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2005年7月26日 (火)

「ハミザベス」 栗田有起 

「ハミザベス」 栗田有起 集英社文庫

作者の方はこれまで2回芥川賞候補になってる作家さん。表題作はすばる文学賞を受賞した作品で、同時収録で「豆姉妹」という作品が収められています。

「ハミザベス」は、母と2人で暮らしていた20歳の女性のもとに、ある日、顔も見たことのない父が死んだという連絡が入り、マンションの一室を相続することになるというもの。主人公は亡き父の愛人から詳細を聞き、そして、彼女から譲り受けたハムスターとともに、相続したマンションでの生活を始める。

ずーっと母親で2人で、1つの蚕の繭の中に2人で入ってしまったような生活を送ってきた主人公が、自立をする姿を描く作品ですが、ちょっとリズムが悪いのか、ぐっと物語に没頭することができませんでした。

一方で、同時収録の「豆姉妹」こちらはかなり面白かったです。再婚した母親から離れて、7つ離れた姉と暮らす女子高生の物語。2人は双子かと見紛うほどに似ている姉妹だったのですが、ある日、姉が看護婦の仕事をやめてSM嬢に転職。それまでは2人で着まわしていた洋服の趣味もすっかり変わってしまい、香水をつけるようになった姉を横目に、主人公は、突然髪をアフロに。そんなところに、母の再婚相手の息子(義兄弟)がやってきて、3人での共同生活が始まる。

1話目の「ハミザベス」と同様に、こちらも、それまでずーっと一緒だった姉から主人公が自立する姿を描いた作品。こちらのほうが、リアルな描写が多く、全体的にとてもバランスが良くて、とても印象に残る作品でした。登場人物たちの個性がハッキリと描かれているのがよかったのかも。心に残るイベントもあったし(作文を読み上げる場面)。この話を読むためだけでも価値のある1冊かもしれません。

最近の女性作家さんに多い、ちょっと世間からずれた感覚を持つ主人公が個性的な登場人物たちと触れ合うことで、現実社会に向き合うきっかけをつかんでいくという作風。芥川賞も手に届く範囲内の作家さんなのでしょうね。

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