「うたかたの日々」 ボリス・ヴィアン
「うたかたの日々」 ボリス・ヴィアン ハヤカワ文庫epi
20世紀中頃のフランスの作家さんの作品。同じものが「日々の泡」というタイトルで新潮文庫からも発売になっていますが、ハヤカワの同じシリーズで同作者の「心臓抜き」という作品を持っているので、一貫性を持たせるためにこちらを購入。ちなみに、「心臓抜き」はこれでもかというくらいに破天荒で、シュールで、切ないお話で、自分はかなりお気に入りでした。
この本、翻訳があまり良くないというのが第一印象です。新潮版にすればよかったかもと後悔しました。まぁ、そんな訳も50ページくらい我慢して読めばそこそこ慣れてきたので無事最後まで読めたわけですが。物語はパリを舞台に、若い世代の恋人達の日常を描くのですが、途中でメインの人物である2人が結婚して幸せを謳歌するも、新婦が肺に睡蓮が咲くという奇病にかかってしまうというストーリー。「現代で最も悲痛な恋愛小説」なんていう謳い文句がある作品です。
この作者さんは独特の世界観が特徴的な方で、それはこの作品でも存分に発揮されていました。演奏を奏でるとそのメロディがカクテルとなって現われるピアノだとか、「警官殺し機」だとか、別の小説のタイトルにもなっている「心臓抜き」(その名の通り心臓を抜き取る機械)だとか、蛇口から鰻がでたり、種をまいて銃を栽培する仕事だとかそれはそれは想像力豊かな様々な不思議なものが登場するのですが、それらが当たり前のことのようにサラリと描かれるのがこの小説の良いところ。単に「雰囲気」を作りだしている小物にすぎないわけです。一番伝えたいのは切ないまでの愛の物語ですからね。
とにかく五感に関する表現が多くて、どれもが本当にみずみずしい感覚で描かれていただけに、翻訳で読むのがもったいない気がしてならない1冊でした。きっとフランス語で読んだらもっともっともっとステキでカッコよくて、哀しい物語なんだろうなぁと思いました。やはりこの作者の本は翻訳の壁が厚いですね・・・。ちなみに、この作品は海外でも映画化されてるし、数年前に「クロエ」というタイトルの邦画も作られていました。映画はどんな感じなんですかね。この独特の空気を上手くつたえるのは難しそうです。
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コメント
初めてお邪魔します。
原作はそういう雰囲気の作品なんですね。
映画の方は美しい映像が印象的です。ストイックな繊細な世界観で貫かれていますが若干テーマが掴み難いように思いました。
TBさせて頂きました、また拝見させて頂きます。
投稿: lin | 2005年12月 4日 (日) 20時22分
>linさん
TB&コメントどうもありがとうございます。
映画は気になってはいるものの、まだ見れていないのです。
原作の感じですと、映像が綺麗なのもテーマがつかみづらいのも納得です。
映画の感想で、「途中ダレた」とお書きでしたが、原作でもそう感じたので、それは映画というよりかは原作の方に原因があるのかもしれません。
この作品、岡崎京子という漫画家が「うたかたの日々」のタイトルで漫画にもしてるみたいです。色々なメディアでどのように表現されているのかを比べてみても面白いかもしれませんね。
投稿: ANDRE | 2005年12月 5日 (月) 00時28分