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2005年7月 6日 (水)

「きよしこ」 重松清

「きよしこ」 重松清 新潮文庫

もはや何冊目かも分からない重松作品。先月角川文庫から出た「疾走」という大作もあるのだけれど、とりあえず、軽く読めそうな連作短編集のこちらを読みました。

吃音のために喋ることが苦手で、人間関係に悩む1人の少年の小学校低学年~大学入試までを描いた連作短編集。主人公の少年の名前は「きよし」で、モデルは作者の重松氏本人。半自伝的な要素を持った作品といえそうです。いつもの重松作品に見られる妙な重さはあまり感じられず、その代わりに、とてもあっさりとした印象のある作品でした。彼の作品を読んでいて感じることがある、どうしようもない切なさややるせない思いみたいのを感じることはありませんでしたからね。冷静に、優しく見つめるような文体は相変わらずですが。重松作品としては異色なのではないでしょうか。引越しが多かったとか、言葉を上手く喋ることができない少年が文章で伝えるという自己表現の場を見つけたり、野球というスポーツを通して人間関係を学んだりっていうのは、恐らく作者の実体験が絡んでいるのでしょうね。他の重松作品にもちらほらと顔出すモチーフだし。

重松氏の少年の成長を描いた連作短編といえば名作「半パンデイズ」がありますが、自分は、「半パン~」のほうが面白かったかなぁと思います。脇を固める登場人物に愛着が持てたので。引越しの多かった重松氏がもしも同じ場所で少年時代をすごしていたらという思いを書いたという「半パン」とこの「きよしこ」はある意味対になっているのかもしれませんね。

印象に残ったエピソードは、「北風ぴゅう太」と「乗り換え案内」の2編。場面として印象的なのはクリスマスプレゼントの場面。割りと衝撃でした。

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