「嗤う伊右衛門」 京極夏彦
「嗤う伊右衛門」 京極夏彦 中公文庫
泉鏡花賞を受賞して映画化もされた作品。作者は昨年、直木賞を受賞した京極さん。自分は初の京極作品でした。この本、文庫版が角川と中公と2社から出てるんですけど、角川の表紙が映画ポスターを下敷きにしてる一方で、中公版は、和装のかなり粋な表紙。誰が見てもこちらの方を買いたくなるものかと思うんだけど、書店に多く並んでるのは角川版だったりします。
ストーリーはズバリ四谷怪談。オドロオドロしたお岩さんでおなじみの怪談を、お岩&伊右衛門夫婦の哀しい愛の物語として翻案した作品。自分の知ってる限り、岩の夫は極悪非道なイメージだったのですが、この作品では真面目で不器用な男として描かれて、岩と伊右衛門が互いの幸せを願って離れ離れになったはずなのに・・・という展開がとても新鮮。あと、キリッと前を向いている、岩の人間としての美しさも印象的。お岩さんが「伊右衛門様は何故幸せにならぬ」と叫ぶ場面は圧巻です。少しずつ謎が明らかになっていくような構成も良いんですけど、370ページくらいの作品で正直200ページくらいまではかなり退屈でした。でも後半の盛り上がりがかなり良かったので結果的には満足。
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