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2005年8月

2005年8月24日 (水)

「アムステルダム」 イアン・マキューアン

「アムステルダム」 イアン・マキューアン 新潮文庫

ロンドン社交界で数々の男性と情事を交わした女性モリーが亡くなり、彼女の葬儀にイギリス中の名士(かつての恋人達)が集まるところから物語りは始まる。彼女の最期は、痴呆にかかり、衰弱していったというもので、葬儀に参列していた、作曲家クライヴと新聞の編集長ヴァーノンはそれを聞き、もし2人のうちのどちらかが、そのような状況に陥った場合には相手を安楽死をさせるという約束を交わす。そんな中、モリーと政治家のスキャンダラスな写真がヴァーノンの編集する新聞社の手に渡る。この写真事件を新聞に掲載するかどうかをめぐり、編集長、作曲家、政治家の3人の運命の歯車が回りだすという物語。タイトルの「アムステルダム」の意味は読めば分かります。

非常に面白い物語で、グイグイとひきつけられるように一気に最後まで読んでしまいました。登場人物3者3様の生き方、考えかたにザクリとメスをいれるような物語の展開で、大人の駆け引きを見事に描いた作品。映画にしても面白いかもしれません。この作者の人、大学で創作を専門にしてたみたいですけど、このような作品を生み出せる作家を輩出するとは、そちらの大学も気になるところです。一読して損はない名作ではないでしょうか。

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2005年8月23日 (火)

CD「THE STORY GOES」 CRAIG DAVID

「THE STORY GOES」 CRAIG DAVID

UKのR&Bシンガー。前作ではSTINGの名曲「Shape of my heart」(レオンの主題歌)をサンプリングするなど、センスも抜群なのだけれど、彼の最大の特徴は、その顔からは全然想像がつかないような美しい歌声。前作ではデジタルな音が入っていたり、ラップが目立ったりとダンス系の要素が強かったのですが、今回は、日本で言えば、平井堅やケミストリーを想像するような、「歌」の要素が強い仕上がりでした。もともと彼は2本立てでやっているのだけれど、今回は「歌」がメインなように思いました。余談ですが、前作まではビクターでしたが、近作からワーナーに移籍したみたいです。

全体を通してとても聞きやすいアルバムで、洋楽初心者の人でもすんなりと聞けるような楽曲ばかり。そして何よりも歌唱力、というか、声が良い。一言で言ってしまえば極めて「甘い」歌声。9曲目なんかのダンサブルな曲もあるのだけれど、それでもやっぱり甘さが際立つアルバムで、もう少し、ダンサブルな要素の曲を多く入れるとメリハリがついたかもしれないという気はします。しかし、どの曲も良くて、ハズレなしなので、やはりよくできた作品であることには間違いありません。ハモリが多い楽曲が沢山あるのも嬉しいところです。前作も好きだったけれど、今作もかなり聞くことになりそうです。

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2005年8月22日 (月)

「クチュクチュバーン」 吉村萬壱 

「クチュクチュバーン」 吉村萬壱 文春文庫

数年前に芥川賞を受賞した作家の処女作が今月文庫化しました。タイトルを見てもわかるようにそうとう癖のある作品です。

話の舞台は終末を迎えつつある近未来の地球。毒が蔓延し、周囲の環境が腐敗していく中、人類にも大きな異変が訪れます。人々が次々と様々なものに姿を変え、急激な進化を始めたり、周囲と同化したりし始めたのです。シマウマ男や、腕が10本のクモ女、巨大女、びよーんと伸びて鉄塔になる人々などなど。もはや人間の原型をとどめていない人々を処理する施設が登場したり、人間としての意識を失い単に生きているだけになってしまう人々のとる行動をグロテスクに描き、最終的に訪れる究極のラストへと物語りは突き進みます。タイトルの「クチュクチュバーン」は正確には「クチュクチュ」の部分が1ページ分くらいにわたって「クチュクチュクチュクチュクチュクチュ・・・」と続いてから、「バーン」だったりします。

もう本当に、無茶苦茶な展開だし、シュールだし、グロテスクな世界を描いているのだけれど、物語の書き方字体は不思議と理性的だったりするので、こんなに破天荒な内容にも関わらずサラリと読めてしまう作品でした。逆に言えば、これだけ破天荒なのに、あまり残るものがないような気もしました。同じように破天荒な作品としては笙野頼子を連想するのですが、笙野さんの作品は、設定が破天荒なだけではなく、もっともっと言葉で遊ぶし、それでいて、根の深いしっかりとしたテーマが全体を貫いているので、とても好きな作家さんです。吉村氏もおそらく同じベクトルの作家さんなんですけれど、破天荒な中に理性を残しているので、読後の印象は大分違いました。好き嫌いははっきりと別れるとは思いますが、自分は、こういうタイプの作品はグロさが抑えられている限りは割と気になるので、他の作品も注目していきたいです。

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2005年8月20日 (土)

映画「ブリジットジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月」

「ブリジットジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月」 2004年 イギリス

こちらはバイト先で思いがけず借りられるというチャンスを得て、視聴しました。第1作は、国際線の飛行機の中で中国語字幕付きで見たので、聞き取れた英語と、漢字から想像した意味で内容をみていたのでちゃんと見たとは言えないのですが、それなりに楽しみました。で、続編です。基本路線は前作と同じなんですけど、コメディ色が強くなったかなという印象を受けました。脚本を書いているのが、「ラブ・アクチュアリー」や「ノッティングヒル」などの名作ラブコメを大量に書いている人なので、つまらないなんてことはないのですが、「第2作目」であることを考えるとちょっと物足りない印象でした。

何が物足りなかったというと、基本的に第1作目と全く同じだという点。しかもヒュー・グラントの使い方が微妙です。前作であれだけ嫌なやつとして登場したのに、また彼にひかれるという展開はどうなのでしょうか?続編を作るにあたって、ヒューではなくて、また違う役者さんの違う役をライバル役で登場させた方がシリーズとしてメリハリが出たように思います。と思っていたら、メイキングによると、原作では続編にヒューの役は登場しないとのこと。やっぱり、そうだったか・・・。前作では主人公が幸せを手に入れるまでを描いているので、色々とハラハラドキドキのラブコメ要素も多かったのですが、今回は基本的に、既に幸せな環境にいる主人公を描くので、単に彼女の愚かさをアピールするだけで、主人公が一人で大騒ぎしてるだけの作品になってしまっているようにも感じました。確かにコメディとして笑える場面は沢山あるのだけれど、負け犬女性のバイブルとしてはもっともっと良い続編を期待してしまうわけです。

余談。この映画、イギリス好きとしてはロンドンの景色を見ているだけで和みます。「高慢と偏見」好きとしては前作に引き続き、「ダーシー」をコリン・ファースが演じるのが良いですね。あと、タイトル、ずーっと「綺麗そうな私」だと思ってたんですけど、「きれそう」だったんですね。

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2005年8月15日 (月)

「麦ふみクーツェ」 いしいしんじ

「麦ふみクーツェ」いしいしんじ 新潮文庫

「ぶらんこのり」に続くいしい作品2つ目の文庫化。暖かなまなざしで良質の児童文学を綴る注目の作家さんです。

主人公は人一倍体の大きい青年。彼は素数にとりつかれた数学者の父親、元ティンパニ奏者で街の楽団をしきる祖父と3人で暮らす主人公が様々な人々や事件と関わり、また音楽家を目指す姿を描く成長物語。彼の成長を、どこからともなく現われる「麦ふみクーツェ」(小人?妖精?)の「とん、たたん、とん」というリズムとともに優しく描きます。「ぶらんこ~」と同様に小さなエピソードが沢山でてきて、その中にキラリと光る珠玉の名作がちらほらと散りばめられています。ネズミのエピソードやセールスマンのエピソード、鐘つきの話はなかなか面白かったですね。全体には前半部よりも後半部のほうが圧倒的に面白かったと思います。「クーツェ」の正体は最後までよく分からないのですが、その言葉の意味が明かされていく展開は、かなり読ませてくれました。

「ぶらんこのり」でも感じたのだけれど、いしい作品は、散りばめられているエピソードのいくつかが本当に素晴らしいのだけれど、1つの作品として全体を見たときに、ちょっと退屈な感じがしてしまうんですよね。作品の根底にある、なんだかわからない力強さ(しっかり根をはった作品という印象です)や、みんな「変わり者」なんだと言わんばかりの個性豊かなキャラ、絵画的な雰囲気なんかはかなり突出しているのだけれど、なんだかのめりこめないのです。もっともっと面白い長編を書いてくれるのではないかと期待をこめてこれからもチェックしていきたい作家さんですね。

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2005年8月 3日 (水)

映画「オネーギンの恋文」

「オネーギンの恋文」 1999年 イギリス

オペラにもなってるプーシキン原作のロシア文学の映画化。レイフ・ファインズが製作&主演、監督はレイフ・ファインズの奥様、そして、共演はリヴ・タイラー(←久々に見た気がしてたけど、指輪物語シリーズに出てましたね。)。19世紀ヨーロッパが舞台の映画が大好きなので、衣装とか設定とか見るだけでワクワク♪の1本。あと、主人公の友人役に「十二夜」のオーシーノが!意外な収穫でした。

舞台は19世紀のロシア。享楽的な生活を送っていた貴族の男が伯父の遺産を相続したのをきっかけに、伯父の住んでいた田舎町で暮らすようになる。彼は近隣に暮らす人々と交流するようになるのだが、とある姉妹と親しくなり、その姉から強烈なアプローチをかけられるようになる(ストーカー的で割りと笑える映像も)。熱烈な恋文をもらうも、主人公はそれを拒否、やがて田舎を離れる。そしてそれから数年後、彼らは再会するのだが・・・というお話。

序盤の30分くらいはちょっと退屈な展開なのだけど、告白を拒否するくらいから、決闘あり、離別あり、再会あり、衝撃の展開ありで目が離せない内容が続きます。特に後半は30分くらいは、あまりのじれったさに我慢の限界!というくらいにジリジリの展開で、「もう、どうなっちゃうの~!?」とヤキモキさせられること間違いなしの映画です。主人公の行動に対しては相当賛否両論分かれるんだろうなぁ。自分は完全に無しですね。ついでにこの映画の最大のツッコミポイントについて。舞台がロシアなのにみんな英語はなすってのはどうなのさね。手紙まで英語だよ。フランス人教師は仏語訛りの英語だったし。イギリス映画だから仕方ないけど、ちょっと気になりますよね。降りしきる雪、豪華絢爛なロシアの建物にイギリス英語ですからね。

この映画、映像がとにかく美しいです。切りとって絵になりそうなシーンがかなり登場します。決闘シーンが終わった後の湖畔の映像は究極的に美しかったですし。物語のじれったさに我慢の限界が近づいても、この映像美のおかげで画面に食いついてしまうような作品でした。さらに映像美の一端を担っているものにリヴ・タイラーがいます。序盤の田舎娘の頃から結構綺麗なのですが、後半に再登場する彼女は目を見張る美しさ。「アルマゲドン」のアメリカンな少女はどこへやらです。

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2005年8月 2日 (火)

「アナ・トレントの鞄」 クラフト・エヴィング商會

「アナ・トレントの鞄」 クラフト・エヴィング商會  新潮社

趣向を凝らした手作りの品々と、小粋な文章&装丁でいつも楽しませてくれる彼らの新作です。今回はとある映画の主人公が持っている鞄に注目し、その鞄を追い求める旅の過程で手に入れた品々(鞄の中身)を紹介していくというスタイルになっていて、様々な架空の品々を紹介するという内容。「どこかにいってしまったものたち」なんかに見られたインパクトはちょっと減退したのかな?全体的にこじまんりとまとまってしまった印象を受けました。出てくる品々にもう少し一貫性があったら良かったのかも。普通の本だったら余裕で絶賛するのだけれど、クラフト・エヴィング商會にはついつい高望みしてしまいますね。

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