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2005年2月13日 (日)

「真昼のプリニウス」 池澤夏樹

「真昼のプリニウス」 中公文庫 池澤夏樹

勉強メインの日々を過ごしているので、この本1冊読み終わるのに1ヶ月くらいかかってしまいました。これくらい面白い本であれば、通常は2,3日で読み終わっていると思います。池澤氏、「ティオ」「スティルライフ」に続いて3冊目。そして、自分の中での評価はあがる一方です。まとめてではなくて、少しずつ時間を空けて全ての作品を制覇したい作家さんです。

主人公は火山学者で助教授をしている30代女性。科学者である彼女が最終的に占い師の予言に導かれて、神話の「プリニウス」のごとく火山に向かうまでの心の変遷を描いています。忙しいので、特に長い感想は書きませんけど、超オススメの1冊です。何気ない文章がとても心地の良い作家さん。そして「スティルライフ」でもそうでしたけど、理系ネタを惜しみなく使って文系な小説を書くのも素敵です。全体には宮沢賢治とか、プラネテスとかも彷彿とさせるような作品でした。折に触れて読み返したいなぁと思わせてくれます。

この作品の中で、主人公にとある電話サービスの話をもちかける広告会社の男が登場します。そのサービスは、そこに電話をすると、ちょっとしたトリビア的なネタとか、特に内容の無い物語がランダムに選ばれて再生されると言うもので、何の目的もなしになんとなくそこに電話をかけて、「くじ引き」感覚で、こころのスキマを埋めるといった内容。この作品が書かれたのは15年くらい前ですが、これってなんとなくネットサーフィンして、大した目的もないのに、色々なページを見てしまうような感覚に近いことを提案してますよね。普通に携帯とかでありそうなシステムだし。さらに言えば、「ランダムに選ばれる」ものって妙に繰り返しそれを選択したいという気になりますよね。物語中では、とても画期的なものとして颯爽と登場し、作品の進行とともに、ボロがはがれていくような感じになっているんですけど、このサービス自体はかなり人間の本質をとらえているような気がしました。トリビアとかうんちくとかも流行ってるし。

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