「アーモンド入りチョコレートのワルツ」 森絵都
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」森絵都 角川文庫
惜しくも今回の直木賞を逃した作家さんですね。この方は児童文学で相当話題になっているので、読んでみたいなぁとずっと思っていて、先月ついに文庫本の第1弾が出たので早速読んでみたわけです。3つの話がはいった短編集で、それぞれに共通してるのは主人公が中学生であることと、「ピアノ」がキーワードになってるということ。それぞれのタイトルも作中でキーになるピアノ曲からつけられています。
3話のうち、1話目と3話目はちょっとなぁというのが正直な感想。1話目は毎年、従兄弟同士で集まって別荘で過ごしている5人が主人公で、最年長の仲間に対しての不満が募っていくというお話。少年の成長を描いているんですけど、なんか出てくる少年達があまりにも理想的な感じで個人的にはイマイチ。3話目は怪しげなフランス人と同居を始めたピアノ教師とその教室に通う2人の中学生の少女たちの物語。こちらはちょっと間延びした勢いを感じました。
一番良かった2話目は、結構好きな作品。数日間夜なかなか寝付けなかった少年が、音楽室から聞こえてきたバッハに誘われて、そこにいくと、同じように不眠症に悩む少女がピアノを弾いていたというお話。少年はすぐに眠れるようになるのだけど、少女と共通の話題が欲しくて、不眠症が続いているというウソをつきながら、音楽室に通うというストーリー。とても雰囲気の良い作品でした。この作者さん、他の2話もふくめて、ちょっと背伸びしたいけど、しきれないでモヤモヤとしているような中学生の様子を描くのが上手ですね。他の作品も気になるところです。
余談ですが、先日の笹生さんの本と同じく、こちらもハードカバー版は講談社から出てるんですね。角川さんは、講談社から児童文学作品をまとめ買いしたんですかねぇ。
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