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2005年11月29日 (火)

「4TEEN」 石田衣良

「4TEEN」 石田衣良 新潮文庫

「池袋ウェストゲートパーク」などで知られる石田氏が直木賞を受賞した作品が文庫に。これはずっと読みたかった本だったので、早速読んでしまいました。

月島を舞台に、中学2年生の仲良し4人組の少年達の1年間を描く作品。連作短編集の形をとっていて、4人それぞれに主役となるエピソードが用意されていて、さらに、彼らのクラスメートとの関係を描くエピソードがあったりします。4人少年のキャラクターはかなりしっかりと性格づけされていて、家が裕福な早老症の少年、家庭での父の暴力に悩む太った少年、クラス一の秀才くん、そして、極普通の少年である主人公といった感じです。14歳の1年間を描くということと、4人の10代の少年が主人公ということで、「4TEEN」というわけです。

一番最後のエピソードを読むと、「スタンド・バイ・ミー」じゃん!!とかなり突っ込みたくなるようなお話で、特にラストでみんながぶっちゃけ話を始める場面なんてのは、まんま、「スタンド・バイ・ミー」で夜に焚き火の番をしながら、主人公がリバー・フェニックスと語る名場面と同じ雰囲気。どちらも、自分の町だけが世界だった少年達が、広い世界に足を踏み入れると同時に、それまで感じることのなかった様々な現実を目の当たりするような内容ですよね。4人ってとこも一緒だし。それぞれが何かしらの問題を抱えているというところも似ています。しかし、この本でそれが感じられるのは一番最後だけで、全体的には中学生日記みたいな感じで単発の「良い話」系のエピソードが目白押し。蓋をしたくなるようなくさい台詞や展開も結構多いのだけれど、一つ一つが結構しっかりと読ませる面白さがあって、とても面白い本でした。特に、エンターテイナーを目指す放送委員の少年の話と、仲間の少年の1人が青い自転車を手に入れる話が好き。

さて、石田氏の作品は、これで2冊目ですが、今回もやはり重松の影を感じずに入られませんでした。14歳の1年間を描く作品といえば、重松清の「エイジ」がそれは素晴らしい作品で、自分は大好きな1冊。重松氏の作品は、同級生が犯罪を犯し逮捕されるという事件をメインに据えつつ、14歳の日常を描く作品で、最大の特徴は妙なリアルさだと思いました。一方で石田氏の「4TEEN」はかなりの点でファンタジーではないでしょうか。どこにでもいる中学生達の日常を描いているようでいて、決して現実的ではない展開も多く感じられる作品でした。これは、重松氏がほとんど使わないのに対して、石田氏が現実の固有名詞を多く用いるということを考えると、なかなか面白い対照性があるように感じられます。

あと、「LAST」で感じた石田氏の妙にクールな視点はやはり今回も感じられて、一つ一つのエピソードの中で事件はそれなりの解決を見せるのだけれど、他のエピソードではそれぞれが全く触れられていなくて、「で、結局その後はどうなったの?」と思わざるを得ない気持ちが残りました。4人の友情が保たれれば、全てが解決というわけにはやはりいかないのが現実であって、どんなに友人達が支えてくれても、どうしようもできない現実が絶対に訪れているであろうエピソードがいくつかあるのだけれど、そういう苦しみはあまり触れられなくて、単に「おれたちの友情は固いぜ!」で終わってしまっているような部分が感じられたのはやや物足りなかったです。

こういう友情が永遠のものではないことを大人の読者はよく知っているわけで、それがために、ラストで出てくる台詞が妙に切ない1冊でした。ちなみに映画「スタンド・バイ・ミー」は、その後の4人の説明をしっかりと説明することで、より一層その切なさを具体的に表現していたなぁなんてことを思い返してみたり。

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コメント

たしか夏ごろ、少し馴染みがある地理に、にんまりしながら読みました。
景色が浮かぶと楽しいです。
自転車さわやか♪
ラストの記憶が曖昧です。
図書館で借りたがために、かゆい思いをしています。

投稿: | 2005年12月 8日 (木) 22時22分

名を書き忘れるなんて

投稿: ふう | 2005年12月 8日 (木) 22時23分

>ふうちゃん

コメントサンキューです☆
自転車で駆け抜けるのは確かに爽やかだね。
自分も中学くらいまでは地元を友達と一緒に自転車で駆け抜けてた。

地理に馴染みがあるのとないのとで印象って大分違うようね。
自分は月島はもんじゃ食べに行ったくらいで、ほとんど知らなかったから
具体的なイメージがなかなか湧かなかったんだけど、
最後のエピソードだけ、急に四ツ谷を抜けて新宿に行ったりするので
あ~、あそこを通ってるのかぁとか、突然、具体的に景色を
イメージできて、読んだときの感じが変わったんだよね。
そう思うと、東京に全くなじみがない人が読んだときには、
「月島」っていう場所そのものがどんな感じかも分からないだろうから
読んで受ける感じは東京近郊の人とはかなり違うんだろうね。

投稿: ANDRE | 2005年12月 9日 (金) 00時09分

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石田衣良の直木賞受賞作品。14歳の東京月島に住む少年たちの物語。 中学2年生。この年齢ならではの感性を描いた作品。 最も印象に残ったのは、ダイが、逮捕されてしまったシーン。自分たちには何も出来ないと臆するのではなく、何が出来るかを考え、そして行動する。大人になるとこれがだんだんと出来なくなってくる。 ... [続きを読む]

受信: 2005年12月17日 (土) 08時50分

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