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2005年3月12日 (土)

「流星ワゴン」重松清 

「流星ワゴン」重松清 講談社文庫

重松さんの作品の中でもとりわけ評判の良い1冊なので、クビを長くして文庫化を待っていました。今回は珍しくファンタジーです。

妻の浮気、息子の引きこもり、自身のリストラ、不仲の実父の病気等で生きる意味を見失った中年男性が主人公(とんでもない設定だ)。彼の前に数年前に事故死したという父子の亡霊がワゴン車に乗って現われ、彼らは主人公を、人生の分岐点だったかもしれない過去へと連れて行く。主人公は突如現われた自分と同世代の頃の父(病床の父の生霊か?)と2人で、人生の分岐点となった日々をもう一度過ごすことで、自分を見つめ直していくというお話。

過去に戻るとは言っても、「運命は変えられない」というのが貫かれているので、かつてと違う言動をとっても、結果は変わらないという点がこの作品の重要なところ。「あのときにああしていたら」という後悔ばかりしていても、運命は変わらないらしいのです。それよりも、どのようにして、与えられた自分の運命と向き合えばいいのかという点に焦点をあてたところが上手いです。

作品の大きなテーマは「父子の絆」。この作品では女性キャラはほとんど登場しないし、重要な役割を果たすこともありません。ひたすら父子の物語。登場する3組の父子がそれぞれになんらかの悩みを抱えていて、それが解消されていく様子が描かれています。

かなり期待していたため、本音を言うとちょっと肩透かしをくらった感もあるのだけれど、面白いし、重松清の代表作と呼んでも過言ではない作品だと思います。自分に子供ができてからもう一度読んでみたい作品です。その点、重松氏と同世代で今を生きている読者が本当に羨ましいです。

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コメント

ANDREさん、こんばんは。
過去の「たいせつなところ」に戻ってやり直すと言うと、
一瞬、未来である現在が変わるのか、と思うんですが、
そこが、幾多のタイムトラベル物とは違って、
ファンタジックなのに、とても現実的で、びっくりしたり、納得したり。
設定や展開、心情の表現など、
同年代の男性に大人気の作品というのが、理解できた気がしました。

これより前に読んだ『からくりからくさ』(わたしは読了できました)が
あまりにいろんな意味での「女性」を感じすぎて、
読了したものの馴染めないものも残り、
この、徹底した男目線の物語のほうが好きな自分に驚きます。

投稿: 悠雅 | 2008年7月 1日 (火) 23時11分

>悠雅さん

コメント&TBありがとうございます!

設定を見たときは重松清がファンタジー?とかなり驚いたんですけど、読んでみると、いつもの重松節が炸裂する現実的な作品ですよね。

この作品、人気があって、重松氏の代表作のような扱いになっていますが、確かに面白かったんですけど、もう少し年代が上になってから読んだ方が楽しめたんだろうなと思います。まだ子供もいない、中途半端な20代には、もう一歩感情移入できない部分があったので、将来、読み返すのを楽しみにしています。


『からくりからくさ』の馴染めない感じ、分かります!!
梨木さんの作品は自分には当たり外れの幅が大きいようで、
良いものはかなり好きなんですけど、
苦手なものは全くダメなんですよねぇ。

投稿: ANDRE | 2008年7月 2日 (水) 00時41分

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