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2005年5月 2日 (月)

「ラッシュライフ」 伊坂幸太郎

「ラッシュライフ」 新潮文庫 伊坂幸太郎

待ちに待った伊坂作品の文庫化第2弾!文庫で読める唯一の作品だった前作「オーデュボンの祈り」で完全に伊坂ワールドにはまってしまったものとしては、ハードカバーに手を出そうかどうかを真剣に悩みました。そんな中での発売だったので喜びもヒトシオ。そしてやっぱり期待を裏切らなかった伊坂氏に大感謝。あまりの面白さにバイト遅刻しそうになったよ・・・。

ストーリーは5人のメインキャラを中心に展開。空き巣のプロ、新興宗教の信者、浮気相手と共にその妻の殺害を企む愛人、リストラにあったさえない男、成金画商と仕事をする画家の5人の物語が1人あたり10ページ前後で交互に現われ細切れに展開していくという構成。で、このほかにも犬、外国人女性、たからくじ、貧しい画商、展覧会などが各エピソードの枠を越えて登場。

ハードカバー版の表紙、文庫版の中扉にエッシャーのだまし絵が描かれているのですが、この作品もこの絵の通りに見事なだまし絵を作っています。あたかも関係のないように進む5つのストーリーがあっと驚く仕掛けで一つにつながっていくのですが、それはもう快感としかいえないような見事さ。実は読んでいて割りと早くに作品にしこまれたトリックに気づいてしまったのですが(作者は結構あからさまにトリックを提示してるし)、そうすると、そのトリックをどのようにまとめるのかということが気になって、最後まで一気に読めてしまいました。作品の冒頭がトリックを仕込むにあたって非常に効果的に描かれてるのが素晴らしいです。

で、最後まで読むとエッシャーさながらの「だまし小説」が完成していて、全体図を把握して冒頭から読み返すと、同じ作品でありながら、まったく違った読み方しかできなくなってしまう作品。2度目も確実に楽しめるけれど、全ての断片がひとつにつながっていく快感は1回目の読書でしか味わえないので、それが最大の欠点なのかもしれません。「オーデュボンの祈り」もそうでしたね。

<結構ネタバレ。反転させて読んで下さい。>個人的に1つだけ不満をあげると、エッシャーのだまし絵を徹底するのならば、どこかで矛盾を作って永遠のループを作って欲しかったんですけど、伊坂氏の作った物語はあまりに矛盾がなくて、きれいに収まってしまうのがちょっと物足りなかったかな・・・。あと先ほども書いたけれど、冒頭部分、全てのエピソードに外国人を登場させることで、あたかも同じ時間軸の物語と思わせたのは本当にお見事でした。

そんなこんなで自分は確実に伊坂幸太郎ファンになっていることを確信した読書でした。本当に面白いから皆読んで!!!!絶対に後悔させません!微妙にファンタジー調の舞台設定だった「オーデュボン」とは違ってこちらはリアルな舞台設定だし(自分は「オーデュボン」のほうが好きだけどこちらのほうが一般ウケしそう)。そうそう、途中で「オーデュボン」の世界ともリンクしてました。フォークナーやバルザックの作品みたいにすべての伊坂作品全体で一つの世界観を描いていくのでしょうか。

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