「体の贈り物」 レベッカ・ブラウン
「体の贈り物」 レベッカ・ブラウン 新潮文庫
現代アメリカ文学。翻訳はかの柴田元幸氏。柴田訳はとりたてて好きというわけではないけれど、彼が注目する作家は興味があるので、結果的に柴田訳を読むことが多くなってしまいます。典型的なのはオースターだけれど、もはや翻訳されるのを待てなくなっってすっかり原書派。
エイズ患者のホームケアをしている主人公が様々な患者さんと交流する1話完結型の連作短編集です。主人公は看護士とかではなくあくまで、ヘルパーさんなので、医療行為をしたりするわけではなく、買い物や洗濯などの身の回りの世話をするくらいしかできないのだけれど、そんな彼女の目を通して描かれる患者達のささやかな日常の風景を優しいまなざしで綴った傑作です。
あとがきで翻訳者さんも書いているのだけれど、本の内容を書けば、病人とそのケアワーカーの交流という内容だと、単なる感動作という印象しか与えられず、それだけで読者を一気に減らしてしまう可能性が高いのですが、この作品に関して言えば、あらすじや内容、レビューなど一切読まずに(といいつつ書いているわけですが)、ただ手にとって欲しい、そういう作品です。読み終わった後に心に残る感じがなんともいえない作品で、久々に良いものに出会えたなと思いました。
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