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2005年9月 1日 (木)

映画「シークレット・ウィンドウ」 

「シークレット・ウィンドウ」 2004年 アメリカ

スティーブン・キング原作、ジョニー・デップ主演のサスペンス映画です。主演の人気も手伝ってか、当たり外れの差が大きいキング原作作品の中でもそこそこヒットしていたのが記憶に新しい映画。

主人公は作家。ある日、彼のところに一人の不気味な男が訪れ、「お前は私の小説を盗作した」と告げられる。主人公はその男が自分で書いたという作品を読んでみてビックリ、ラストこそ違えど確かに、そっくりな内容である。男は、主人公に対して、ラストの部分を自分の書いたものに変えて出版しなおすように執拗に迫るが、男がいつその作品を執筆したのか聞いた主人公は、自分の方が先に作品を発表したことを主張。そして、男の身の回りに不可解なできごとが起こり始め、離婚調停中の妻にもその魔の手が忍び寄るが・・・。

キングの作家主人公ものはファンの女性に監禁される「ミザリー」やペンネームが復讐する「ダークハーフ」など映画化された傑作が多いのですが、これもそんな1篇。盗作疑惑に迫られた主人公が段々と自分を失い、狂気の沙汰に陥っていく状況を描きます。盗作問題に関するオチは割と想像しやすいのですが、この作品はむしろ、追い詰められた主人公が狂気に陥るほうがメインの作品。自分は原作も読んでいるんですけど、原作がかなり主人公の内面を描いて、その狂気を浮かび上がらせていたのに対して、こちらの映画はかなり淡々とストーリーを追っていくだけの印象です。ストーリーは実はラストが原作と全然違うのですが、それ以外は、ほぼ完璧に原作を追っていました。決してつまらなくはないのだけれど、ちょっとまだるっこい感じの演出だったかもしれません。ストーリーとしては、ラストでオチが明らかになるんですけど、そこからがハラハラドキドキ。これまでと物語の見方がガラリと変わってしまうのはなかなか面白いですねー。

この映画、一言で言ってしまえば、ジョニー・デップのプロモみたいな感じなのです。終始、彼が中心に画面が構成されているので、デップファンにはたまらない作品かもしれません。しかし、その彼が今ひとつ物足りないのです。キングの描く狂気は「シャイニング」のジャック・ニコルソンや、「ミザリー」のキャシー・ベイツなどの怪演が記憶にあるし、こうした映画はその見事な演技のためにかなりの傑作になっていると思います。しかし、この映画では、デップ氏の演技がもう一息なのです。公開年からして「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「ネバーランド」とそう変わらない時期に作られた映画かと思うのですが、この2作品で見られた彼の天才的な演技がここでは感じることができませんでした。これが非常にもったいないのです。前半の雰囲気の作り方はとても良いんですけどね。全編彼の一人芝居に近い映画なので、もっともっと壊れて欲しかったなぁ。「パイレーツ~」であれだけできたんですから、もっとはじけられたはずと思ってしまうのが映画ファンです。。

さらに言うとですね、「作品のラストは変えてはならない」みたいな台詞を何度も繰り返し出すし、「このラストこそがふさわしい」みたいな台詞を最後に登場させているにも関わらず、この映画では、原作のラストを180度変えてしまってるんですね。ある意味、原作者への挑戦状のようにも感じられる映画でした。個人的には、ラストのオチが2重になっている原作のほうが面白いとは思うんですけどねぇ。あと、原作のほうが色々と説明が細かくて、この映画だけでは、理解しきれないような場面がチラホラあったのも確か。映画を見てから原作を読むと相当理解が深まってオススメです。余談ですが、この原作は「ランゴリアーズ」(文春文庫)という本に収録されているんですけど、同時収録されている「ランゴリアーズ」という作品は相当面白いです。かなりオススメ。

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