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2005年9月11日 (日)

「ゴットハルト鉄道」 多和田葉子

「ゴットハルト鉄道」 多和田葉子 講談社文藝文庫

300ページにも満たない分量の文庫が千円以上するというぼった○○感が否めない文庫シリーズの1冊。この文庫でしか手に入らないという消費者の足元を見た値段設定が憎いんですけど、散々悩んだ挙句、どうしても読みたかったので買ってしまいました。

作者の方は、ドイツで独語での文学活動をしていて、あちらでシャミッソー賞を受賞したりしている一方で、日本でも芥川賞を受賞しているという作家さん。芥川賞作品は以前読んで、なかなか面白かったので、この作品もどうしても読んでみたくなった次第。

表題作を含む3作品を収録した1冊で、表題作「ゴットハルト鉄道」と「隅田川の皺男」という短編と、「無精卵」という中編が収録されてます。自分で一番面白かったのは表題作の「ゴットハルト鉄道」でした。覆面ライターとして、ドイツのとある鉄道にのった女性が主人公で、旅をしながら、彼女が見聞きしたこと、感じたことを、キラリと輝く独特の文体で描いた作品。ゴットハルトの由来である聖人を想像し、そこを通り抜ける鉄道に乗り込むことで、男性の体内を駆け抜けることを想像する主人公の感性で捉えられた束の間の鉄道旅行は短い作品ながらも、深い余韻を残してくれました。多和田さんの作品はとにかく文体が特徴的で、とても男性作家には書けない様な言葉の選び方がステキな作家さんだと思います。川上さんとはまた違った意味合いでみずみずしい感性を感じます。恐らく海外で文学活動をしているだけに、逆に日本語の使い方が洗練されていらっしゃるのでしょうね。

中編「無精卵」は、ちょいとゆるーい感じで、軽くエグイお話でした。ちょっと苦手。三つ目の皺男も面白いのだけれど、個人的にはもう一歩。でも「ゴットハルト鉄道」が面白かったので、高額を出して正解だったことにしましょう。半額以下にしたらもっと売れる本だと思うんですけどねぇ。

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