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2004年10月15日 (金)

「パークライフ」 吉田修一

「パークライフ」 吉田修一 文春文庫

吉田氏の芥川賞受賞作が文庫化しました。日比谷公園を舞台にして現代人の都会に暮らす人々の希薄さを描いた作品。主人公は夫婦崩壊の危機にあって2人とも家を出てしまった友人宅で留守番兼ペットの猿の世話をしている。昼間はサラリーマンをしている彼は昼休みを日比谷公園で過ごすのだが、ある日、ふとしたことで1人の女性と知り合い彼女と昼休みを過ごすようになりスタバに行ったり、写真展に行ったりするようになる。

すべての登場人物が自分の居場所を探しているような作品。近頃よくある作風で大きな問題提起を何もせずに淡々と日常を描くタイプの小説なのだけど、「深そうなテーマ」は大量に散りばめられている作品。主人公は最後まで公園でともに昼休みを過ごす女性の名前すら聞かない。こういう匿名の人間関係ってネット上に存在するようによく言われているものだけれど、現実世界でも十分起こりうるわけで、匿名だからこそ色々と語り合えるということもあるんですよね。出版社の宣伝とかにはこの2人の恋がどうのこうのと書かれているのだけれど、明らかにこれは恋物語ではないですよね。恋がどうのと書けば売れるんですかね・・・。

あと、この作品の特徴はひたすら固有名詞が多いということかもしれません。スタバがこんなに使用される小説は初めてみたかも。固有名詞が多いということはそれだけ読者の想像力を限定していくわけで、読者はそれに代わって知識が求められるようになると思います。そうなるとその固有名詞がピンと来ない人には作品の把握が難しくなってくるわけで、そういう意味でこの小説は読者を限定するものだと思います。スタバとかも単に都会風なものの記号として出てくるわけではなくて、「スタバの味が分かる」ということがどういうことかを理解しなければいけないわけですからね。

率直な感想は改めて芥川賞の選考基準がよく分からないことを再認識したということでしょうか。けっしてつまらないわけではないし僕は嫌いじゃないですけど、「蹴りたい~」「蛇を踏む」「日蝕」そしてこの作品に一貫性はないと思われるわけですよ。これはどちらかというと「蹴りたい」系ですけどね。ちなみに同じ作者なら断然「パレード」(幻冬舎文庫)のほうが面白いですねー。読むたびにゾクゾクの種類が変わるというとても不思議な作品。3回くらい読むの、かなりオススメですよ。

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