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2005年9月13日 (火)

映画「モダン・ミリー」

「モダン・ミリー」 1966年 アメリカ

ミュージカル映画です。主演は、ジュリー・アンドリュース。「メリー・ポピンズ」、「サウンド・オブ・ミュージック」で大成功した彼女が、挑んだミュージカル映画第3弾。原作があるわけでもなく、ベースになる舞台版があるわけでもない映画オリジナルの作品で、当時はなかなかのスマッシュヒットを放って、アカデミー賞の作曲賞も受賞しているものの、すっかり歴史に埋もれてしまった作品。4年位前に、ブロードウェーで舞台化されて、トニー賞で作品賞など6部門を受賞しています。とにかくオシャレでハッピーなコメディミュージカル。最近の作品で言えば、「キューティー・ブロンド」とか「ブリジット・ジョーンズ」がミュージカルになったような爽やかな明るさのある作品です。

舞台は1920年代のアメリカ。大戦に挟まれ、大恐慌の前で、経済もノリに乗っている時代のお話です。田舎から出てきた主人公ミリーはタイピストの資格をとって、ステキな上司のタイピストになって、恋に落ちることを夢見る女性。彼女は独身女性専用のホテルに宿泊しながら、流行の最先端のファッションに身を包み、ニューヨークライフを謳歌している。ある日、彼女の宿泊するホテルに世間知らずの孤児の女性が宿泊するようになり、2人は意気投合して親友に。物語はこの2人と彼女達が恋する2人の男性を中心に進む。この恋愛劇に横糸に、ホテルの女主人が宿泊している女性を中華街の売春宿に売りつけるという悪事を企んでいる事件が縦糸として物語に絡んでくる。

正直長かったです。インタミをいれて2時間半。この長さを使って、描かれるのがドタバタコメディの恋愛模様ですからね。サスペンス要素を混ぜることでメリハリをつけようとはしているけれど、やはり2時間半はちょっと長すぎるように感じました。決してつまらなくはないんですけどね。ジュリー・アンドリュースといえば、「メリー~」も「サウンド~」も家庭教師という役どころで、どちらかというと、天真爛漫ではあるけれど、堅い役のイメージが強いのですが、この作品ではとにかくオシャレでモダンでハッピーな主人公を思いっきり演じていて、それがかなり新鮮。ミュージカルシーンは、やはり文句なしの素晴らしさなのだけれど、もっともっと彼女が歌う場面を増やして欲しかったですね。

物語のほうも、当時にしてはかなり進歩的な内容。女性の社会進出が始まった時代を描いているのだけれど、主人公が求人活動をする際、ステキな上司のいる会社が第一条件であり、彼女は面接を受ける立場にありながら、「ボスを選ぶのはわたし」と言えるくらいに、女性の雇用が多かった時代を描いているのが印象的。女性達が、オシャレなファッションに身を包み、社会に出て働き、男達を手玉にとって、色々と新しいことを始める様子をミュージカルタッチでとにかく明るく描いた佳作です。あと舞台になっている1920年代を意識したかのように、無声映画時代のように、黒背景に文字が現われて、主人公の心の声を挿入する方式も効果的に使われていました。他に印象的だったのは、時折現われるカメラを意識したような主人公たちの目線。「あらら、失敗しちゃった」みたいな場面で、視聴者に向かって、「エヘッ」って感じで演技をしたりするのも、この映画の空気にとてもあっていて好感でした。あと、場面転換の仕方とかも、割と凝っていて、タイトル通りにモダンでオシャレな映画。60年代、70年代ファッションが見直されている昨今では、この雰囲気は十分有りだと思われるわけで、ブロードウェーでリバイバルされたのも納得。

大作でもないし(長いには長いけれど)、歴史に残る傑作というほどでもなくて、知名度が下がってしまうのは仕方ないのかもしれないけれど、出てくる人々がとにかく楽しそうに演じていて、見ている側もとても幸せな気分になれるミュージカル。もっともっとみんなに知られててもいいんじゃないかなぁと思いました。

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