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2005年4月

2005年4月27日 (水)

「PLUTO 2巻」 浦沢直樹×手塚治虫

「PLUTO 2巻」 浦沢直樹×手塚治虫 小学館

浦沢直樹が鉄腕アトムの1エピソードをリメイクする作品の第2巻。前巻を読んだときは、かなりの衝撃だったこの作品、手塚氏の作品に新しい息吹を吹き込んだとはまさにこのこと!と感心しました。今回は、恐らくこの先に続いていくための伏線となる部分が大量を占めていて、第1巻を読んだときほどの衝撃は感じられませんでした。かなり期待してたんですけどね・・・。でも決してつまらなかったわけではなくて、この先に続けていくためには仕方の無い展開ですからね。毎度の事ながら一体いくつの謎を投げかければ気が済むのやらってくらいに謎が謎をよんでます。

どのキャラもオリジナルの絵ではなくて、浦沢氏自身の絵になってるんですけど、やっぱり各キャラの特徴はオリジナルを踏襲したもの。タワシ警部とか登場した瞬間に、「あ~、タワシさん!」ってすぐに分かったし。御茶ノ水博士は予想以上に普通の髪型だったけど・・・。アトム君はかわいいねー。

この作品、カバーを外すと出てくるアメコミ調になってるその巻のダイジェストが結構お気に入り。

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2005年4月26日 (火)

「嗤う伊右衛門」 京極夏彦 

「嗤う伊右衛門」 京極夏彦 中公文庫

泉鏡花賞を受賞して映画化もされた作品。作者は昨年、直木賞を受賞した京極さん。自分は初の京極作品でした。この本、文庫版が角川と中公と2社から出てるんですけど、角川の表紙が映画ポスターを下敷きにしてる一方で、中公版は、和装のかなり粋な表紙。誰が見てもこちらの方を買いたくなるものかと思うんだけど、書店に多く並んでるのは角川版だったりします。

ストーリーはズバリ四谷怪談。オドロオドロしたお岩さんでおなじみの怪談を、お岩&伊右衛門夫婦の哀しい愛の物語として翻案した作品。自分の知ってる限り、岩の夫は極悪非道なイメージだったのですが、この作品では真面目で不器用な男として描かれて、岩と伊右衛門が互いの幸せを願って離れ離れになったはずなのに・・・という展開がとても新鮮。あと、キリッと前を向いている、岩の人間としての美しさも印象的。お岩さんが「伊右衛門様は何故幸せにならぬ」と叫ぶ場面は圧巻です。少しずつ謎が明らかになっていくような構成も良いんですけど、370ページくらいの作品で正直200ページくらいまではかなり退屈でした。でも後半の盛り上がりがかなり良かったので結果的には満足。

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2005年4月23日 (土)

映画「コーラス」 

「コーラス」 2004年 フランス 

フランスでは7人に1人が見たとかいう大ヒットになった映画。タイトルの通り、合唱がテーマの映画です。フランスにある、普通の学校では手におえないような子や、孤児なんかを集めた全寮制の学校にやってきた音楽教師が主人公。その学校は子供達もとんでもない悪ガキばっかりな上に、校長による徹底した管理教育、スパルタ教育がなされていた。主人公は校長から反感を買いながらも子供達に歌を教え、やがて、教室には美しいコーラスが響き渡るという物語。監督は「WATARIDORI」(渡り鳥の生態を追うやつ。これも結構好きな映画。)などのドキュメンタリー作品が多い人。

物語は言ってしまえば「いまを生きる」の国語の先生が音楽の先生になって、微妙に「天使にラブソングを2」テイストになったようなお話。歌うのはクラシックな曲ですけど。でも、感動を押し売りするわけではなくて、クスリと笑わせてくれるシーンがたくさんあったのはフランス映画らしいセンス。「いまを生きる」のほうが泣けたけど、「コーラス」の方がほのぼの感がありました。あと、作品全体に影を落とす、一人の暴力的な少年の存在なども興味深いところ。でも、そんなのよりもなによりも、やっぱり合唱が良いのです。そんな短期間であんなに上手くなるはずがないとか、楽譜も歌詞カードもなしに彼らはどうやって覚えたのかとか、不満をあげればキリがないのですが、合唱は本当に綺麗だし、全編にわたって音楽に満ち溢れているので、とても心地の良い作品でした。何かと話題のソロを歌う少年、決して「天使の歌声」ではないちょっと荒削りな感じ(世間では「天使の歌声」とか言われてるっぽいけど、ちょっとかすれたり、高音部への切り替えが気になったのですよ。)が逆にリアリティがあってよかったと思います。CD欲しいな~。

宣伝とかだと主役はソリストの少年っぽいんですけど、実は彼よりも数倍美味しい役を担っている子がいました。そしてこの子供の使いかたが、ズルいくらいに憎いんですよ。かわいすぎです。妙に特別な役を演じてると思ったら監督のお子さんだったみたいです。あと、主人公の教師を演じる俳優さん(「パシニョールおじさん」の人)が決して2枚目の素敵な先生じゃなくて、ちょっと哀れな中年男性なのも良かったです。彼が恋心を抱くエピソードは、全編を通して最もほほえましいエピソードだったかも。あと、校長先生の役をした俳優さんも良かったですねー。特にいつの間にか3枚目のキャラになってるのが笑えました。

ボーイソプラノって声変わりとともに失われるだけに、本当に一瞬のきらめきですよね。映画を見ながら、この子も数年後にはこの声を失ってしまうのかぁと思うととても複雑な気持ちになります。この辺のことは「独立少年合唱団」ていう日本映画でかなり象徴的に描かれてましたね。

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2005年4月14日 (木)

「ブラックベリーワイン」 ジョアン・ハリス

「ブラックベリーワイン」 ジョアン・ハリス 角川文庫

映画にもなった「ショコラ」という作品の原作の作者が書いた、「ショコラ」と同じ村を舞台にした別の物語。続編ということではなくて、舞台が同じ(数年後という設定)なだけで、両作品には特に関連性はないけれど、同じ登場人物も出てくるので「ショコラ」を読んでると、村人達の後日の様子が分かるという作り。

お話は、かつて1作品だけヒットを飛ばして、その後、たいしたヒット作もなく、軽いSF作品を書いて暮らしている作家が主人公。長期のスランプ状態にある彼は、ある日フランスの郊外の村に一軒の家を買います。そこでの暮しの中で、村人とのかかわりや少年時代の友人であった1人の老人の霊との交流で自身を見つめなおしていくという物語。物語は作家の現在と老人と過ごした少年時代の物語が交互に語れる形式になってます。タイトルにあるように、老人が彼に残したワインが物語のキーになっています。

正直な感想、「ショコラ」のほうが数倍面白かったです。「ショコラ」って映画よりも原作の方が数倍に奥が深くて面白いと思うんですけど、この続編にはその奥深さが感じられませんでした。現在と過去が3,4ページずつくらいで交互に出てくるっていう構成もちょっと読みづらかったしね。細切れすぎな印象でした。「ショコラ」が好きだったので期待が大きすぎたのかもしれません。単体で見ればそんなに悪い作品でもない気がするし。

老人と少年の物語ならば、「アトランティスのこころ」(S・キング)のほうがずっとよくできた話ではないでしょうか。少年時代物としても「少年時代」(R・マキャモン、超名作だと思う)なんかとどうしても比較してしまうのがよくないのかもね。

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2005年4月13日 (水)

「Songs for Silverman」 Ben Folds

「Songs for Silverman」 Ben Folds

僕の好きなピアノロッカー(グランドピアノ1台だけでツアー行ったりするんですよ!!)、ベン・フォールズの新アルバム。ソロ第1作目の前作は、ピアノをメインに全ての楽器を自ら演奏して、なかなか激しいハイテンポのロックからジャジーなナンバーまで揃ってとても心地よい1枚でした。そしてソロ第2作の今回は、再びバンド形式に立ち返った作品。1度、1人でソロで仕上げたものを全て録音しなおして、バンドスタイルで録り直したというこだわりの入れようです。バンドと言っても、ピアノ、ベース、ドラムだけで、ピアノメインの音作りは相変わらず。数あるピアノ使用のロック、ポップス系では間違えなくトップクラスの曲の仕上がりです。

今回は前回見られたような、ハイテンポの熱いロックナンバーとかがあまりなくて、やや落ち着いた仕上がりで、トリオバンド形式なので、ジャズテイストも感じられる内容。で、何よりも楽曲が素晴らしい!!!アルバム1枚を通して聞いてみて、自分の持ってる数あるCDの中でもかなり上位に食い込む勢いで気に入りました。ホントに良い!メロディの美しさ、ピアノの使い方(ピアノっ子としてはここにこだわりたい)、文学的な歌詞と文句のつけようなしですよ。今日は超ごきげんです。

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2005年4月 1日 (金)

「団地ともお 4巻」 小田扉

「団地ともお 4巻」 小田扉 小学館

今、自分が最も注目してる漫画家、それこそ小田扉。気の抜けた絵と、かなり笑えるギャグセンスとは裏腹に、シュールかつ、ハートウォームかつ、日常ベースのファンタジーを描く作家です。完結してる作品でヤバイくらいにオススメなのが「江豆町」(大田出版)なのですが、現在連載中で続巻が出るたびに唸ってしまうのが「団地ともお」です。巻を重ねるにつれて面白さが増していて、作者の筆力に脱帽しっぱなし。

ストーリーは団地に住む小学生を主人公にした1話完結もの。「ちびまるこ」系のスタイルです。笑えるシーンは無茶苦茶笑えるのに、最後のコマでホロリとさせる絶妙のバランスが天才的に上手いです。時代設定は一応現代なんだけど、子供たちの日常は雰囲気的には20年くらい前の空気。自分も小学校のとき団地っ子だったし、なんとなく共感できたりできなかったり。基本的に、子供達はみんなバカで、そして小学生なので、バカなのにやたら真剣で一生懸命だったりします。そんな彼等に一癖も二癖もある大人たちが絡みます。子供達の無邪気さ、バカさとは裏腹に大人たちは皆、どこかしらか影のあるキャラばかりで、その微妙なすれ違い具合もよく描けています。「ちびまるこ」との決定的な違いは、大人たちが理想化された存在ではなく妙にリアルに描かれている点ではないでしょうか。

この作品は基本的にはファンタジーだったりします。小学生団地ライフギャグ漫画ともいえるんですけど、基本的に、現実にはありえないような出来事ばかり。誰もが心の中に持ってる小学生ライフを描いたファンタジー作品だと僕は思ってます。決して顔が登場しない単身赴任をしてる父親とのエピソードなんかも、かなり上質のファンタジーですよ。普通に泣かせます。

あとこの作品、コマとして描かれる絵の選択が上手いです。漫画ってコマとコマの間は不連続なので、それぞれのポイントを抑えた場面がコマの中に描かれて他は行間を読むようにコマ間を読んで補うことになります。この作品、コマとして描かれるのが普通なら行間の方にあたるのではないかというような場面であることが多いのです。単純にストーリーを追うための絵や場面は、台詞さえつなげれば行間で読ませれば十分なわけで、笑いや泣きといった喜怒哀楽の感情を最もダイレクトに伝えることのできる場面を意図的に選択して描いているように思います。その辺のセンスのよさもかなり好き。

浦沢氏が計算しつくされたストーリと絵で読ませて、山下さんが人間の心を深くまで描ききって、木村氏が淡々とした日常を文学的に映し出したりするのに対して、小田氏は10ページそこそこという小空間の中で、本当にゆるーい、力の抜けた作風の中に人生の喜怒哀楽の全てを描きつくし、尚且つ基本はシュールギャグで貫いているように思います。そう、最大のポイント、ここまでの内容なのにギャグ漫画だってことですよ。

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