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2005年5月

2005年5月15日 (日)

「ドリアングレイの肖像」 オスカー・ワイルド

「ドリアングレイの肖像」 オスカー・ワイルド 新潮文庫

新潮文庫版の活字が大きくなって読みやすくなったので、かねてから気になっていた本を読みました。「罪と罰」を読んだときも思ったけれど、やっぱり名作といわれてる作品は面白いですね。伊達に時代を超えて読まれていません。福田氏の訳(新潮はシェイクスピアも福田氏ですよね)も50年位前のものだけれど、とても読みやすくて「名訳」と言っても過言ではないと思いました。

ストーリーは、純粋無垢な美青年ドリアン・グレイの美しさに見せられた画家が彼の肖像を描くところから始まる。外見のみならず、その魂まで描ききった肖像は本当に美しく、それを見たドリアン・グレイは、やがて衰えていく自分の身とは逆に絵の中の肖像は永遠にその美しさを保つことができるという皮肉に苦悩する。その後、純粋な青年だったドリアン・グレイも煩悩の限りを尽くすようになっていくのだが、ふと気がつくと、彼が犯す様々な行為は全て肖像画の中の自分に現われるようになり、肖像画の自分は醜い顔に変わっていた。こうして彼は、肖像画の自分が醜く変化していく一方で永遠の若さと美貌を手に入れることになったのだが・・・という物語。

割と「世にも奇妙な~」系統の物語でした。この文庫のいけてないところは裏表紙のストーリー紹介みたいなところで、肝心の一番ラストのオチを書いてしまっていること。これはやってはいけないことなのでは!?作品の重要なところがそこのオチではないとは言え、やっぱりネタバレはよくないと思います。

物語自体は、読んでいてはっとするような台詞や文が非常に多くて、若いうちに読んでおいて損はな一冊といった感じでした。ていうか、これこそ「若い人に是非!」と勧めたいような本かもしれません。とくに芸術とは、美しさとはといったような議論に関してとても興味深い記述が多数ありました。永遠の美っていうのはやっぱりちょっとした恐怖を人に与えるんですよね。人間の持つ外見の美しさっていうのはその一瞬の輝きだからこそ美しいのではないでしょうかね。

ワイルドといえば、当然、同性愛的な文脈も気になるところですけど、厳しく規制されていた時代の作品なので、それをにおわせつつも基本的にはあまり感じられない作品でした。でも主要人物全員男だし、女性の扱いが悪いのは否めないですけど。「オスカー・ワイルド」という映画の中で、ワイルドを誘惑する美青年をジュード・ロウが演じていて、本を読んでる間中、ドリアン・グレイのイメージはジュード・ロウでした。映画の中では別にドリアン・グレイのモデルになる人は出てくるんですけど、ジュード・ロウのほうがイメージが近い。

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2005年5月14日 (土)

劇団四季「キャッツ」

劇団四季「キャッツ」@キャッツ劇場

映画で話題の「オペラ座」と同じくロイド・ウェーバー氏が作ったミュージカル。国内版も全国巡業をしながら超ロングランを記録してついに東京に帰ってきました。ずっと見たかった舞台なのでそれはそれは楽しみにしていってきました。

まずはやっぱり劇場が素晴らしい!!です。この公演のためだけに作られた劇場なので、完全に作品の世界観が劇場全体に再現されています。本当に細かいところまで遊び心にあふれた客席は必見。しかも各所に様々にカラクリが施されていて、公演中に、「おぉっ!あんなところにまで仕掛けが!!」と驚くこと多数。普通に客席も舞台の一部として使われていて、それを前提にした客席作りだし。自分は違ったのだけど、舞台と一緒に回転する座席とか、舞台の片隅にある座席とか楽しそうな座席もありました。

内容はあってないようなもので、天にのぼるただ一匹の猫を決めるために猫たちが集会を開くというストーリーで、舞台はひたすら各猫たちの紹介を歌と踊りで繰り広げるという内容。自らの悲しい過去をしっとりと歌いあげたり、役者だった猫は舞台を再現したり、マジシャンの猫が華麗なマジックとアクロバットを披露したりと見るものを飽きさせないエンターテイメントの数々。ていうか予想以上の内容の濃さで舞台に釘付けでした。サーカスとディズニーランドを足して2で割ったような舞台です。次から次に現われる舞台のカラクリの数々に驚き、美しい歌に聞きほれ、華麗なダンスに釘付けになり、猫になりきった役者さんたちの動きに感動する舞台でした。ちなみに大真面目なシーンにも関わらず、そこだけ台詞が一言だけ英語という謎の場面があり、それがあまりにもツボにはまってしまって笑いをこらえるのが大変でした。

かつて鉄道員だったという猫が出てきて歌う場面があるのですが、この役をされていた方の歌が本当に上手で、声もきれいなテナーだし、歌詞もはっきりと聞き取りやすくてこの歌の部分は完全に見とれてしまいました。恐らくこの場面はどちらかというとそこまで重要なシーンではないと思うのだけれど、今日の舞台の中では一番輝いていたと思います。メインで演じる人が上手だとその場面全体がパッと空気が変わりますねー。ところで、四季って日本人じゃない役者が結構多いんですねー。歌詞が聞き取りづらい場面がたびたびあったのもそのためでしょうかね。

ところでこの舞台、オリジナルの演出をしてるのがなんとトレバー・ナンじゃないですか!!!!RSCの偉大なる演出家にして、僕の大好きな映画「十二夜」の監督をされた方ですよ-。これは嬉しいですねー。

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2005年5月 2日 (月)

「ラッシュライフ」 伊坂幸太郎

「ラッシュライフ」 新潮文庫 伊坂幸太郎

待ちに待った伊坂作品の文庫化第2弾!文庫で読める唯一の作品だった前作「オーデュボンの祈り」で完全に伊坂ワールドにはまってしまったものとしては、ハードカバーに手を出そうかどうかを真剣に悩みました。そんな中での発売だったので喜びもヒトシオ。そしてやっぱり期待を裏切らなかった伊坂氏に大感謝。あまりの面白さにバイト遅刻しそうになったよ・・・。

ストーリーは5人のメインキャラを中心に展開。空き巣のプロ、新興宗教の信者、浮気相手と共にその妻の殺害を企む愛人、リストラにあったさえない男、成金画商と仕事をする画家の5人の物語が1人あたり10ページ前後で交互に現われ細切れに展開していくという構成。で、このほかにも犬、外国人女性、たからくじ、貧しい画商、展覧会などが各エピソードの枠を越えて登場。

ハードカバー版の表紙、文庫版の中扉にエッシャーのだまし絵が描かれているのですが、この作品もこの絵の通りに見事なだまし絵を作っています。あたかも関係のないように進む5つのストーリーがあっと驚く仕掛けで一つにつながっていくのですが、それはもう快感としかいえないような見事さ。実は読んでいて割りと早くに作品にしこまれたトリックに気づいてしまったのですが(作者は結構あからさまにトリックを提示してるし)、そうすると、そのトリックをどのようにまとめるのかということが気になって、最後まで一気に読めてしまいました。作品の冒頭がトリックを仕込むにあたって非常に効果的に描かれてるのが素晴らしいです。

で、最後まで読むとエッシャーさながらの「だまし小説」が完成していて、全体図を把握して冒頭から読み返すと、同じ作品でありながら、まったく違った読み方しかできなくなってしまう作品。2度目も確実に楽しめるけれど、全ての断片がひとつにつながっていく快感は1回目の読書でしか味わえないので、それが最大の欠点なのかもしれません。「オーデュボンの祈り」もそうでしたね。

<結構ネタバレ。反転させて読んで下さい。>個人的に1つだけ不満をあげると、エッシャーのだまし絵を徹底するのならば、どこかで矛盾を作って永遠のループを作って欲しかったんですけど、伊坂氏の作った物語はあまりに矛盾がなくて、きれいに収まってしまうのがちょっと物足りなかったかな・・・。あと先ほども書いたけれど、冒頭部分、全てのエピソードに外国人を登場させることで、あたかも同じ時間軸の物語と思わせたのは本当にお見事でした。

そんなこんなで自分は確実に伊坂幸太郎ファンになっていることを確信した読書でした。本当に面白いから皆読んで!!!!絶対に後悔させません!微妙にファンタジー調の舞台設定だった「オーデュボン」とは違ってこちらはリアルな舞台設定だし(自分は「オーデュボン」のほうが好きだけどこちらのほうが一般ウケしそう)。そうそう、途中で「オーデュボン」の世界ともリンクしてました。フォークナーやバルザックの作品みたいにすべての伊坂作品全体で一つの世界観を描いていくのでしょうか。

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2005年5月 1日 (日)

MIND ASASSIN」 かずはじめ

MIND ASASSIN」 かずはじめ 集英社コミック文庫

僕は小学校後半くらいから高校の終わりまでジャンプを毎週読んでました。大学入学後はすっかり読まなくなったけど・・・。当時の作品が最近いろいろと文庫化してて、「お、懐かしい」と思うことがしばしば。「アウターゾーン」とか(←ちなみにこれは全巻持っててかなり好きでした。今も部屋の奥のほうに眠ってるはず)。で、この「マインド・アサシン」です。これも当時結構好きだったのにすぐに終わってしまって残念だった作品。文庫化してるのを見て懐かしくなって買ってしまいました。

記憶を破壊するという超能力を持った医者が主人公で、悩みを持った患者さんたちがやってきて、その悩みを解決するというのが基本スタイル。しかし、この作品あらためて読んでみるとよく少年誌で連載してたな~という内容。患者の悩みってのが、生徒から強姦された女性教師とか、虐待を受けてる子供とかそんなのばっかり。それ以外も高校時代に自分を好きだったという女性と再会するエピソードもやけに大人向けな内容。これ本当に少年誌に載ってたの!?って感じです。で、恐らくクレームがきたのか後半は、ライバルの超能力者が出てきて対決するような展開。恐らく作者の意に反するこの展開に無理があったのは当然で、その後すぐに連載終了となったみたいです。やっぱりこれはブラック・ジャックスタイルのオムニバスでやったほうが面白い作品ですよ。ジーンとさせるドラマ有り、クスリとさせる笑いあり、真面目な問題提起ありでなかなか完成度の高い作品だとは思うんですけどね。いかんせん少年誌連載向けではない内容でしたからね~。

で、僕が知ってるのは当時連載されてた分だけなんですけど、なにやらその後もひっそりと続きのエピソードが書かれていたらしくて、なんと今月、文庫版がもう1冊発売されます。しかも、作者のホームページによると、扱いとしては「未完」らしい。作者はこれがデビュー作で、この作品はいくらでも続けられる得意分野だけど自分のスタイルをデビュー作で決めてしまうよりも、もっと色々な作品にチャレンジしたいので休止しているだけらしい。そんなことなら早く続きを書いて欲しいですねー。ちなみにこの作品に次に連載してた生徒会ものの作品も結構好きでした。この作者、シンプルな絵とヒューマンなストーリーがかなりツボです。

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