「熱球」 重松清
「熱球」 徳間文庫 重松清
これまで読んだ重松作品の中では一番微妙かも。主人公は、元高校球児で、かつて瀬戸内にある地元の公立進学高を地区予選の決勝まで勝ち進めたチームのエースだった男。進学校であることもあって、地元では初の快挙に沸きあがったが、決勝の前日、選手の1人が事件を起こしてしまい、決勝を辞退、盛り上がっていた町は、打って変わって、大不祥事に白い目を向けるようになった。それ以来、主人公は地元の町を避けるようになり、東京で就職し結婚。それから十数年、主人公は母の死とリストラをきっかけに、地元の町に戻る。一度は捨てた故郷で、かつてのチームメイトと再会し、高校以来、胸に抱き続けていた自分の思いと向き合っていくというお話し。
要は、不祥事で決勝戦に進出できなかった高校球児たちが中年に差し掛かって、長年抱き続けてきたモヤモヤした感情と向き合うという話なんですが、主人公の思いに全く共感できないんですよね。あと、全体に暗くい空気が強い作品なのですよ。重松作品は往々にして暗いテーマが多いことも確かですけど、そういう暗さとは別で、この作品では、主人公そのものがかなり根暗な人で、その町も、そこに暮らす人も全体的に暗い印象が強いんですね。そういうところがちょっと苦手だったのかも。いつものテンポの良い重松節もちょっと弱かった気がします。あー、早く「流星ワゴン」文庫にならないかなー。発表順だと、「熱球」のほうが後だから、そろそろのはず。
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