を買わせたくなるような作風。ドイツを中心にしたのは「MONSTER」の影響ですかね。かなり面白いですね。ロボットが普通の人間っぽいのはちょっと残念ですけど(でも火の鳥デザインの家庭用ロボが出たのは嬉しい!)。映画化してもいいかもね。でも、このペースだと、原作どおりにいくと、次の巻のかなり冒頭で主人公はいなくなるのでは・・・。どうするの?ていうか、浦沢氏の伏線を大量にばら撒く作品作り、「20世紀~」との2本立ては正直つらいでのは?どうなの?このコミック、カバーをはずすとアメコミ調になってます。この部分、台詞全部英語だし。すでに海外進出を視野にいれてるのは間違いないですね。

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2004年9月28日 (火)

映画「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」 

「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」 1986年 アメリカ

いやぁ~、笑った笑った。無茶苦茶好きかも。ホラー・コメディ・ミュージカルというカテゴリになるんでしょうか。同タイトルの白黒B級映画を舞台でミュージカルにリメイクしたものを映画化した作品です。売れない花屋に勤めるさえない青年がふと手に入れた奇妙な植物。それが話題になりお店は大繁盛するが、実は、それが地球侵略を企む宇宙からきた人食い植物だったというもの。小さいときは主人公が自分の指先を突いてポタポタと血を与えていたのだが、やがて巨大化するにしたがって「にんげんがたべた~い」と歌い始めるんです。こう書くと普通にホラーですけど、全然怖くない映画。コメディのほうが強いですからね。中でも、サディストな性格を生かして歯医者になった男を演じるスティーブ・マーティンが最高です。そこに歯医者での痛みを求めてやってくるヤバい患者のビル・マーレーが来るんですけど、この2人のシーンだけでこの映画をみる価値はあるかと。しかもこのシーン、ほとんどアドリブらしい。流石です。

さらに驚きは人食い植物の動き。メイキングが収録されてたんですけど、CG全盛期前の作品なので全て手作業で実際に動かしてるんです。マリオの某フラワーと同じデザインの花なんですけど、巨大化した場面では50人のスタッフを使って動かしたというだけあって、かなりリアルな動きに驚きます。こういうのを見るとやっぱりCGよりも本物のほうが味があっていいなぁと思ってしまいます。質感が違いますよね。今の技術をつかってリメイクとかして欲しくない作品かもしれません。

さて、ミュージカルと書きましたが、この映画、半分くらいは歌です。そしてその作詞・作曲が後にディズニーで「リトル・マーメイド」、「美女と野獣」「アラジン」のスーパーヒット&連続オスカー獲得を生むアラン・メンケン×ハワード・アシュマンのコンビ。歌の場面が悪いはずがありません。もとが舞台だったことを意識して映画のほうもかなり舞台を意識した演出をしていて、音楽シーンをわざとミュージカルっぽさを強調して描いてます(映像特典のメイキングでそう言ってた)。ゴスペル調がメインでとにかくノリが良いので最後までいっきに楽しめてしまいます。今まで見てなかったのを後悔です。

オープニングの歌の場面。歌い手が次々と変わっていきながら物語の背景を説明しつつ、町中の人々がコーラスというパターンは「美女と野獣」と同じですねー。そして、中盤でヒロインが歌う曲、どう聴いても「リトル・マーメイド」のヒロインが歌う曲の原型です。メンケン&アシュマンのその後の活躍を予見させるような、楽曲がいつまでも耳に残る作品なのは、ディズニー音楽ファンとしては本当に嬉しいね。

追記(2006年)

DVDが680円の廉価版で登場です!この値段のラインナップに並ぶってことは、世間での評価がかなりB級だってことなんだろうなぁ。でも、これで何回も好きな場面を見られるってもんですよ!!

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2004年9月24日 (金)

映画「リトル・ヴォイス」 

年イギリス

かなり前にビデオに入れてた映画。父の死後、口うるさい欲求不満の母親と2人になり、ほとんど口をきかなくなった少女が主人公。彼女は1日中父の残したレコードを聞いていたのだが、ひょんなことから、彼女が歌うのを聞いた芸能業界の男は、彼女が歌の天才であることを発見。やがて、彼女の意志に反して、ステージで歌わせて一攫千金を狙おうと周囲が動き出すという物語。彼女のことを想う、これまた無口で暗い青年をユアン・マクレガーが演じてました。作ったのが「ブラス!」の人なんですけど、「ブラス!」のほうが僕は好きかな。歌の天才少女の物語なのに、愉快なサクセスストーリーじゃないところがイギリス映画ですよね。流れている空気は終始ドンヨリしてました。

元々は舞台だったようで、シンプルなストーリーの割りに台詞が多い映画。ていうか、主人公の母親が見た目もしゃべりもひたすら五月蝿い。うるさすぎて主人公をくってるんですよね。ひたすら暗くて、ほとんど口をきかないという主人公なのでなおさら。そして、主人公の相手役なのにユアン・マクレガーもいまいちぱっとしない。脇役が過剰に頑張りすぎているので、根暗な主人公達が影に隠れてしまったような印象でした。歌の天才というよりかは、レコードのままにどんな歌でも歌うことができるという設定なので、「モノマネ」的な要素の方が強い感じかな。父の愛したレコードを自ら再現することで、亡き父を喜ばせたいという彼女の思いがこめられているのだろね。でも、歌の場面は確かによくできてて、ジュディ・ガーランドとかモンローとかのモノマネ(?)はお見事なものでした。演じてた役者さん、本当に歌が上手かったっす。でも地声が面白かった。

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2004年9月22日 (水)

「アメリカン・イディオット」 グリーン・デイ

「アメリカン・イディオット」 グリーン・デイ

グリーン・デイ、日本でも結構人気のあるバンドですよね。パンク系の彼ら、3年位前のベスト版は結構流行ってました。そんな彼らの新作、かなり政治色の強い1枚なんです。テロ後のアメリカに対して一言申す!みたいな。プロパガンダをする方もそれを責立てるほうも同じ、メディアに踊されて自分を見失うような愚かなアメリカ人にはなりたくない。といったようなメッセージからついたアルバムタイトル。しかもアルバムを通して1つの物語的な流れを持っていて、普通の市民が脅威にさらされ、自分の生きる道に迷い、街を出て行く様子を描いているわけです。1トラック9分の中に5つの曲を入れてストーリー仕立てにしてたりとかなりの力作。個人的には物語的に街を出て行くっていう情景を歌う前半よりも帰ってくる情景を歌う後半の曲がかなり気に入りました。

英語も分かりやすくて、見難い手書きの歌詞カード(味はあるんだけどね)を見なくても、結構聞き取れるのも良いですねー。でも、洋楽ってほとんどの人がメロディだけを聞いてるんだろうなぁ・・・。「歌」っていう表現は「言葉」も大きな意味を持ってると思うんですけどね。メロディも割りと聞きやすいので(そういう点では、嫌な人もいるのかも)、パンクとかロックとかそういう枠組みを取り払って、もう一歩先に存在している1枚ではないでしょうか。で、これだしっかりしたコンセプトを持っているアルバムだけに「日本盤のみボーナストラック」は入れてはいけないと思うのです。そう思いませんか?以前、別のアルバムでもこういうのありました。

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2004年9月15日 (水)

「荊の城」 サラ・ウォーターズ

「荊の城」 創元推理文庫 サラ・ウォーターズ

新聞書評やテレビのブックレビューでかなり評判が良かったので気になってた作品。上下巻でそれぞれ1000円弱というなかなか高価な文庫本ですけど、確かに面白かったので、良しとしましょう。イギリスの作家さんが作者で、19世紀のイギリスが舞台という、誰かさんのツボをよく押さえた設定。ロンドンの貧民街に住む少女が、知り合いの詐欺師に誘われて、田舎の城に住むとある少女の財産を奪おうという計画にのるというお話。主人公は少女の侍従として、彼女の側について、あとから城にやってくる詐欺師と少女との結婚を斡旋し、少女の莫大な持参金を手に入れようという作戦なのだが、物語は二転、三転して、次々とどんでん返しを繰り返すので、グイグイと読み進んでしまいます。途中で主人公が城の少女に移り、同じ物語が、異なる視点から語られることで、謎が解き明かされていって、最後に再び主人公の視点に戻ってくるという構成もよくできていました。

この作品、ディケンズをかなり意識してるし、どちらかというと、歴史冒険小説みたいな感じだし、ミステリ的な要素は薄いのに「推理文庫」にはいっていて、ミステリみたいな紹介のされ方をされているのが、かなり気になります。とりあえず「ミステリ」と書けば売れると思っているのでしょうかね。ディケンズを意識しているのは作中にも言及されているんですけど、実際の文章の感じは極めて読みやすいし、ストーリーもディケンズよりもずっと単純明快で、とても現代的だとは思いますが、19世紀イギリスの風俗がとてもよく描かれているので、ディケンズと同時代のお話としてはあまり違和感が無いできだと思いました。「秘密の結婚」とか登場して、学部時代に「イギリスの離婚の歴史」みたいな学科の授業でかなり専門的な本を読んだときに出てきた知識のおかげで、より一層楽しめたのも嬉しかったですね。途中のやたらと同性愛的な展開がちょっと気になりはしたんですけどね。「私の真珠」ってあんた・・・。

作品全体は2人の女性の視点で物語を描くことで、両者の心理合戦みたいなのがとてもよく描かれているし、同じ出来事でも視点が変わると意味合いが変わってくるというのをとても上手く利用した構成になっているのが非常に面白かったです。さらには、この手法をつかうことで、同じ登場人物でも、相手によって接し方も違うし、印象も変わるので、各キャラクターの人物像がとても深く練りこまれている印象を受けました。かなりボリュームのある本ですけど、映画にしたらよさそうな感じのストーリーがグイグイと読者を引っ張るのであっという間に読み終わりますよー。まぁ、深い意味とかとりたてて無いし、気軽に読めるのもいい感じ。

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2004年9月10日 (金)

映画「『きょうのできごと』というできごと」

「『きょうのできごと』というできごと」 2003年 日本

8月に見た「きょうのできごと」のメイキング。DVD特典にもメイキングがあるんですけど、こちらは単独でDVD化されてるもので、普通のメイキングというよりかは、「きょうのできごと」というタイトルの映画を作ることになったスタッフ・キャストの様子を追ったドキュメンタリーになってます。企画が立ち上がったところから始まって、キャストが決まって、セットが作られて、撮影が開始して、編集して、劇場公開して、打ち上げをするまでを2時間以上かけてじっくりと映していきます。

これはこれでかなり興味深いです。映画作りとかに興味があれば是非見てみることをオススメします。映画を見てから見るのが良いんでしょうけど、このDVD自体は映画の公開前に出てて、ネタバレ要素が少ないので、単独でも楽しめる仕上がりだと思います。それが単なるメイキングとの大きな差とも言えますよね。1つの映画ができるまでの過程ってあまり知らなかったりしますし、大勢の人が動かしてるんだなぁというのを実感できます。「きょうのできごと」という作品を撮ることに関わった全ての人々の「できごと」を描いてるわけでして、見ていると、自分も参加したくなっちゃいます。どちらかというと、キャストとして出たいかな・・・。

ところで、「きょうのできごと」本編なんですけど、日が経って思い返してみると、あの映画は見ているときにはかなりの臨場感があって、登場人物たちと一緒に自分もその場にいるような気になれるし、見終わった後に1人で我に返ってもみんなで遊んだ後に1人で家に帰ったときの感覚なんかに似てて、なんともいえない気分になれるんですけど、ふとした瞬間に「自分はあそこにいないんだ」ということに気づくと、かなりの寂しさや、虚しさが襲ってくるんですよね。まぁ、2、3行の会話を数時間かけて撮影したそうで、徹底した自然さを追求してたみたいですけど。

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2004年9月 3日 (金)

映画「ぼくセザール10歳半1m39cm」

「ぼくセザール10歳半1m39cm」 2003年 フランス

男の子がほっぺたをプクっと膨らませて不機嫌そうな顔をしているのが良い感じのポスターの映画です。ストーリーは、パリに住む小学生のセザール君を主人公にして、背も高くて勉強もスポーツもできる親友の男の子、とっても可愛い転校生の女の子の3人の友情を描いています。彼らの学校生活やそれぞれの家族の話なんかを交えながら、その都度、主人公の少年の心の声でツッコミが入るのが面白い作品。前半と後半でストーリーが2部構成になっていて、前半は彼らの学校生活を中心に、主人公の家庭の問題を、後半は親友の父親を探しに3人だけで密かにロンドンに行って大冒険する様子を描いています。個人的には前半の方が面白いと思いましたが、後半はロンドンが舞台になるのでイギリス通としてはとても嬉しい内容でした。ユーロスターに乗るところとか、「そうそう、乗り場は2階に上がるんだよね」と前に行ったときのことを思い出しながら見てしまいました。

この映画の面白いところは、作品を通してずーっと主人公の視点である1m39cmの高さで撮影されているという点。そして、この徹底ぶりは視点のみならず、ストーリーにも生かされていて、あくまでも子供の視点を貫くので、主人公の家庭で何やら問題が発生して、警察が出入りしたりするものの、「あなたは部屋にいってなさい」というお決まりの文句で主人公はその内容を知らされることもないし、見ている我々に対してもこの映画は何の説明も無いままで、観客も一緒になって「何か問題が起きたらしいけど、子ども扱いだから教えてもらえない」という状況を味わうという作りになっています。買い物に行けば「あ~ら、坊や」というオバさんの顔がアップになるし、友達の親と食事をすれば「君達はどうなのかなぁ?」というわざとらしいテンションを見せ付けられて、我々観客も「子ども扱いされること」を疑似体験できるわけです。そして、それに上手くあわせて主人公の心の声のツッコミが入るのが笑わせポイントになっています。

あとは、フランスの子供達の学校生活がこれでもかというほどに描かれているので、そういう点でもかなり興味深いです。授業風景とか、社会科見学の様子とか、体育の授業(ヒップホップ踊ったりしてました)とか。日本の子供よりも早熟だなぁというところとか(文部省推奨とかなのに割とこういうシーンも派手だった)。いかにも子供なおバカな妄想は世界共通とか。ちょっと不満な点は無理矢理なハッピーエンドくらいです。「おいおい」と突っ込みたいような急展開でしたからね。さらに突っ込みを1つ入れると、メインテーマになってる音楽がミソミソミソミソっていう3度の音を刻むバックに下降系のアルペジオが加わるような短調の音がどんどん転調していくっていうスタイルなんですけど、「グッバイ・レーニン!」、「真珠の首飾りの少女」に続いてこのスタイルのテーマ音楽は今年だけで3回目。映画館に入ったとたんに、BGMで流れているのを聞いて「またかよ!」って思いました。同じくらいに作られた異なる国の欧州映画なので、これは昨今の欧州全体でのブームなんでしょうか。

さらに、演出的な点から、1つとても良いなぁと思ったところがありました。オープニングで、主人公はお葬式に参加してるんですけど、途中で雨が降り出して、参列者たちが傘をさし始めるのが上空から映されるんですよ。すると、画面が黒い傘で埋め尽くされていってオープニングロールが終わるというつくりになっています。そして、このシーンと本当に対照的にラストシーンが作られていて、ストーリーがどうこうとは関係ないところで妙に関心してしまいました。

子供主人公映画としてはイギリスの「リトル・ダンサー」とかドイツの「点子ちゃんとアントン」のほうがはるかに完成度が高いですけど、この映画はフランスならではのほんわか感が良い感じだし、主人公がとにかく憎めないヤツなので割とオススメです。公式ページの雰囲気そのままの映画ですかね。公式ページにて、オルガン弾いてる主人公をクリックするとうな垂れて去っていくんですけど、まさにその空気の映画ですよ。密かにお気に入りのシーンはやたらとくどいサランラップのシーンですかね。ちなみにこの主人公の子、「パティニョールおじさん」でお隣のユダヤ人のおっさんを守る主人公をしてた子です。あれも良い映画でしたね~。

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